経営者は株主を重視しすぎじゃないか?──「会社は世の中を豊かにする器」をサイボウズ株主総会から掘り下げる
サイボウズの第19回定時株主総会が2016年3月に行われ、その様子はYouTubeでも閲覧できるようになっています。その中で、「Yahoo!掲示板」に寄せられたご意見やコメントを取り上げながら、株主のみなさまへの独自の見解を副社長の山田理が述べました。そこを掘り下げながら、会社と株主の関係について考えてみます。
まずは、第19回定時株主総会の様子をどうぞ
その他、ご質問いかがでしょうか? 今日、実は質問が出なかったときのためにページを作りまして、Yahooさんの匿名の掲示板で誰が書いたかもわからないんですけど、厳しいコメントもいただくことがあります。 1つ目は、『この人たちって、何かあったら株を売っちゃうんだ』と言って投資家や株主を軽視していると。こんな現経営陣が居座る限り投資に値しないです、とか厳しい言葉をいただくこともありました。あ、ちなみにこれ発言したのは山田なんですけど。どうですかね、山田さん(笑)
答えていいんですかね? たぶんにサイボウズ式というオウンドメディアがあえて炎上させようと悪意をもって書いた記事の一部なんですけど(笑) 言いたかったことは、私自身は上場前からずっと株主のみなさんとの対応をやっておりまして、一時期は僕ら配当もしなくって投資をして株価を上げていくという形で経営をしてまいりました。 一時期M&Aをやりながら事業を拡大していく中で、時価総額は1200億円から1300億円までになりました。今の10倍まではいかないけど、結構高い株価になったんですよ。 すると「ずっと前からファンだ!」「サイボウズの株を持ち続ける」「応援しているぞ!」といった株主さんが、株主名簿をみていくとどんどん減っていくんですよ。 株価があがればあがるほど株主さんがいなくなっていて、株価が下がって、ふと株主名簿をみたら株主がほとんど入れ替わっていると。 あ、やっぱそういうことなんだなと。株価が上がっても割高だと思ったら株主さんは売られるし、割安だと思ったら買われるし、そういうことなんだなと。 一方で、経営陣も含めた社員は「チームワークあふれる社会を作る」「チームワークあふれる会社をつくる」ということで、株価が割高であろうが割安であろうがずっと頑張って事業をやっていっているわけです。 その中で、株価のことだけを考えて、株主のことだけを考えて従業員の給料を削って利益を出し、株価を上げるとかじゃなくって。世の中を豊かにするためにいろんなステークホルダーに対してもう少しバランスよく、投資かお金をまわしていくのがすごく大事なんじゃないかと気づいたんです。当たり前の話なんですけど、改めてそう思うところがあって。 で、戦略っていいますか、配当のところも青野が説明しましたけども、「株価が上がったら結局、今応援してくれている株主さんがいなくなるんだ。そうなのであればビジョンに共有し、それに賛同して株主としてサイボウズを応援したいというみなさんに長く付き合っていただきたいな」と。 そのためには、私たちが出した利益を50%お渡しすれば「サイボウズの株を売るよりも持っていた方が得」ってなるのではないかと。そしたら今度は投資しようとしたら利益が出ないと(笑)。 で、利益が出なかったときにまた株主さんが持ち続けられない。だったらぼくらが先行投資しようとしているクラウド事業の売り上げに応じて株主さんに還元する仕組みを作ろうと。そんな感じで株主さんに対しても長くもっていただけるような仕組みを試行錯誤しながらやってきました。 「株主軽視か、すごい重視か」という点では軽視になるのかもしれないですけど、私たちなりの考え方でこうやっているということをご理解いただきたかったところです。
