サイボウズのつくりかた
サイボウズで働く最大の価値は「自由な働き方」ではない。若手の僕が気づいた「理不尽がなく、普通に働ける」ことの大切さ
「テレワークとか副業OKとか……働き方が自由な会社でうらやましい。それでサイボウズに入社したの?」
サイボウズに新卒で入って4年目になりますが、これまで社外の方に何度も言われてきた言葉です。調べたわけではありませんが、わりと“サイボウズ社員あるある”かもしれません。
まあ実際、そういうポイントが入社を決めた理由の1つではありました。「副業を含めていろいろ自由だけど、それでも、ここで働く価値があると思って、この会社にがっつりコミットしていたいのだ」と、自分でたしかに選んだ上で働いていたかったのです。
とはいえ、いまはいわゆる「働き方が自由であること」をサイボウズで働く1番の理由やメリットとは感じていないので、最近はそういう聞かれ方をされるたび、うーん、なんかこの感じ……どうにか上手く伝わらないかなぁと思っています。
「そんなイジメのようなことを大人がやってるの……?」中途入社メンバーの前職エピソードに衝撃
サイボウズのグループウェア上には、中途入社のメンバー同士で、あるいはそれ以外のメンバーも交えて、情報交換や悩み相談を気軽にできるスペースがあります。
ぼくは新卒でサイボウズに入社した身なので、サイボウズのようなオープンな企業文化がない他社のことを知りません。そのため、中途で入社してきたメンバーの話をこういう場所で聞いて、“世の中の会社あるある”を学ぶことが多いです。
たとえば、先日はこんな前職エピソードを聞かせてくれたメンバーがいました。
前職では、営業メンバーそれぞれの個人プレーが中心で、資料などはすべて個人PCに保存。引き継ぎも甘く、ゼロからいろんな資料を作り込むことがほとんど。
すると、「自分が苦労した資料を簡単に真似されたくない」という空気になり、情報共有がますます捗らない非効率な悪循環でした。
そのせいで、担当者は自身が関わった内容しか分からず、顧客のほうが詳しい部分がある事案がよくありました。
いやいや、なんでよ。同じ会社のメンバーですよね。チームですよね? なぜ足の引っ張り合いを……?
こんなエピソードもありました。こちらのほうが個人的にはさらに衝撃的でした。
前職では、わたし → マネジャー → 本部長の流れでメールで報告をしていたのですが、あいだのマネジャーによってわたしの報告は揉み消され、本部長にまったく報告が上がっていないことがありました。
ある日、本部長と廊下ですれ違ったときに、「君の成果が全然見えてない。さすがにもう入社3年目だし、成果がないと評価もしづらいし、この先、昇給・昇格するならきちんと成果を出して報告してくれないと」と言われて発覚したのですが、ショックでした。
これは……ほとんどイジメではないですか? 情報を隠して誰かを困らせるなんて、大人がやるようなことなのでしょうか?
もう1つ、とある大企業に勤めていた方からはこんなお話を聞きました。
社内で共有されていない上層部の決定を新聞やテレビで知る、そして現場でクレームを受けることがあり、やるせない気持ちになったことがありました。意思決定のプロセスが分からず、ひたすら謝るしかなかったです。
かなしい。同じチーム、同じ会社のメンバーの決定でありながら、その詳細をよく分からないまま頭を下げるしかないなんて。
情報の隠し合いによる業務の非効率化、個人の感情による情報遮断、情報が届かず理解も納得もできないまま怒られる理不尽さ……そんなことが世の中ではまだまだあるのかと、こうした話を聞くたびに驚きや怒りに近い感情すら覚えます。
情報が開かれた環境では、悪意も非効率も生まれにくい
こうして驚くのは、サイボウズでは幸運にも、そういうシーンを見かけることは少ないからです。
(全社員を代表しては言えないので“少ない”と控えめに書きましたが……ぼく個人の経験ではいまのところ1度もありません)
サイボウズでは、自分の仕事に関する情報はもちろん、他部署の仕事の内容やノウハウ、それに対する思いなど、非常にたくさんの情報がいつも大量に流れてきます。
マーケティング部のメンバーが企画をどうするか悩んでいたり、営業部のメンバーがその日の案件の内容や感想を語り合っていたり、開発部のメンバーが新機能の実装に関する経緯や思いをつぶやいていたり……。
主に経営層が参加している経営会議の内容も、インサイダー情報やプライバシー情報を除くと、開催からおおよそ1日以内、早い場合だと1時間未満で議事録で参照できるようになります。また、それを見て誰でも経営陣に意見することもできます。
こうなっていると、情報を恣意的に隠したり、全社としての決定の詳細を知らぬまま理不尽に怒られたりということも、なかなか起こり得ません。
「“普通に”仕事ができる」という意味の働きやすさ
こうした「世の中のあるある」と「サイボウズのないない」について話していたとき、同僚がふいに口にした言葉が印象的でした。
働きやすさって、「テレワークOK」「副業OK」とかではなくて、 「"普通に"仕事ができる」ことのありがたさだよなって、めっちゃ思いました。
それだ……!
もちろん、「テレワークOK」「副業OK」といった意味での働きやすさもあるとは思います。しかし、もっと身近な意味での「働きやすさ」が本当はあるはずなんです。
それはつまり、 メンバー間で持っている情報の違いで苦労せずに働けること。それだけで、仕事の本質には関係ないあれこれに悩まされず、随分と純粋に仕事ができるようになるはず。
たったそれだけと言えばそうですが、そのありがたみさえも、いまはまだハードルが無駄に高すぎるように思います。
残念ながら、こういう「“普通に”仕事ができる」という意味の働きやすさは、キャッチーじゃない。それに「会社で働くということは、こういうこと」とあきらめられがちで、注目されにくいのでしょう。
隣のチームのやりとりは見えなくて当然、場合によっては情報の隠し合いになる、上司の言うことは絶対、進言したって握りつぶされる、だから根回しに必死にならないといけない、などなどなど……。
若いころに、こうした無くてもいいはずの根回しやいざこざに振り回されることは、本当はとてももったいない。早いうちに本質的な学びに時間を割けるほうが、この先何十年とビジネスパーソンをやっていくにあたっては得が大きいはず。
それに何より、組織内のどうでもいい情報の隠し合いで、死ぬまでに社会に届けられる価値がすり減っているという現実……馬鹿らしいと思いませんか?
ぼくは何か、大層なことを求めすぎでしょうか?
いまの段階では、情報がオープンなサイボウズで若手として働く最大の価値は、そうしたどうでもいいことに足を引っ張られず“普通に”働けることにあるなと、最近改めて思うのです。
本当は、本当のことを言えば……そんな“普通”がサイボウズだけでなく、もっと多くの会社で実現されてほしいと心から思うのですが。
執筆・吉原寿樹(サイボウズ)/イラスト・太田サヤカ
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執筆
吉原 寿樹
1995年、大阪生まれ。2017年にサイボウズへ新卒入社。働き方やツールに関するコンテンツ制作を通して、サイボウズが製品で提供できる価値をより広く伝えるプロモーションに取り組んでいます。趣味は音楽・ゲーム・読書。
撮影・イラスト
太田サヤカ
「人に寄り添う小さな相棒」をモットーに、宮城県でフリーランスのグラフィックデザイナー/イラストレーターとして活動中。仙台デザイン&テクノロジー専門学校非常勤講師。