カイシャ・組織
「サイボウズの株価が上がらないのは、市場に嫌われているからですよ」と言う株主に、解決策も聞いてみた
「サイボウズはマーケットから嫌われているから株価が上がらない」
「60代以上の人に認知されていない」
2月5日に開催した「サイボウズ株主Meetup Vol.1」で、参加者の株主のみなさんから出てきた一言です。
「株主vs経営陣」の構図を抜けて、株主と経営陣で会社のビジョンを考えるためのMeetup。そもそも株主のみなさんはどんなことを考えているか。株主としてサイボウズにできることは? みんなで語り合いました。
「株主vs経営陣」の構図をイメージしがちじゃないですか。それがイヤ
青野
株主のみなさん、本日はよろしくお願いします。
僕がサイボウズの社長に就任したのは、14年前の2005年。なんとか生き残りながら、今日に至りました。
「株主のみなさま」と一口に言っても、サイボウズの株を昨日買って今日売る人もいれば、株を長期に渡って持っている人もいらっしゃいますよね。
株主のみなさま一人ひとりが、いろいろな意見をお持ちだと思います。今日はぜひその声を聞かせていただき、ディスカッションしながら、僕たちとチームをつくり、会社を盛り上げていきましょう。
僕がサイボウズの社長に就任したのは、14年前の2005年。なんとか生き残りながら、今日に至りました。
「株主のみなさま」と一口に言っても、サイボウズの株を昨日買って今日売る人もいれば、株を長期に渡って持っている人もいらっしゃいますよね。
株主のみなさま一人ひとりが、いろいろな意見をお持ちだと思います。今日はぜひその声を聞かせていただき、ディスカッションしながら、僕たちとチームをつくり、会社を盛り上げていきましょう。
山田
こんにちは、サイボウズ副社長の山田です。
僕が入社したのは2000年。管理部門や人事部門を統括したあと、2014年からはアメリカで事業本部を新設するために、サンフランシスコに移住しています。
実は僕、株主総会が大嫌いなんです。
僕が入社したのは2000年。管理部門や人事部門を統括したあと、2014年からはアメリカで事業本部を新設するために、サンフランシスコに移住しています。
実は僕、株主総会が大嫌いなんです。
山田
株主総会といえば、「株主vs経営陣」の構図をイメージしがちじゃないですか。それがイヤなんですよ。
サイボウズでは、「株主のみなさんとチームになって、サイボウズのビジョンを考えるにはどうしたらいいのか?」を、2年前から模索しています。
今年は、株主のみなさんとMeetupを開催することにしました。ちなみに、重大発表はありませんからね(笑)。お互いに交流して、楽しい1日にしましょう。
サイボウズでは、「株主のみなさんとチームになって、サイボウズのビジョンを考えるにはどうしたらいいのか?」を、2年前から模索しています。
今年は、株主のみなさんとMeetupを開催することにしました。ちなみに、重大発表はありませんからね(笑)。お互いに交流して、楽しい1日にしましょう。
「サイボウズはマーケットから嫌われているから、株価が上がらないんですよ」
山田
今回は「株主のから騒ぎ」として、テーマについて株主同士で話し合ってもらいます。今日はみなさまが主役、僕がMCです。
それでは、参加者のうちの5名の方に前に来ていただいて始めましょう。
それでは、参加者のうちの5名の方に前に来ていただいて始めましょう。
山田
最初のテーマは「株価が上がらないのですが、どうしたらいいですか?」。
「株主に聞かれても知らんがな」って話かもしれませんが、どう思いますか?
「株主に聞かれても知らんがな」って話かもしれませんが、どう思いますか?
株主さん
ずばり、サイボウズはマーケットから嫌われているからですね。だから、マーケットや株主と仲良くしてもらえれば、株価は簡単に上がると思いますよ。
山田
ほう。「マーケットはサイボウズが嫌い」。青野はマーケットが嫌いなんですよね。あ、僕は好きなんですよ(笑)。
山田
こういう提案がありましたけど、青野さん、どうでしょう?
青野
えええ。
青野
なぜ、マーケットから嫌われちゃうんですかね?