私たちなりに株主さまを重視して取り組んでいきます。私たちにとっては株主のみなさまもチームの一員、サイボウズチームの一員だと思っています。 チームワークあふれる社会をつくるために、ぜひ株主さまにも引き続き協力していただきたいと。その姿勢をいかにして施策で実現していくか、今はクラウドの配当という形で、クラウドを株主さんといっしょに伸ばし、伸びた分だけ還元しますという制度にしてあります。 株主が入れ変わったという話もあったんですけど、今は社員がどんどん株式を買っています。社員の人がサイボウズの未来を信じてくれていると思っています。社員持株会の持株比率が上がってきておりまして、今は第3位ですね。 創業者の畑と私の次ですね、サイボウズ従業員持株会、持株比率ですでに5.06%ということで、社員もオーナーの気持ちを持って事業に取り組んでおります。このままあまり比率が上がっていきますと、社員が会社を買収するんじゃないかと思ってそこは若干心配ですけども、非常にいい傾向だと思っております。 ぜひ長くサイボウズとお付き合いいただいで、いい社会をつくる活動に参加いただければとおもっております。
1つ言うのを忘れていました。そうはいっても大株主、創業者の畑がいて青野がいて従業員がいて、僕は4番目の株主なんですけど。実は僕、みなさんいうとびっくりするんですけど、この株を買うのに1億円以上借金しているんですよ。 で、みなさん株価あげろとか配当しろとかいうじゃないですか。この株主総会は1年に1回なんですけど、ぼく毎日かみさんにそれ言われるんですよ。みなさんよりも本当に切実なんですよね(笑)。それだけ大変で、それだけサイボウズの将来を信じて覚悟を決めて本気でやっていますよということを付け加えておきます。
切実なご意見、ありがとうございます(笑)。
世の中が株主を重視しすぎているのではないか?
という株主総会だったんですけど、あいかわらず公明正大にぶっちゃけていますよね。まずは、サイボウズ式は炎上させようとさせていませんからね。(笑)
はい。(笑)
というわけで、本当に聞いてみたかったのは、株主様をどれだけ重視するかということです。 別の記事のインタビューによると、「サイボウズが株主を軽視しているように見えるかもしれませんが、世の中が株主を重視しすぎなんですよ」という話がありました。ここを深くお聞きしてもよいでしょうか?
そもそも会社って世の中にいいことするためにあるじゃないですか。よく言う社会貢献。価値あるものを提供して喜んでくださるお客様がいて、価値に対する対価を得て、その対価でよりよいものを提供するために再投資する。それを継続していくものだと思うんです。 もちろん、最初の何もないところから新たな価値を生むために、株主の方々からお預かりした資金に対して還元していかなくてはなりません。ただ、それと同時に、その後、いっしょにその価値を創り、提供してくれている社員にも還元していくべきですし、これから提供してくれる社員にも投資していきます。 さらにその価値を生むために協力してくれているパートナーや協力会社、さまざまな材料やサービスを提供してくれているサプライヤーの方々にも。そしてインフラを使わせていただいている公共機関の方々への税金。最後に何かの時の備えとして会社がもつ内部留保。 細かく分けだすとキリがないですが、多くの人がかかわりあって世の中を豊かにするための価値あるものを提供しています。
なるほど。
にもかかわらず、世の中では「利益」ひいては「株式価値」に会社の評価基準が偏りすぎているように感じるんですよね。 売り上げをできるだけ増やして、社員の給料をできるだけ下げて、協力会社さんへの支払いをできるだけ抑えて、税金をできるだけ少なくする。そうすれば、利益が増えて株価が上がる。その仕組みを否定するつもりはまったくなく、それはそれでいいんですけど、ただ、「行き過ぎている」と感じることが多いし、増えてきているなと。
行き過ぎている、とは?
売り上げを上げるために偽装してお客様をだます。社員にできるだけ安い賃金で負担をかけて、挙句の果てに解雇する。協力会社さんがつぶれるくらいに仕入れ価格を下げる。粉飾して利益を増やし、あの手この手で税金を減らす。これらが原因で引き起こされる問題が毎日のように新聞を賑わす。 誰がいったい幸せになっているんだろうかと。一方で、株価が上がって買った価格より高い価格で売ってお金を儲けた“元株主”の方々がそこにはいる。 会社が世の中を豊かにするための器なのであれば、その「世の中」には、株主だけでなく、お客様がいて、もちろん社員もいて、協力会社様や公共機関で働く方々がいる。その方々も含めて豊かにするあるべき目的を忘れないようにした上で、うまくこの資本主義の仕組みを活用していきたいなと。
ありがとうございました。
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