働く場所や時間、部署を自由に選べるなど、「100人100通りの働き方」へのチャレンジを続けるサイボウズ。
実際、社員の約3割が複業経験者であり、コロナ禍でもテレワークを全社で実施し、順調に成果を挙げています。
一方、サイボウズで営業インターンをしている金井さんからは「そんな自由な働き方をして、どうして社内はカオスな状況にならないか?」という疑問も。
その疑問の答えを探るべく、サイボウズ新卒採用担当の綱嶋航平と、キャリア採用担当の武部美紀に聞いてみました。
こんなに自由な働き方なのに、どうしてカオスにならないんですか?
金井
サイボウズでインターンしてまず驚いたのが、「本当に自由な働き方ができる会社なんだ!」ということ。
週3や週4の働き方をしている人もたくさんいますし、複業も自由だし、働く時間や場所を社員が自由に選べるようになっていますよね。
サイボウズでは各メンバーが理想の働き方を宣言して実施する「働き方宣言制度」を導入している
武部
よく言われます(笑)
金井
サイボウズって自由な働き方ができる環境なのに、気が緩んで好き放題やっちゃおう!と思う人はほとんどいないですよね。
なぜサイボウズ社内はカオスにならず、組織としてちゃんと成り立っているんでしょうか?
武部
一番の理由は、サイボウズの「チームワークあふれる社会を創る」という理念に共感する人を採用しているからでしょうね。
それぞれが自由に働いたとしても、共通の理念に向かっていて目的がブレないので、社内が無法地帯にならないんです。
武部美紀(たけべ・みき)2005年、新卒で人材系コンサルティング会社に入社。営業兼コンサルタントとして中小企業の採用教育企画、組織開発を支援。その後、企業ブランディング専業のコンサル会社を経て、2016年にサイボウズ株式会社に入社。人事部採用育成チームに所属。複業採用プロジェクトを担当
綱嶋
最近は新しく入社するメンバーが、サイボウズに関する記事を読み込んでいるので、長年いる社員よりもサイボウズの理念をわかっていることも多いですね。
入社したばかりのメンバーが「この研修にはどんな意味があるんですか?」「この企画の理想はなんですか?」と社歴が長いメンバーに堂々と質問したり。
武部
「質問責任」「公明正大」などサイボウズが大切にしていることを入社時から理解し、実践できている人が多い。だからこそ、働き方が自由でも社内がカオスにならないのだと思います。
サイボウズの企業理念。気になったことがあれば質問をしなければいけない「質問責任」や、公の場で明るみに出ても、正しいと大きな声で言えることをする「公明正大」などを大切にしている
理念に共感しているかを見極めるのって、むずかしくないですか?
金井
採用が鍵だったんですね……! サイボウズの採用では、応募者の「理念への共感度合い」を見極めるために、なにか特別な選考をしているんですか?
武部
うーん……。本当に普通なんですよね。
金井
えっ?
武部
ほかの会社と同じように、経歴や志望動機などを聞くだけで、サイボウズ独自の質問をしているわけではありません。
綱嶋
強いていえば、グループワークなど集団面接は極力減らして、応募者の方と1対1で「個人面談」でお話しするようにしてます。でも、それ以外は普通だと思いますね。
綱嶋航平(つなしま・こうへい)。2017年に新卒でサイボウズに入社。入社以来一貫して新卒採用に携わる。2019年10月より、採用育成部新卒採用チームのリーダーを務めている
金井
そうなんですね。ただ、「理念に共感しているかどうか」を判断する方法が気になります。それって難しくないですか?
武部
そうなんです。サイボウズの理念は「チームワークあふれる社会を創る」ですが、一般的に「チームワーク」に共感しない人はほとんどいません。
金井
たしかに。
武部
しかも、ほとんどの応募者の方が、サイボウズのことをめちゃくちゃ調べてきてくださってるんですよ。
採用サイトだけではなく、サイボウズにまつわる書籍や『サイボウズ式』を読み込んできてくださることもあって。
金井
「サイボウズのファンだから、たくさん調べてきてるし、働きたいです!」という人が多そうですね。
綱嶋
だからこそ、「共感以上のものがあるかどうか」がポイントなんです。
金井
共感以上のもの、ですか……?
綱嶋
具体的には、「サイボウズのファン」なのか、「理念を達成する覚悟がある仲間なのか」ということですね。
金井
両者にはどんな違いがあるんですか?