株主さん
マーケットは基本的に利益が好きだからです。青野社長は「利益は絞りカス」だとおっしゃいますよね。
青野
言っていますね。
株主さん
上場しているからには、会社は利益を株主に還元する使命があります。
そこを否定されると、「じゃあ、どうしてマーケットにいるの?」となるんです。
そこを否定されると、「じゃあ、どうしてマーケットにいるの?」となるんです。
青野
ひとつエピソードがあります。僕が社長に就いたとき、投資家から「IR活動をしなさい」と言われて、投資家を回って広報活動をしたんです。
そのあと、M&A(企業の合併買収)に手を出したら、時価総額で1000億円以上になりました。株価が今よりも何倍も高くなって、もう意味がわからない数字なわけです。
そのあと、M&A(企業の合併買収)に手を出したら、時価総額で1000億円以上になりました。株価が今よりも何倍も高くなって、もう意味がわからない数字なわけです。
株主さん
そうでしたね。
青野
今度は、投資家が「だいぶ儲けさせてもらったよ」と言って、価値が上がった株を売ってしまった。
そのとき、「僕は何をしているんだろう、時間がもったいないな」と思ったんです。
そのとき、「僕は何をしているんだろう、時間がもったいないな」と思ったんです。
株主さん
市場はそうやって循環していくメカニズムですから。投資家は意図的に利益を追求するものなので。
株主さん
その結果、利益が出ている会社に、しっかりとお金が集まる。さらに、その会社が生み出したサービスで社会が豊かになる。
それを否定してしまうと、そもそも「資本主義」と「株式会社」自体を否定することになりますよね。
それを否定してしまうと、そもそも「資本主義」と「株式会社」自体を否定することになりますよね。
山田
うんうん。そういうことですよ、社長。ちゃんとメモしておいてください。
青野
うーん(笑)。
株主さん
ただ、誤解がないよう言わせてもらうと、僕は本っ当にサイボウズが大好きなんです。
「Cybozu Days」にも子どもといっしょに行って、青野社長と写真を撮りました。
「Cybozu Days」にも子どもといっしょに行って、青野社長と写真を撮りました。
青野
あ、本当だ。今日のTシャツもサイボウズじゃないですか!
株主さん
そうなんです。本当にサイボウズが大好きなので、これからも応援しています。
株主総会がおもしろくて株を買った。60代以上にもっと知ってもらいたい
山田
さっそく熱いですね。続いて、前に座っているあなた。なんでサイボウズの株を買おうと思ったんですか?
株主さん
山田
株主総会で、株主を増やす会社はめずらしいですよね。「サイボウズの株価を上げたい」についてはどうすればいいんでしょう?
株主さん
60代以上の人にも認知が広がればいいと思いますよ。わたしは、囲碁が趣味で、70代以上が集まる「囲碁クラブ」に通っているんです。
そこでサイボウズの名前を出しても、「知っている」と言われたことがほとんどなくて。50代くらいの方だと「あ、キントーンの会社だ」と言う方が多いんですけどね。
そこでサイボウズの名前を出しても、「知っている」と言われたことがほとんどなくて。50代くらいの方だと「あ、キントーンの会社だ」と言う方が多いんですけどね。
山田
これは囲碁クラブにも広報しないといけませんね。
「株主vs経営陣」と対峙して戦う理由はない。お金だけで完結せずに、もう一歩踏み込んでほしい
山田
次のテーマです。「株主に求めるもの」。
サイボウズのチームワークあふれる社会をつくるために、業務が拡大していくために、株主としてできることは何でしょう?
サイボウズのチームワークあふれる社会をつくるために、業務が拡大していくために、株主としてできることは何でしょう?
株主さん
株主は基本的に、お金を出している時点で完結はしています。できることがあるとしたら、IR活動をサポートすることでしょうか。
山田
いいですね。ほかにどうですか? これ、普段は考えたこともないですよね。
株主さん
いつもは株主として、業績が上がるように経営陣に要求することを考えていますからね。
山田
そうですよね。
だけど僕は、「株主vs経営陣」と対峙して戦う理由はないと思うんですよ。むしろ、株主のみなさんの力をお借りしたいんです。
だけど僕は、「株主vs経営陣」と対峙して戦う理由はないと思うんですよ。むしろ、株主のみなさんの力をお借りしたいんです。
山田
「お金を出しているのに、これ以上何を求めるの?」と言いたくなるかもしれません。
だけど、お金だけで完結せずに、さらにもう一歩踏み込んでほしい。そして僕らとチームになって、いい社会を作るための何かができれば、おもしろいと思うんです。
だけど、お金だけで完結せずに、さらにもう一歩踏み込んでほしい。そして僕らとチームになって、いい社会を作るための何かができれば、おもしろいと思うんです。
株主さん
株主が、地方にいる社員の家族のケアをするのはどうでしょう?
