PTA広報紙を電子化したった(2)──コデラ総研 家庭部(98)

テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(ほぼ隔週木曜日)の第98回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「PTA広報紙を電子化したった(2)」。

文・写真:小寺 信良

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広報紙を電子化すれば、外部事業者への支払いがなくなる。一方でどのような手段を使うかによっては、別の費用がかかることになる。当然その予算は、現状の予算よりも低くなければ意味がない。

加えて別のハードルもある。その電子化の方法に、保護者がついて来られるのか、という課題だ。これまで一般の保護者でも広報紙が作れていたのは、原稿制作がすべて紙ベースの「切った貼った」だったからである。誰でも子供時代には、壁新聞を作らされた経験ぐらいあるだろう。決められたスペースに文字を流し込み、写真を貼り付けるわけだ。

だが電子化となれば、「最初は紙」というわけにはいかない。何らかのデジタルデバイスを使わなければならないわけだが、今の保護者には、パソコンのスキルは求められない。

もちろん、今も仕事でパソコンを使っている人なら大丈夫だろうが、それは決して多くはない。その人のところに負担が集中するという方法論は避けなければならない。

代わって今もっとも普及しているデジタルデバイスは、スマートフォンだ。引き続きフィーチャーフォンを使い続けている保護者もいるが、スマートフォンも持っているという人がほとんどである。

広報紙制作作業で、一部はパソコンを使うことはあるかもしれないが、基本的にはスマートフォンでできる方法を探す必要があった。

方法論を検討する

まず広報紙電子化を実現するにあたり、現在考え得る手段を書き出し、それに対してメリット、デメリットを検討していった。これは1人で考えたわけではなく、教頭先生やネット広告会社を運営している知人など、多くの人とディスカッションさせてもらった結果である。

◎無料ブログ
Engadgetなど、ブログシステムを使うメディアも多い。写真付きのレポートなどを載せるには、いいプラットフォームである。

その一方で、無料ブログアカウントには広告が入る。今どきはほとんどがターゲティング広告だろうが、不適切な広告が入り始めた場合、それは読者側の責任ですよという対応で押し通せるのかという課題がある。

またブログというものをやった経験がある保護者は、案外少ないのではないか。そうなると、ブログツールの使い方習得までのハードルが高いかもしれない。

◎学校ホームページと一体化する
現在学校には、市教育委員会から割り当てられたサーバ領域があり、そこに学校のホームページが掲載されている。広報紙もそこにサブドメインとしてぶら下がるという方法が考えられる。

メリットは、完全に無料で広告も入らないという点だ。

一方デメリットとしては、サイトデザインはどこかに発注しなければならない点、また中身のHTMLを誰が書くのか、という問題がある。管理ツールを使うとしても、誰のパソコンと管理ツールでやるのか。

もうひとつの問題は、サーバ管理権限は教頭先生しか持ってないという点である。今の教頭先生はやっていただけるだろうが、数年で転勤がある教頭先生に依存してしまうと、後に更新が不可能になる可能性もある。

ではPTAでサーバを借りてやればいいのではないかという話も出たが、サーバ管理やコンテンツの掲載がPTAの保護者でずっとできるのか、という問題が解決しない。

◎PDF化して、ファイル配付する
紙の置き換えとしては、一番普通のソリューションである。

ただこれは、メリットがあまりない。なぜならば、紙面の制作にパソコン作業が必要だからである。それができないからこれまで紙で原稿を作り、事業者に丸投げしていたわけだ。

◎ePub化して、ファイル配付する
紙の置き換えとしては、可能性が高い方法だ。

メリットとしては、 ePub化しやすいMarkdown記法で書けるテキストツールもスマホ用のものがあり、スマホだけで完結できる可能性があるということである。またePubリーダーもスマートフォンには標準で装備されており、その点ではあまり困らないだろう。

デメリットとしては、ePubを生成する際に、パソコン上で作業が必要になることだ。ePub制作の定番ツールである「でんでんコンバータ」を使うにしても、WEBツールはスマホのブラウザではうまく動作しない。

またファイルをどのように配付するかも課題だ。思い切ってKindleに登録するという方法も考えられるが、あれは有料販売を前提としたビジネスツールなので、無料での配付はキャンペーン扱いとなる。また出版には毎回審査があるため、未来永劫無料配付のためのプラットフォームとして使っていると、突然アカウント停止を食らう可能性もある。

何らかのファイルサーバからファイルを個別にダウンロードさせて、スマホのリーダーで開くというのでは、今度は読み手のほうの知識が問題となる。サポートが大変になりそうだ。

◎Facebookページを使う
自治体広報などで使われている実績もあり、広報ツールとしては割とこなれた印象だ。

メリットとしては、無料で利用でき、都度更新も簡単だ。スマホアプリで更新もできる。

デメリットとしては、Facebookは付き合いが面倒になるということから、敬遠している人も多く、一般の利用者はそれほど多くはないところだ。Facebookページだけならアカウントがなくても閲覧できるが、アカウント作成をしつこく求められるので、Facebookと距離を置きたい人には負担になるだろう。

◎LINE@を使う
LINE@は、LINEを使って広告宣伝ができるツールで、以前は有料であったが、2015年に個人向けの無料プランが開始された。

メリットは、LINEの普及率である。国内利用者は6800万人といわれており、実際にPTAや子供会の連絡は、今やLINEですべて完結している。どのみち子供たちも高校ぐらいになればLINEを使うだろう。

一方デメリットとしては、アカウント開設にあたっては誰かのLINEアカウントが必要であり、それを誰にするのか、というところだ。中学校保護者も3年で卒業してしまうため、会長のアカウントを使うわけにもいかない。PTA公式のスマホを契約して、それでアカウントを取得するといった方法が必要だ。

この時点で、紙の広報紙は上半期の分はすでに出版済み。次号からの電子化を検討するには、2カ月ほど余裕があった。とはいえ、どれかの方法に決めてある程度実験もしなければならない。そう考えると、すべての方法を試している時間はなく、現時点でやれそうな方法を絞り込む必要があった。(つづく)


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