どうする? 在宅勤務
「サイボウズはなぜ在宅勤務用PCまで支給するんですか?」情シスに聞いたら、理念へのこだわりがすごかった

100人100通りの働き方を実現しているサイボウズ。自由な働き方の裏には「在宅勤務用PCを支給」「マウス・キーボードは好きなものを選択可能」など、個人の要望にあわせてシステム環境を整える文化があります。
とはいえ「やりすぎじゃないの?」「制度を悪用する人はいないの?」「情シスは大変じゃないの?」という疑問も浮かび上がります。
今回はサイボウズを支える情報システム部を直撃。情報システム部の青木哲朗さんと鶴村修二さんに、情シスのあり方について語ってもらいました。
全社員がMacもWindowsも選べて、在宅用PCも配布って本当ですか?

柔軟な働き方を実現させるには、情報システム部門の支えも必要となります。今日は情シスのお二人が日々どのように100人100通りの働き方を支えているかを聞かせてください。

100人100通りの働き方のシステム面でいうと、サイボウズでは個人の要望に合わせてデバイスを支給していますね。

青木哲朗(あおき・てつろう)。大学卒業後、事業会社のSEとして10年以上インフラ構築に携わる。サイボウズには2014年7月に中途入社。以来情シス一筋。



サイボウズの標準機PC。MacもWindowsも選べるようになっている。


開発職であれば、それにプラスしてデスクトップ1種と、開発向けMacBook Pro1種類の6パターンを用意しています。

来週、4月入社予定の新人さんのPCの準備が完了しました。例年新人さんPCはWindows一択だったけど、今年はWindows/Macどちらかを選べるようにした(普段から使い慣れているPCを選択してもらった)ところ、圧倒的にMac!みんなMac好きなのね。。。 pic.twitter.com/E8WQkctzXF
— あおてつ (@ao_Tetsu) 2019年3月29日


でも、業務に必要なシステムは人それぞれ違うので。社員が最高のパフォーマンスを出せるよう、最大6種類から選べるようにしています。

鶴村修二(つるむら・しゅうじ)。サイボウズに新卒で入社。営業を経験した後に情シスへ異動。



MacとWindowsで挙動が違うので、マニュアルを2種類用意しなければいけなかったり。トラブルの切り分けもやることが多くなりそうです。

何か社内システムを導入する時も「Macでも使えるかどうか」を必ず要件に入れていますね。

あと、サイボウズではふだんオフィスに出社している方でも「ノートPCを家に持ち帰るのが大変だから」と言えば、在宅勤務用のPCも追加で支給してもらえると聞いたのですが…

在宅勤務用のディスプレイも希望があれば支給します。


「在宅勤務をするたびにPCを持ち帰るのが面倒だから」「在宅勤務だとモニターがなくてやりづらいから」という理由で、在宅勤務をしづらくなってしまうのはよくないですよね。
コストはかかりますが、100人100通りの働き方ができるサイボウズだからこそ、いつどこでも最高の仕事ができる情報システムを提供する。それが、サイボウズ情シスのミッションなんです。

マウスやキーボードも価格上限なしで購入OK。やりすぎじゃないんですか?




先ほど言ったように、サイボウズの情シスの仕事は「社員が最高のパフォーマンスを出せるシステム環境を提供すること」。
生産性が上がるのであれば、高いキーボードやマウスの購入も大歓迎です。



Happy Hacking Keyboard Professional2 (24,990円のキーボード)。特に開発職は、好みのキーボードを購入する人が多い。


「自分の成果が出ないのは、PCのスペックが悪いから」「ディスプレイがないから」と会社のせいにすることができないですからね。

ちょっと気になるのは、予算です。「サイボウズはお金があるからそんなことできるんでしょ?」と思う方もいらっしゃるのかなと。
IT投資にすごく積極的な気がするのですが、実際はどうなのでしょうか?

サイボウズの場合、多様な働き方を実現するためにIT投資が他社より若干多いのかもしれませんが、その投資が必要かどうかの判断は必ずしていますし、お金を湯水のように使っているわけではないです。

ちなみにITへの投資って効果が見えにくいと思うんですが、定量的に効果測定はしているんですか?