働き盛りのサイボウズの社員さんのなかには、親御さんの介護や病院へのお見舞いなどが必要な人がいますよね。
近くに住んでいる株主が、その親御さんの話し相手になれると思うんです。
働き盛りのサイボウズの社員さんのなかには、親御さんの介護や病院へのお見舞いなどが必要な人がいますよね。
近くに住んでいる株主が、その親御さんの話し相手になれると思うんです。
ほかの株主さん
いいですね! まさに、株主ネットワーク。
株主さん
そうです。その親御さんの子どもはサイボウズの社員だから、初対面でもサイボウズの話ができますよね。
そうやって楽しく過ごして、「じゃあ、また来ますね」とすれば、遠くに住む社員さんは2カ月に1回くらいの頻度で帰省すればいい。そのかわり、週に1回くらいは株主が話し相手になれます。
そうやって楽しく過ごして、「じゃあ、また来ますね」とすれば、遠くに住む社員さんは2カ月に1回くらいの頻度で帰省すればいい。そのかわり、週に1回くらいは株主が話し相手になれます。
山田
すごくいいじゃないですか! 60代以上の方にも認知が広がるかもしれない。
株主さん
株主としても、サイボウズの話が思いっきりできれば、楽しいですし。
山田
素晴らしい。素敵なアイデア、ありがとうございました。
山田
ではメンバーを入れ替えて、から騒ぎを続けますよ。
次は「サイボウズの素晴らしさとは?」。僕らが言われるとうれしいので、ちょこっと聞いてみたいです(笑)。
次は「サイボウズの素晴らしさとは?」。僕らが言われるとうれしいので、ちょこっと聞いてみたいです(笑)。
株主さん
10年前くらいにサイボウズの株主になったんですけど、実はそのあと、ほったらかしにしていまして……。
山田
いまの株価がいくらかなんて、あまり見ていなかった?
株主さん
見ていません。
山田
株主の鏡ですよ。良い株主さんですね、見ないでいいです!
株主さん
ははは、ありがとうございます。昨年の株主総会にたまたま行ったらおもしろくて。「すごい会社だな」と注目しはじめました。
「企業理念を石碑に刻むな」。環境やチームの考え方が変われば、ビジョンを変えてもいい
山田
次のテーマは「将来どんな会社になってほしいか」。
株主さん
近視眼的になって、「目の前のことだけ」しか考えられない会社には陥ってほしくないです。
山田
たとえばどんなことでしょう。
株主さん
「人」を忘れて、変化できない会社にならないでほしいんです。そうすれば、いきなり大きくはならなくても、生き残っていけると思うので。
山田
まさに「企業理念を石碑に刻むな」ですね。これは、環境やチームの考え方が変わればビジョンを変えてもいい、という意味なんですけど。
山田
石碑に「青野が考えた企業理念」を刻んだとしますよね。そしたら、僕らの代を継いだ人が、「青野さんだったら、どうするか?」を考えるようになる。
企業理念を作ったときと環境は変わっているのに、ですよ。創業者の思いだけが残れば、結局は変わらない会社になってしまいます。
企業理念を作ったときと環境は変わっているのに、ですよ。創業者の思いだけが残れば、結局は変わらない会社になってしまいます。
株主さん
そうですね。
山田
だから、企業理念さえ変えてもいいと。「企業理念を石碑に刻むな」を石碑に刻む。うーん、ややこしい(笑)。
株主さん
Googleを抜いて、世界一のIT企業になってほしいですね。
山田
Googleを抜いてほしいという意見が出ました。どうですか、社長!
青野
わかりました、必ず。
Googleは検索エンジンが中心なんですが、僕たちは検索エンジンで勝とうとは思っていません。
チームがあって、その人たちが効率良く、楽しくチームワークを発揮するツールでは、絶対にGoogleに勝ちたい。そのために、海外にも拠点をつくっているので。
Googleは検索エンジンが中心なんですが、僕たちは検索エンジンで勝とうとは思っていません。
チームがあって、その人たちが効率良く、楽しくチームワークを発揮するツールでは、絶対にGoogleに勝ちたい。そのために、海外にも拠点をつくっているので。
山田
ほかどうでしょう?
株主さん
日本のIT企業にはオリジナリティーが少ないと思っていましてね。ちっちゃなモノでもいいから「これはサイボウズが発祥だ」といえるものがあるといいなと。
株主さん
ITに強くない人の意見にも耳を傾けてほしいですね。
わたしはあまりITには強くないんですが、「こんなものがほしいけど、世の中にはない」というサービスがたくさんあるんです。
わたしはあまりITには強くないんですが、「こんなものがほしいけど、世の中にはない」というサービスがたくさんあるんです。
山田
ITに詳しくない方でも使えるサービスがほしい。
株主さん
そうですね。それをどんどん実現してもらえれば、もっとファンが増えて、会社は発展すると思いました。ぜひお願いします。
Cybozu Daysに株主だけしか入れない「株主専用ブース」を設けてみませんか?
