食材の整頓セオリー──コデラ総研 家庭部(95)

テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(ほぼ隔週木曜日)の第95回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「食材の整頓セオリー」。

文・写真:小寺 信良

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日々の料理の中で、保存が利く食材を使うことも多い。例えば小麦粉や片栗粉、乾麺、食用油などだ。こうしたものは、たいてい流し台の下の収納スペースに保存しているのではないだろうか。

さすがにすべてをバラバラにぶっ込んどく人はいないだろうが、あのスペースの整理の仕方は、それぞれ性格が出る部分であろう。どこまでどう整理するのか、それぞれ各人の脳の働きと直結しているように思う。

これまでこの部分の整理には、ずいぶんいろいろな方法を試した。例えば利用頻度別で並べたこともあった。よく使うサラダ油やみりん、料理酒は手前で、お酢やごま油は奥に配置するといった方法だ。

概ねこれは上手く機能したが、難点は背が高いものが手前にくると、奥にあるものが見えないところである。まだ在庫があるのに新しいのを買ってきてしまい、あまり使わないお酢が3本並ぶといったエラーが起こりやすかった。

あるいは利用する組み合わせで並べたこともあった。例えばサラダ油とパン粉、小麦粉を1つのバスケットにまとめるといったスタイルだ。いわゆるトンカツセットみたいなことである。だがこれは料理レパートリーが少ないときには有効だったが、次第にレシピを見ながらいろいろ新しい料理にチャレンジするようになると、多種多様な組み合わせで食材を使うようになり、結局まとめられずにどんどんバラバラになっていった。

そうした紆余曲折を経て現在落ち着いているのが、素材の性質別で分けるという方法である。例えば液体ものとして、サラダ油、ごま油、みりん、料理酒などで左側の一角にまとめる。反対側の角は粉ものだ。小麦粉、片栗粉、唐揚げ粉、天ぷら粉などをまとめる。

内部に小さいラックを設置して、上の段は、乾麺を置く。パスタ、そうめん、袋麺などだ。その隣は、ダシ関係をまとめている。鰹節パック、乾燥ワカメ、煮干しのほか、定番の「だしの素」の詰め替え用パックなどだ。

真ん中のエリアは調味食材だ。いわゆるCook Do的な、パウチに入った食材をカゴに入れて、整理している。他の人から見ればまったく整理されていないように見えるかもしれないが、自分の頭の中の分類と場所が一致しているので、使いやすい。

缶詰やむぎ茶のパック、レンジでチンするごはんのパックなどは、それほど使用頻度が高くないので、その後ろ側に文字通り、放り込まれている。それでも、そこにあることは分かっているので、きちんと整理させていなくてもそれほど不便はない。

見た目のきれいさと使いやすさの狭間

こうした雑多な料理素材の整理は、各家庭でいろいろな試行錯誤があると思う。きちんと整理整頓されていないと気が済まない人は少なくないが、石垣のようにびっちり隙間なく整理すると、今度は利便性が損なわれる。

整理と利便性に対する考え方の違いは、男女の脳の仕組みに大きく関係する部分がある。男性に比べると、一般に女性のほうが検索能力が高い。例えば「鰹だしの箱を探す」という命題に対して、女性は脳内で画像認識を行なう。頭の中で鰹だしの箱をイメージし、そのイメージに一致するものを数秒で探しきる。

一方男性の場合は、モノをだいたいの置き場所で覚えている。いつもここにある、という場所さえ分かっていればよく、細かいところは覚えない。その反面、場所が変わってしまうと、目の前にあるものすらも探せないケースが発生する。

一番合理的なのは、食材も料理道具も、全部を表に出しておくことだ。レストランなどの厨房は、棚や壁を潤沢に作って、そういうことができる構造になっている。厨房は客に見られることはないので、見た目よりもむしろ、場の一覧性を重視している。

一方で家庭におけるキッチンは、常時家族の目にとまるところでもあるし、来客があれば客の目にも触れることにもなる。食材を表に出しておきたくないという考え方にも一理ある。

たまに人のうちに遊びに行くと、キッチンに何もなくて、本当にここで毎日料理するのだろうかと疑問に思う家庭もある。鍋釜を目に付くところに置くと生活感が出てイヤだという理由で、そういうものまで毎回戸棚にしまうという。まあ本人がそれでいいというのなら他人がとやかく言う筋合いはないのだが、毎日行なう作業なのに、それでは目的達成までの手数が多過ぎて大変だろうと思う。

効率なのか、見た目なのか。キッチンという限られた空間内で、両方を満たす「機能美」を実現するのは難しい。結局のところ、 こういうことに正解はなく、キッチンをどう位置づけて、どう運用したいかという意志の問題ということになるのだろう。(了)


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