たとえば社員の希望で3万円の良いキーボードを買ったとしても、使う年数でいうと2〜3年ですよね。
500日使うと考えれば、1日60円くらいなんですよ。それで社員のパフォーマンスやモチベーションが向上するのであれば、安い投資です。

制度を悪用する、欲張りな社員はいないんですか?



実際にあったケースだと、「PC4台と使いやすいキーボードを2つ用意してほしい」という要望がありました。


なので「在宅勤務をするときにも今のPCを追加で2台ほしい」「使いやすいキーボードも、在宅用と会社用で2台ほしい」ということでした。









サイボウズの理念である「チームワークあふれる社会を創る」ためには、まず自分たち自身が「チームワークあふれる会社」でなければいけない。そのために必要なシステムを提供しているだけという認識です。


そこまで個人の要望に対応していたら、情シスは大変じゃないんですか?


ただ、そこまで個人の希望に合わせて端末を貸し出していると、依頼の対応や、端末管理も相当大変なんじゃないでしょうか。情シスだけずっと残業している……とか。




マウスやキーボードの購入依頼はフォームに入力するだけでよく、電話やメールは使わない。



キントーンに寄せられた依頼の一覧。依頼ごとにステータス管理ができるようになっている。


購入に必要なやりとりは、オンラインで完結する。

ただやっぱり、ここに記入するだけでいいなんて、制度を悪用して高いマウスやキーボードを買いまくる社員がいないか心配になります(笑)。




なので、合理的な理由もないのに高額なキーボードの申請をしている人がいたら、周囲からの信頼度が下がってしまう。
サイボウズには「質問責任」と「説明責任」という文化があるので、「あれ?」と思った購入依頼があれば僕たちも理由を確認しますし、質問された人は自分がなぜその備品が必要なのかを説明する責任があります。

あとは、社員一人ひとりの要望に合わせて端末を配布していると、端末管理が煩雑になると思うのですが……。


誰がどのPCを借りているのか、リアルタイムで把握できる




拠点の増加に伴い、社員をどうサポートできるかが今後の課題




会社のMVP的なイベント。社員からの「ありがとう」を多く集めた人やチームが表彰されるんだけど、今年受賞したチームは情報システム部…!
— ゆうこ (@yuucha810) 2018年12月21日
ふつう業務部門と対立しがちなことが多い情シスという部署が、サイボウズでは1番多くのありがとうを多く集めていたことに、なんだかとても感動した。 pic.twitter.com/RismL0ld5i
※サイボウズ社内の年間MVPを決めるイベント。社員が「ありがとう」を伝えたい人にコメント付きで投票し、一番多かった人が選ばれる仕組み。




おかげさまでビジネスも好調で拠点も増えているのですが、すべての拠点に情シスメンバーを配置できるとは限らない。
在宅勤務している社員も含めて、「情シスがいない拠点のメンバーをどうフォローできるか」が今後の課題になると思います。

変更履歴:「フルタイムで在宅勤務をする人に在宅勤務用端末を与えるのは当たり前ではないか?」というご指摘があったため、 文言を以下のように変更しました。
仁田坂:あと、サイボウズでは「在宅勤務用のPCもほしい」といえば支給してくれると聞いたのですが……。
→仁田坂:あと、サイボウズではふだんオフィスに出社している方でも「ノートPCを家に持ち帰るのが大変だから」と言えば、在宅勤務用のPCも追加で支給してもらえると聞いたのですが……。
鶴村:支給していますね。なんなら、在宅勤務用のディスプレイも支給しちゃいます。
→鶴村:支給していますね。オフィスと家用で、会社支給のPCを2台使っている社員は多いです。
節約志向だったサイボウズの情シスが変わったきっかけは?ー在宅用PC支給、キーボード選び放題の裏側を語る|サイボウズ ワークスタイル百科
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執筆

仁田坂 淳史
現在複数社のコンサルタント・編集長を兼務するメディアの立上げ屋。紙媒体・Web媒体にとどまらないこれからのメディアづくりを目指し、2015年に出版ベンチャー株式会社ZINEを設立。担当したメディアはmixi・Find job! Startup、ビズリーチ・日刊キャリアトレックなど。
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