綱嶋
サイボウズを大好きになってもらえるのはうれしいんですけど、実際働いてみると、大変な業務もありますし、お客様から厳しいフィードバックをいただくこともあります。
「チームワークあふれる社会を創る」という過程において、辛いことは絶対あります。なので、「ファン」目線ではなく、「仲間」としての覚悟がある人と僕たちはチームになりたいと思っています。
金井
たしかにいくらサイボウズのことをたくさん調べてきていても、「ファン」なのか「仲間」なのかで、覚悟の大きさが違いそうですね。
ちなみに応募者が「理念に向かって動ける覚悟のある人かどうか」は、どうやって確認するんですか?
綱嶋
それは面接で「具体的な事実」を聞くようにしています。
サイボウズでは、事実と解釈を分けて対話することを大切にしています。
「チームワークあふれる社会を創ることに共感する」のは「解釈」で、応募者の内側で思ったことです。ただ、それだけ聞いても、本当にそうした社会を創りたいのかわかりません。
金井
たしかにそうですね。
綱嶋
社長の青野は「人間は理想に向かって行動する」と言っています。理想があれば、何かしらの行動を起こした事実があるはずです。
だからこそ、僕らは応募者の外側で起こった「事実」を確認していきます。
武部
たとえば、チームワークに共感した理由が学生時代のゼミでの出来事だったら、そのときのシチュエーションを深掘りして、具体的にどうチームワークをよくしようと行動したのかの事実を確認していく感じですよね。
綱嶋
そうそう。「チームワークに共感しています!」と言っていたとしても、具体的な事実を聞いていくと、辻褄が合わないこともあるので、そこで見ていますね。
「正しく評価しよう」なんて思っていない
金井
ここまで聞いていると、サイボウズは本当に候補者一人ひとりと向き合っているのだと感じます。
でも、しっかり向き合っているからこそ、相手が本当にサイボウズとマッチするのか迷うことはありませんか?
武部
迷いますよ!(笑)
サイボウズは毎回2人の面接官がいるのですが、迷ったら、次の面接官に申し送りをして、次の面接に進んでもらっていますね。
サイボウズではキントーンの「採用面接管理アプリ」で、応募者のデータや、選考の進捗をチームで共有でき、申し送り事項を共有している。(※キャプチャはサンプルです)
武部
サイボウズではありとあらゆる人事系の管理を
キントーンで行っているのですが、迷った場合は面接官にキントーンの「採用面接管理アプリ」のコメント欄に、迷った理由を記入してもらうんです。
たとえば「公明正大さはありそうだが、グループウェアへの理解が少し弱いかもしれません。その点、2次選考で確認してみてもらえますか?」とか。
綱嶋
そのコメントを見た次の面接官は、「こういう見方もあるんだ」とほかのメンバーの視点を理解した上で、自分なりの観点から応募者を見るようにします。
そうやって、みんなで判断しながら、1次面接から最終面接までリレーをつないでいく。まさにチームワークで、サイボウズらしいなと思います。
金井
なるほど。面接って本当に大変ですね……。応募者を「正しく評価する」って難しくないですか?
武部
そもそも、「評価しよう」とは思っていません。人の価値を測ることはできないので。 ただ、「サイボウズに合っているかどうか」は判断できているかな、と。
綱嶋
面接には幅広い部署のメンバーに参加してもらい、それぞれの視点から「この人はサイボウズでいきいきと楽しく働けそうかどうか」を判断してもらっています。
中には「サイボウズ以外で働いたほうがよさそうだな」という方もいますが、それはその方の能力やスキルが劣っているということではなくて。
サイボウズにその人のやりたいことを提供できる環境がなかったり、サイボウズ以外のほうが楽しく働けそうなイメージがあったりする場合がほとんどです。
武部
つまり、サイボウズの採用活動は「応募者を評価する」のではなく、いっしょに働けるかどうかの「マッチング」なんですよね。
採用スピードが速いのは、チームで業務に取り組む仕組みがあるから
武部
あとサイボウズの面接といえば、内定者の方から「サイボウズだけ、合否の結果がめちゃくちゃ速く届いて驚きました!」と言われますよね。
綱嶋
採用スピードにこだわっているわけではないのですが、面接官がキントーンににコメントを入力し、合否のステータスを変えるだけなので、スピーディーな採用判断が実現できていますね。
キントーンでは応募者ごとのデータに対してコメント欄があるので、「合格のステータスに変更しました」「候補者へのご連絡をお願いします」など、オペレーショナルなやり取りが可能(※キャプチャはサンプルです)
金井
なるほど。人事以外の社員の方もキントーンにすぐアクセスできて、面接官になったらすぐコメントしたり合否のステータスを変えられるのは、採用での情報共有が効率よく進められますね。
ちなみに採用面接管理の場合、現職の年収など機密情報もあると思うのですが、人事以外の社員に見せてはいけない情報の管理はどうしてるのでしょうか?
