「私の年収、低すぎ?」で終わらせない──給与交渉を隠さず公開、14%給与が上がったエンジニアの話
本記事の内容は、取材当時のものです。現在の給与評価に関する考え方は、こちらをご覧ください
今の給料は、本当に妥当な金額なのだろうか?

(※)スクラムマスター:スクラム(チームで仕事を進めるための枠組み)の理解と実践を促進して、プロジェクトを円滑に進めることに責任を持つ人。
天野さんは2017年の夏頃、自分の年収が市場価値に対して高いのか低いのか分からずモヤモヤしていました。 そこで転職ドラフトを使い自分の市場価値を算出しようとしたところ……
給与交渉に至った経緯



天野祐介(あまの ゆうすけ)。グローバル開発本部kintone開発チームスクラムマスター。プログラマとしてサイボウズに2009年新卒入社後、サイボウズにスクラムを持ち込み定着させた立役者。フロントエンドエンジニアとしてJavaScriptツールセットのモダン化やテストフレームワークの整備、React導入などに取り組む。2015年からはチームリーダーとなり、チームビルディングやコンセプトづくりに注力。現在は生産性のさらなる向上を目指し、スクラムマスターとして変化を推進している。


給与に対して納得感を持って働くためには、まずは自分の市場価値を知るところから始めなくてはいけないと考えたんです。


給与って、納得感がなかったとしてもなぜか我慢する人が多いじゃないですか。


仁田坂淳史(にたさか あつし)。技術評論社『WEB+DBPRESS』の編集などを経て起業。株式会社ZINEの代表取締役編集長としてメディア運営やエンジニアインタビューを手がける。人工知能など計3社のベンチャー企業に携わっており経営者のためコストには敏感。自身もサラリーマン時代に給与交渉が全くできなかった経験を持つため、すべてのステークホルダーが幸せになれる道を模索している

自分が給与交渉についての知見をためて社内に共有すれば、もっと全社的に給与に対するコミュニケーションがしやすくなるんじゃないかと考え、今回の給与交渉に至りました。
市場価値の適切な算出方法はある?




さらに、他社の値付けを見た結果が提示価格に影響している感じもあります。実際、1社目の金額と2社目以降は似たような金額でした。


納得感を得るためには、一人一人が声を上げられる場所や、環境や働き方など給与以外の要素が必要だと思うようになりました。
実際にどうやって給与交渉をしたの?



つまり、社外的価値を確かめたあとは、その幅の中で自分がサイボウズにとってどれだけの価値を発揮できているのかを説明する必要があるんです。
サイボウズの給与評価プロセス。社外的評価と社内的評価の2つを加味して給与額が決定する


「社内的価値」は、直近1年間でスクラムマスターとして社内に貢献した実績などをもとに希望額を設定しました。全社MVPを取ったことも、実績の裏付けになりましたね。

今回のような透明性あるコミュニケーションができたのは、サイボウズだからこそ?



どうすれば会社と給与について話し合い、納得感を持って働けるようになると思いますか?





みんなももっと給与交渉し、納得感を持って働けると良いと思っています。

納得感を持って働ける、とてもおもしろい環境だと思う一方、ここまで透明性あるコミュニケーションは難しいような気もしています。これは他社でも再現できると思いますか?

サイボウズの給与決定プロセスに対して感じている疑問


一方、改善を期待する点もあります。


交渉の流れ。辞令が出て納得できない場合は、取締役・事業支援本部長の中根さんに相談する


年末年始の休暇に心が休まらなかったですし、家族から収入面の質問をされた時も困ってしまいました(笑)。




給与を20%も下げられると、複業の日に少しでもキャッチアップしようとした努力に対して、会社は一切お金を払いませんというメッセージに聞こえてしまったんです。


そして上司に相談し最終的に15%減になりました。減給はモチベーションに大きく関わるので、単純に「コミット時間が5分の4になったから給与も5分の4」とするのではなく、マネジメント側には繊細に算出してほしいです。
「お金」と「やりがい」は車輪のように、バランスを取っていないと前に進めない






kintoneが世界一になるために強いチームを作り、より良いプロセスを磨く必要があると考えています。今スクラムに注力しているのも、今回の給与交渉も、すべてはサイボウズのチームワークがよくなってkintoneが世界一になるための壮大な寄り道です。
全社レベルで「透明性のあるコミュニケーション」が実現して、サイボウズがよりよいチームになればと考えています。
執筆・仁田坂 淳史(ZINE)/撮影・松永佳子
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執筆
仁田坂 淳史
現在複数社のコンサルタント・編集長を兼務するメディアの立上げ屋。紙媒体・Web媒体にとどまらないこれからのメディアづくりを目指し、2015年に出版ベンチャー株式会社ZINEを設立。担当したメディアはmixi・Find job! Startup、ビズリーチ・日刊キャリアトレックなど。
編集
あかしゆか
1992年生まれ、京都出身、東京在住。 大学時代に本屋で働いた経験から、文章に関わる仕事がしたいと編集者を目指すように。2015年サイボウズへ新卒で入社。製品プロモーション、サイボウズ式編集部での経験を経て、2020年フリーランスへ。現在は、ウェブや紙など媒体を問わず、編集者・ライターとして活動をしている。
