ブロガーズ・コラム
「就職活動に失敗したら人生終わりだ」なんて考えすぎ
サイボウズ式編集部より:チームワークや働き方に関するコラム「ブロガーズ・コラム」。日野瑛太郎さんのコラムです。
就職活動中の学生さんと話していると、たまに「自分は絶対に企業選びに失敗したくない」と言われることがあります。
最近は、ブラック企業のような社員を使い潰す企業の存在がニュースなどでも取り上げられていますので、「企業選びに失敗したくない」という学生さんの気持ちは痛いほどよくわかります。そういうひどい企業を避けようとするのは当然です。僕も、明らかに悪い噂しか聞かない企業を受けようとしている学生さんがいた場合には、やめたほうがいいとアドバイスをすることはあります。
ただ、そういった問題外の企業を除いて考えてみると、何をもって企業選びの成功・失敗を捉えるかは簡単なことではありません。たとえば、誰もが名前を知っている大企業に就職できればそれは成功なのでしょうか? あるいは、志望していた業界とは違う業界の企業に就職することになってしまった場合、それは失敗なのでしょうか?
就活中の学生さんの中には、「ファーストキャリア選びに失敗したら、人生は終わりだ」とまで考えている人もいるようです。しかし、これは明らかに考えすぎです。もちろん、ファーストキャリアで自分に合った会社に行けたほうがよいのは間違いないですが、仮にそうではなかったからと言ってそんなに悲観する必要はありません。
第一志望の会社に入れても、それが正解かどうかはわからない
就活生の中には、第一志望の企業に入れれば就職活動は「成功」だと単純に考えている人もいるようです。しかし、話はそんなに単純ではありません。
学生のうちにどんなに熱心に企業研究を行ったり、自己分析で自分の適性を把握しようとしたところで、本当に選んだ会社が自分に合っているかどうかは実際に働いてみる以外の方法ではわからないものです。学生のうちにどれだけ調べても、就職してみると「あれ、思っていたのと違うな」という部分は必ず出てきます。「完全に想像していたのと同じだった」という人には会ったことがありません。
考えてみるとこれはあたりまえで、会社に就職して働くという行為には多くの不確実性が内在しています。普通、内定を取った時点では、どの部署に配属されるかも不明ですし、どんな人と一緒に働くかも不明です。「誰と何の仕事をするのか」さえ漠然としかわかっていない状態で、それが正解かどうかを判断するのは早計(早まった考え)だと言えるでしょう。
第一志望に落とされたことが逆によかったと言える場合もある
僕自身の就職活動を振り返ってみると、僕が実際に就職することになった会社は第一志望の会社ではありませんでした。自分の中で「なんとなく、ここが第一志望かなぁ」と思っていた会社には、残念ながら最終面接で落とされてしまいました。
普通、不合格の理由は教えてもらえないものですが、なぜかこの会社は落ちた後に電話で「落とした理由」を教えてくれました。その時に言われたのは「ストレス耐性がなさそうだから」という理由でした。その時はちょっとガッカリしたのですが、今になって振り返ってみると、この会社に落ちたことは自分にとってもよかったことだと思います。
当時はそれほど実感がなかったのですが、実際に他の会社で働いてみて自分が想像以上に「ストレス耐性がない」ことに気づきました。こんなにも自分が気が進まないことはやりたくない人間だったとは、就職活動中にはわからなかったのです。
僕が第一志望にしていた会社は、給与面等では恵まれていたものの、ストレスフルな仕事もしっかりとこなさなければならないような会社でした。もし、この会社から内定をもらって就職をしていたら、3ヶ月もたたずに逃げ出していたに違いありません。自分では見えていなくても、面接官にはしっかりこの点が見えていたようです。すべての場合がそうだというわけではありませんが、第一志望に落ちたことが実は正解だということだってありえます。
就職してから「自分に合った仕事」をさがしていけばよい
ファーストキャリアでいきなり「自分に合った仕事」に就こうとしても、実際には失敗することのほうが多いです。僕の大好きなドラッカーの言葉に「最初の仕事はくじ引きである」という言葉がありますが、この言葉ほど就職活動を的確に表現したものはないでしょう。それほど、就職活動は運に左右される要素が大きいのです。
では、実際に運が悪くて最初の仕事選びに失敗してしまった時はどうすればよいのでしょうか? これは簡単です。最初のくじ引きで失敗したのであれば、もう一度くじを引き直せばよいのです。そうやって試行錯誤していけば、いずれ自分の適職に出会える可能性も高まります。ファーストキャリアに固執するのは得策ではありません。
年配の方などはいま未だに「一度就職した以上、仕事がどんなに自分に合っていないと思っても3年は黙って勤めろ」と言うようですが、これは時間の浪費という側面のほうが強いです。現実的な話をすると、20代前半から半ばぐらいであればスキルではなくポテンシャルを売りにした転職が可能なので、若いうちの貴重な時間を明らかに自分に合わない仕事をするために費やすべきではありません。
就労経験がない学生のうちよりも、社会人になってからのほうが「働くこと」そのもののイメージが鮮明になっているので、仕事選びの精度は高くなっていると言えます。就職活動が終わったら仕事選びは終わりと考えるのではなく、就職してからもずっと仕事選びを続けていくという姿勢でいることが大切です。
ファーストキャリアはあくまで長い職業人生の最初の一歩
ファーストキャリア選びは、結局のところ長い長い職業人生の最初の一歩でしかありません。最初に一歩踏み出す方向を間違えたからといって、修正が効かないなんてことは絶対にありません。逆に、最初に一歩踏み出す方向が合っていても、その後に進む方向を間違えると目的地にはたどり着きません。
職業人生は学生の期間よりもずっと長いものです。その長い職業人生が、ほんの数ヶ月の就職活動だけで決まるようなことはありません。就活生のみなさんは、もっと肩の力を抜いて最初の仕事を選んでいただければと思います。
イラスト:マツナガエイコ
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執筆
撮影・イラスト
松永 映子
イラストレーター、Webデザイナー。サイボウズ式ブロガーズコラム/長くはたらく、地方で(一部)挿絵担当。登山大好き。記事やコンテンツに合うイラストを提案していくスタイルが得意。