サイボウズのつくりかた
「兼務の選択肢がなければ、サイボウズを辞めていたかも」──他部署での新たなチャレンジを支える仕組みとは?

違う分野にも経験してみたら、もっと自分の特性に合う仕事が見つかるかもしれない。でも、未経験の業務にいきなり携わるのは不安だ……こうした悩みは多くの社会人が抱えるものでしょう。
社会人3年目の今井豪人もその1人。人事部長の青野誠に相談したところ、サイボウズでひそかに流行っている「兼務」という選択肢が見えてきました。
サイボウズの兼務とは、一体どのようなものなのか、どんなメリット・デメリットがあるのか。開発本部と人事本部を兼務する岡崎一洋を交え、議論しました。
畑違いの分野への異動が不安なら、スモールステップで体験する「兼務」を

特にサイボウズは、自分で異動先を選べるので、キャリアをより広げるために、ほかの分野への挑戦をしたいです。実は……人事に興味があって。

今井 豪人(いまい・かつと)。新卒で酒類・食品メーカーに入社。2020年7月にサイボウズに転職し、コーポレートブランディング部に所属。日々の仕事にやりがいを感じている一方、社会人3年目となり、自分のキャリアについて悩み始めている


でも正直、ミスマッチが怖いんです。人事領域の仕事に興味があるけど、現在のマーケティングとはまったくの畑違いなので、そもそも自分に適性があるのかも心配で……。
いざ異動しても思うように成果を上げられず、周囲に迷惑をかけるかもしれない、という不安があります。

なるべくミスマッチのリスクを慎重に見極めながら、自身のキャリアを形成していきたいですよね。
それなら、スモールステップで人事の仕事を経験するために、「兼務」を活用していくのはどうでしょう?

青野 誠(あおの・まこと)。2006年に新卒でサイボウズに入社。 営業やマーケティング、 新規事業の立ち上げなどを経験後に人事部へ。 現在は採用、育成・研修、制度づくりなどを担当


いきなり完全に異動するよりは、リスクは減らせるかもしれません。サイボウズではこれまで開発と法務、クラウド運用と経営企画、営業と人事など、多岐にわたる兼務実績がありますよ。

いまより忙しくなりそうですし、周囲に迷惑をかけないかも心配です。

兼務という選択肢がなければ、サイボウズを辞めていたかもしれない

岡崎 一洋(おかざき・かずひろ)。2007年にサイボウズ中途入社。開発本部に軸足を置きながら、2019年から人事本部を兼任し、エンジニアのキャリア(中途)採用にも携わっている


興味がある人事領域の兼務ということで、岡崎さんの働き方を根掘り葉掘り伺えればと思います。

わたしは兼務という選択肢がなければ、サイボウズを辞めていたかもしれませんから(笑)。



当時マネジャーだったわたしは、そこでサイボウズでの自分の役割やキャリアパスを見つめ直すキッカケになって。実は、少し転職活動もしていたくらいでした(笑)。


そして兼務を続けるうちに、サイボウズで自分が貢献できることがまだまだあるじゃないか、と気づけた。だから、いまサイボウズで楽しく働けているのは、兼務のおかげでもあるんです。


兼務を受け入れる側は迷惑? 既存のチームにない視点による相乗効果

でも、フルコミットを前提としていない別部署のメンバーがいきなり入ってくるのは、受け入れる側としては迷惑じゃないですか?

実際、人事本部のキャリア採用チームでは、岡崎さんが開発のタスク管理の手法を取り入れたことで、業務改善しましたからね。


そのため、開発チームで行っている「カンバン」というタスク管理方法を導入して、チームとして仕事ができるようにしました。
これにより採用チームのメンバーから「これまで自分のタスクが滞らないよう働き詰めだったが、いまはチームでタスクを回せるので、安心して休めるようになった」と嬉しい声をもらいましたね。

kintoneをカスタマイズすることで作成した「カンバン」。週1回、チームが抱えるタスクを書き出し、メンバーが共同で業務を進められるようにした

ただ、それって岡崎さんがマネジャー経験のあるベテランだから、できたことじゃないですか?

ただ、純粋にほかのチームからの視点が入ることによる相乗効果は大きいと感じます。現にサイボウズでは、今井さんと同年代の若手メンバーも数多く兼務して活躍していますよ。

兼務とは思えないくらい、鋭い指摘を頻繁に繰り出していてスゴいんですよね……。
できない仕事が発生するのは仕方ない。大事なのは、メンバーに可視化して共有すること


わたしの場合、開発:人事=7:3くらいで業務時間を割いています。人事本部では、主に開発系の人材採用と業務改善を行うほか、定例会議に参加しています。
打ち合わせがバッティングしないようにしたり、各チームの情報を追ったり、作業時間を確保したりと、配分を調整するのはいまだに課題ですね。

たしかに調整の難しさは共通の課題となっていますね。


兼務することで、できない仕事があるのは仕方がありません。だからこそ、できないことをわかる形でしっかり示すのが大事なんです。

岡崎の月報。その月の業務の割合やその振り返りが書かれている。月報は、所属チームのみならず全社で見えるようになっている
マネジャーからは「兼務の評価をどうするか?」という懸念も。大切なのは、本人が軸足を持って選択すること



通常、兼務社員がメインで所属するのは、業務割合が一番大きい本部です。そのため、業務割合が少ない本部のマネジャーからは、その本部内での貢献度について共有してもらいます。メイン側の本部マネジャーは、それを参考としつつ評価し、最終的な給与金額を決定しています。
そのため、メインで所属する本部とサブで所属する本部は必ず決まっています。


たとえば、開発と法務や、経営企画とクラウド運用の兼任など仕事の領域があまりに異なるケース。そういう場合は、「社外では、どんなポジションで転職して、どんな金額になる方か」と考えて、その社外価値を給与を決める1つの指標にしています。


兼務するにしても、「自分は何をやりたいのか・できるのか」を明確にして、軸足はどこにあるのか、本人の中でも周りの関係者とも、しっかり認識を合わせていくのが大事になるんじゃないでしょうか。

いまは自分がそれぞれのチームに貢献できている実感がありますし、開発も人事も楽しいのでしばらく兼務は続けていこうと思っています。


でもお話を伺ってみて、注意点はあるものの、選択肢として兼務があるのはすごくありがたいことだなと思いました。今後のキャリアの参考にしようと思います。

あと1点言うとすれば……実際に兼務してみて、貢献できることが少なくなったり、かえってやりづらくなったりしたら、スパッと兼務を辞める選択肢があるのも大事かなと思います。


あくまでも兼務は、キャリアのミスマッチを減らすための1つの手段ですから、上手く使っていただけるといいかと思います。

「異動」という大胆な選択肢でしかチャレンジできないと思っていたので、今日お話を聞けてすごく安心しました。上手く活用して、リスクを最小化しつつも、積極的に挑戦していこうと思います。
本日はお時間いただき、ありがとうございました!


企画:今井豪人(サイボウズ)/執筆:中森りほ/写真:栃久保誠/編集:野阪拓海(ノオト)
変更履歴:事実関係の表記に誤りがあったため、以下の箇所を変更いたしました。(2021/6/23 12:30)
変更前:経営企画と法務の兼任など
変更後:経営企画とクラウド運用の兼任など
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