出社回帰かリモート継続か。どちらか選ばなければいけないんですか?——サイボウズ青野慶久×恩田志保
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出社かリモートか、結局どっちが正解なの……?
「自分はリモートじゃなければ困る」と訴えるメンバー。「成果を出すために出社してほしい」と要請する経営者やマネージャー。多くの企業でくり返される二項対立の議論に、ちょっと疲れてしまった人も多いのではないでしょうか。
サイボウズは「働く人が幸せで、チームの生産性を高められるなら、手段はどちらでもいい」と考えています。
みんなが納得でき、幸福度も生産性も高まる働き方を実現するために欠かせないプロセスとは? サイボウズ代表の青野慶久と、人事本部 副本部長の恩田志保が議論します。
「リモートワークで生産性が下がる」は本当?
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サイボウズでは相変わらずリモート派が圧倒的多数ですが、出社回帰する企業や職場では「リモートワークは生産性が下がってしまう」と考える人も多いようです。
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下がる人は下がるし、上がる人は上がるというだけではないでしょうか。仕事内容や本人のコンディションも影響するでしょう。
ちなみに僕自身は「リモートで生産性が上がる」と感じていますよ。移動時間がないため疲れにくく、1日の中で集中できる時間も増えました。
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ただ経営者として気になるのは、どんなプロセスでその決定に至ったのかということ。
メンバーと対話しながら納得のいく結論に至ったのならいいけど、誰かが思いつきで決めているだけなら、会社もメンバーも不幸になってしまう可能性が高いでしょう。
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青野慶久 (あおの・よしひさ)。サイボウズ代表取締役社長。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年サイボウズを設立。2005年現職に就任。著書に『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)、『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』(PHP研究所)など
マネージャーとメンバーによる「100人100通りのマッチング」
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まずチーム内で働き方を話し合い、「チームの働き方ポリシー」を決めます。
マネージャーは、メンバーにどんなふうにチームに貢献しようと思っているのか、業務をどのように進めて成果を出そうと思っているのかを聞いていき、オファーを出してマッチングしていきました。
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マネージャー陣は、メンバーのさまざまな希望を受け止めて調整するのに苦労したかもしれませんね。
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メンバーはそれを踏まえて自分の働き方を考えるので、必然的にチームの目線を持つようになるんですよね。
※サイボウズは2024年、それまで象徴的に発信してきた「100人100通りの働き方」という表現を見直し、「100人100通りのマッチング」に変更した。個人が希望する働き方や出せるアウトプットと、チームが求められる役割が合致した場合にマッチングが成立する。
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恩田 志保(おんだ・しほ)。サイボウズ 人事本部 副本部長。2007年にサイボウズに入社し、一貫して人事領域に従事。現在は副本部長として、人事戦略、働き方、環境デザインなどに幅広く携わる
制度は全員の対話で決める。「賛成多数だからGO!」ではない
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コロナ禍に支給していた「在宅勤務手当」を廃止する際も、人事は大変な思いをしたんじゃないですか?