株主チームA
キントーンが「イケてるぞ」「1万社突破!」とは聞いているんですが、実際にプロダクトに触れたことがないんですよ。
実際に体験して「こんな操作性なんだ」って知りたいです。
実際に体験して「こんな操作性なんだ」って知りたいです。
株主チームB
経営陣だけじゃなく、社員さんとも交流したいですね。
今回のような意見交換会を開催してもらったり、Cybozu Daysの株主版や、サイボウズ社内に「株主と交流できるスペース」を設けてもらったりしてもいいかもしれません。
今回のような意見交換会を開催してもらったり、Cybozu Daysの株主版や、サイボウズ社内に「株主と交流できるスペース」を設けてもらったりしてもいいかもしれません。
株主チームC
うん、サイボウズ製品を使ってみたい。いい会社だとは思っているんですけど、実際に製品を触ったことがないので。良さを知ったら、株主から発信できるのかなと思いました。
株主チームD
個人的な話をすると、わたしは今年72才で、年金生活者。会社がこんなに株主をこき使っちゃダメですよ。
株主チームD
会社が成長するためのアイデアを出すのは、残念ながら株主の仕事じゃない。あんたたちに頑張ってもらわなきゃ。
できることといえば、みなさんが話しているように、株主の身の回りで、サイボウズの製品を伝えることでしょうか。
できることといえば、みなさんが話しているように、株主の身の回りで、サイボウズの製品を伝えることでしょうか。
株主チームD
あと1つ、いまの経営の殻を破るなら、社外取締役やアドバイザーを有効に利用するのはどうなんだろう。いまの経営陣には出てこないアイデアを出せるのではないかと。
司会
実際に行動に移してみようというアイデアがあるチームはいますか?
株主チームA
僕たちのチームからは、Cybozu Daysに株主だけしか入れない「株主専用ブース」を設けるアイデアが出ました。
山田
どんなことをするんですか?
株主チームA
今日の様子を写真で展示して、今回のようなテーマを株主同士で語れるようにするんですよ。しかも、飲み物とお茶菓子が出てくる。
株主チームA
ブースをガラス張りにすれば、株主ではない人は「いいな、楽しそう」と思って、株を買いたくなるかもしれません。
山田
いいですね。すぐにでも実現できそうです。
株主チームA
「いっしょにやるよ」と言ってくれる社員さんがいれば、実現したいと思うのですが。
山田
誰かいる?
田中
わたし、やります!
株主チームA
よろしくお願いします!
世界の競合に負ける気はしない。僕たちのチームには、一緒にチャレンジする1万人の株主がいるから
青野
今日、「サイボウズの株主はやっぱりすごいな」と感動しまして。
こんなにサイボウズを知ってくれて、こんなに意見を言ってくれて。「会社を経営していて、よかった」と改めて思いました。
「Googleを抜いて、世界一のIT企業に」というお話がありました。正直、Googleはとんでもなく強い会社なんです。
世界の時価総額ランキングには、Googleをはじめ、マイクロソフトやアリババなど、僕らと同じグループウェアを提供している会社が入っています。
でも正直、負ける気がまったくしていなくて、ですね。
こんなにサイボウズを知ってくれて、こんなに意見を言ってくれて。「会社を経営していて、よかった」と改めて思いました。
「Googleを抜いて、世界一のIT企業に」というお話がありました。正直、Googleはとんでもなく強い会社なんです。
世界の時価総額ランキングには、Googleをはじめ、マイクロソフトやアリババなど、僕らと同じグループウェアを提供している会社が入っています。
でも正直、負ける気がまったくしていなくて、ですね。
青野
その理由は、僕たちのチームには、いっしょにチャレンジしてくださる株主のみなさまがいるからです。
サイボウズはいま、社員数800人くらいの会社です。ただ、株主は1万人近くいます。つまり、その人たちとチームを組めば、メンバーは10倍に増える。
そのチームでチャレンジすれば、Googleにも追いつけるはずです。
株主のみなさまは、一人ひとり考え方も違えば、普段の取り組みもノウハウも人脈も違います。これをぜひシェアして、チームワークしていく必要があるんだなと強く思いました。
Googleを上回るようなソフトウェア企業にしていきますので、引き続き力を貸していただければと思います。
それでは、乾杯!
サイボウズはいま、社員数800人くらいの会社です。ただ、株主は1万人近くいます。つまり、その人たちとチームを組めば、メンバーは10倍に増える。
そのチームでチャレンジすれば、Googleにも追いつけるはずです。
株主のみなさまは、一人ひとり考え方も違えば、普段の取り組みもノウハウも人脈も違います。これをぜひシェアして、チームワークしていく必要があるんだなと強く思いました。
Googleを上回るようなソフトウェア企業にしていきますので、引き続き力を貸していただければと思います。
それでは、乾杯!
執筆:流石香織/編集:松尾奈々絵(ノオト)、藤村能光/撮影:小野奈那子/企画:森 信一郎
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執筆
ライター
流石 香織
1987年生まれ、東京都在住。2014年からフリーライターとして活動。ビジネスやコミュニケーション、美容などのあらゆるテーマで、Web記事や書籍の執筆に携わる。