武部
キントーンのアプリにアクセス権を設定できるので、閲覧範囲を人事のみに制限したり、面接の評価を書き込むのは面接官のみに設定したり、人事側で設定を行っています。
応募者データは機密情報が多いので、配慮することも多いのですが、キントーンで柔軟に設定できるので助かっています。
キントーンではチェックをつけるだけでアクセス権を設定できるため、人事担当者でも柔軟に設定できる
綱嶋
他社だと採用管理でGoogleスプレッドシートやExcelのマクロ機能などを使っている企業もあるのですが、そうするとデータの管理者が異動したとき、ほかのメンバーがデータを操作できなくなることがあるという話も耳にしたことがあります。
キントーンはその点、採用業務が属人化が発生しないのがいいところですね。
配属は本人の希望ベース。ミスマッチがあってもいい
金井
サイボウズでは理念を実現させる覚悟をもった人を採用しているから、働き方が自由でも社内がカオスになることはない。
とは言うものの、いざ自由な働き方ができる環境に身を置くと、気がゆるんで「好き放題やっちゃおう!」とはならないんでしょうか……?
綱嶋
そのケースはあまり聞かないかもしれませんね。
新卒の場合、配属は本人の希望を尊重しているので、カオスになるどころか、むしろやりたい仕事ができてパフォーマンスが上がる人が多いのかなと
金井
そうなんですね!
綱嶋
新卒のメンバーには研修期間中、いろいろな部署の講義や交流会に参加してもらい、その上で「配属希望アプリ」に第3希望までの部署を宣言してもらいます
新入社員は、希望の部署やチームをキントーンアプリで宣言できる。なお、配属希望の宣言は全社員に見えるようになっている。(※キャプチャはサンプルです)
綱嶋
人事担当者は、それを踏まえて全体のバランスを見ながら、配属先を決めるんです。例年おおむね希望どおりに配属されていますよ。
金井
すごいですね……! そうなると、配属後のミスマッチも少なくなりそうですし、モチベーションも下がらなそうです。
武部
ただ、ミスマッチがあってもいいとは思っていて。
新卒の方は社会人経験がない状態なので、実際に働いてみて、イメージとのギャップが起こる可能性はあります。
金井
たしかに。
武部
そうしてミスマッチになったとしても、「じゃあ、次の配属先はどうしようか?」と相談しながら修正していけばよくて。
サイボウズは複業や異動、部署をまたがる兼務など、本人の希望でいろいろな仕事を経験する仕組みがあるので、違うとなった時に修正しやすいのが大事かなと。
ミスマッチの状態で我慢しながら働くのはよくないと思うので、むしろ「この部署は合いません」と正直に言ってもらったほうがいいなと思います。
綱嶋
サイボウズでは、本人が「やりたくない」と言っている部署には絶対に配属しません。それは新卒だけではなく、全体的な異動や配属にも言えますね。
「理念に共感する人が集まる会社」を維持するために、採用のコアを守り続ける
金井
本人の希望を尊重しながら、自由な働き方を推進するサイボウズの働き方って、やっぱりいいなと思いました。
武部
そう言ってもらえることが多いんですけど、いまの状態がゴールや正解ではありません。状況によって、これからも働き方はどんどん変わっていくでしょう。
だから、サイボウズの人事担当者には「柔軟性」が必要だと思います。新しい働き方に合わせて現状を改善していったり、いまの働き方の「当たり前」を疑ったりすることが求められていると感じますね。
綱嶋
その上で「目的を見失わない」ことも大事だと思っていて。サイボウズのメンバーは理念の達成に向けて「自分らしさ」を発揮し、いろいろなリクエストを出してくれます。
それ自体はすごくいいことなのですが、人事がすべてに応えようとすれば、逆に非効率な運営になってしまう可能性がある。
そうならないように、僕たちはサイボウズが向かっている方向を忘れず、みんなに「こっちの方向に行きましょう」と示すことが求められているのかなと。
武部
たしかに。今後、サイボウズの規模が大きくなればなるほど、入社時点でのミスマッチが致命傷になっていくと思います。どんな方に入社していただけるかが重要です。
応募者や面接官のメンバーが増えたとしても、「理念に共感する人を採用する」というコアは守らなきゃいけない。 これからも、そのチャレンジを続ければと思います。
人事部の業務が便利になるキントーンの詳細はこちら
企画:金井友里奈・熱田優香 執筆:流石香織 撮影:栃久保誠 編集:野阪拓海(ノオト)