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経営会議で起案された「在宅勤務手当の廃止」の議題に対する助言の一部。承認までに70件以上の助言が集まった。助言はkintoneで誰でも登録・閲覧できるようになっている。(画像は編集部にて一部抜粋・編集したものです)
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こうしたプロセスはたしかに苦労の連続です。
それでも、オープンに議論することで最終的な結論への納得感が高まりますし、人事部門内にも新たな気づきがもたらされるので、わたしたちに欠かせないプロセスだと感じています。
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極端なことを言うと、賛成99の反対1という状況でも、反対1を尊重することがありますから。
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人事が提案する内容は多くの人に影響します。そのため猛烈な批判を浴び、原案が完全に消えてしまう場面を何回も見てきました。
面倒な対話プロセスを経ることこそ「最強のやり方」
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みんながオープンに議論して結論にたどり着くので、決めた後の運用スピードも非常に速いんですよね。
ただ、議論の過程では反対意見を多く目にするので、起案者のメンタル的にはしんどい部分もあります。日本人はこれを嫌がる傾向があるのかもしれません。
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でも実際にやってみると、むしろ穴がある案のほうが議論が深まるんですよね。
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具体的な案を出さずに「リモートワークの生産性、何となく下がっていませんか?」とゆるめに問いかけるくらいでいい。そうすると共感する人もしない人も反応してくれて、多方面にアイデアが集まります。
僕は、事業戦略を練るときにもこの技を使って、社内にゆるく問いかけていますよ。
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一人ひとりが自分の働き方を主体的に考え、マネージャーと議論し、チームの理想像とマッチングされているわけですから、僕は最強のやり方だと思います。
働く個人のモチベーションも爆上がりするかもしれません。
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「2024年の人事施策の中でもっともうれしかった」「マネージャーと本質的な会話ができるようになった」と言ってくれる人もいました。
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チームの理想像を議論し、マネージャーもメンバーも納得した上で働く場所を決めたからこそ、そうした後ろめたさがなくなったのではないでしょうか。
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出社とリモート、それぞれに捨てがたいメリットがある
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背景には、組織規模が拡大しマネージャーの人数が増えたことで、複数の本部を横断する議論や意思決定が進みにくくなったことがあります。
そこでリアル合宿を復活させたところ、たった1日でもたくさんのことを決められるようになりました。
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サイボウズではグループウェア上にありとあらゆる情報が集まるので、出社して誰かに聞きに行くよりも、グループウェアを検索したほうがほしい情報に速くたどり着けます。
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出社していても、広いオフィスの中で青野さんと出会う確率は低いですし、いつでも雑談できるわけではありませんから。
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どちらか一方が正解ではない。その時々の目的に応じて、手段を使い分けることが正解なのだと思います。
※分報とは、業務の状況やいま考えていること、雑談などをリアルタイムにオンラインで発信してチームに共有する取り組みのこと。「社内SNS」「社内X」のようなイメージ。
「個人の幸福」を本気でリクエストすれば「生産性の向上」につながる
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現在の僕でいうと、もし出社を押しつけられたら間違いなく不幸になります。
自宅の冷蔵庫に1.5Lのコーラを常備し、キンキンに冷えた状態でいつでも飲めることにこの上ない幸せを感じているので(笑)
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みんなが幸せに働き、「ここにいてよかった」と思える状態になれば、当然生産性も上がっていくはず。
そうした好循環をつくるために、まず自分自身の幸福と向き合い、ちゃんと言葉にして伝えることが大切なのだと思います。
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その際には、勤務条件や給与などの表面的・定量的な条件だけではなく、互いの背景もちゃんと知っておくべきだと思います。
あるメンバーについて、「この人は関西出身でゆくゆくは地元に帰りたいと思っている」とマネージャーが理解していれば、関西で人材を求めているチームにうまくマッチングできるかもしれませんよね。
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個々に対話を重ね、本気でリクエストし合う。そんな関わり方を大切にするチームでありたいですね。
執筆:多田慎介 撮影:高橋 団(サイボウズ)企画・編集:山本悠子(サイボウズ)
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執筆
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多田 慎介
1983年、石川県金沢市生まれ。求人広告代理店、編集プロダクションを経て2015年よりフリーランス。個人の働き方やキャリア形成、教育、企業の採用コンテンツなど、いろいろなテーマで執筆中。
撮影・イラスト
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高橋団
2019年に新卒でサイボウズに入社。サイボウズ式初の新人編集部員。神奈川出身。大学では学生記者として活動。スポーツとチームワークに興味があります。複業でスポーツを中心に写真を撮っています。
編集
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山本 悠子
新卒で大手メーカーで勤務したのち、2016年にサイボウズへ入社。製品プロモーションやWebディレクションの経験を経て、サイボウズ式編集部に。組織づくりや働き方に興味があります。