サイボウズ
現場の葛藤も制作プロセスも、全社に「状況共有」──サイボウズのサウンドロゴを開発しました
サイボウズは、企業ロゴに音と動きをつけた「サウンドロゴ」を新たに制作。このサウンドロゴは、2022年2月7日から公開中のテレビCMで使用されています。
わずか1.5秒の間で、いかにサイボウズらしい「新しいチームワーク」を表現するか。全社に意見を募りながら、さまざまな議論や試行錯誤が行われました。
答えがないからこそ、多様な知見を持ち寄りながらつくった、本サウンドロゴ。
そこに込めた想いや制作する上での葛藤、チームワークを発揮するためのオープンな「状況共有」について、制作担当のサイボウズ式編集部に聞きました。
多様な個性を活かし合う「新しいチームワーク」を表現
園田
新しくできたサイボウズのサウンドロゴ、拝見しました! やっぱり、音と動きがつくと、雰囲気が変わりますね。
編集部
ありがとうございます!
園田
個人的には、より親しみやすい印象を受けたのですが、そもそもこのサウンドロゴは、どんな目的でつくられたのでしょうか。
編集部
ざっくりいうと、サイボウズについてよく知らない方々に向けて、サイボウズを覚えていただくためにつくったものですね。
出来上がったサウンドロゴを見たときに、チームワークに対して「新しい!」「楽しそう!」「体験してみたい!」という気持ちを感じてもらえたら、と考えました。
出来上がったサウンドロゴを見たときに、チームワークに対して「新しい!」「楽しそう!」「体験してみたい!」という気持ちを感じてもらえたら、と考えました。
園田
新しいチームワーク、ですか?
編集部
はい。「チームワーク」と聞くと、上下関係を重んじたり、同質性を押し付けたりするイメージをもつ人もいると思うんです。
一方サイボウズでは、また違ったとらえ方をしていて。それぞれのメンバーが多様でありながら、自立して1つの目的や理想に向かっていく。「チームワーク」に対しては、そんなイメージをもっています。
一方サイボウズでは、また違ったとらえ方をしていて。それぞれのメンバーが多様でありながら、自立して1つの目的や理想に向かっていく。「チームワーク」に対しては、そんなイメージをもっています。
園田
うんうん。
編集部
サイボウズでは、「100人100通りの働き方」というように、一人ひとりの中にある多様な個性に目を向けることを大切にしています。
1人ではできないことでも、誰かとともに個性を活かし合い、解決していく。そんなチームワークは心強く、前向きに感じられます。
1人ではできないことでも、誰かとともに個性を活かし合い、解決していく。そんなチームワークは心強く、前向きに感じられます。
園田
なるほど。そうした「新しいチームワーク」はどうすれば実現できるのでしょうか?
編集部
たとえば、サイボウズには「チームワークあふれる社会を創る」というパーパスと、それを達成するために必要な4つの文化があります。
編集部
サイボウズにおけるチームワークは、この4つを大事にしていて。
このすべてが揃っていると、チームワークがあふれていて、いい状態ですよね、と感じることができます。
このすべてが揃っていると、チームワークがあふれていて、いい状態ですよね、と感じることができます。
園田
すごく明確に決まっているんですね。では、この「新しいチームワーク」をどんなふうにサウンドロゴに落とし込んだのでしょうか?
編集部
前提として、「サウンドロゴを通じて自分たちは何を伝えたいのか?」を常に考えるように心がけていました。
表現に落とし込んでいく過程でも、常に「チームワークの新しさを感じてもらえるかどうか?」に立ち返り、4つの文化と照らし合わせながら音と動きの要素を決めていきました。
表現に落とし込んでいく過程でも、常に「チームワークの新しさを感じてもらえるかどうか?」に立ち返り、4つの文化と照らし合わせながら音と動きの要素を決めていきました。
■多様な個性
・ナレーション ・多様な方向の動きから収束する動き ・サークル(チーム、コミュニティ、個人) ・軌跡(速度の違い、多様な関わり方)■公明正大
・サークル(どの方向から見ても同じ形の円)■理想への共感
・多様な方向の動きから、収束する動き■自立と議論
・多様な方向の動きから、収束する動き編集部
サイボウズはエンタープライズ向けの事業も展開しています。そうしたお客様のことを想像して、ナレーション(企業名の読み上げ)にも配慮しました。
具体的には、音を聞いたときに「楽しさ」だけでなく、「安心感・信頼感」を感じてもらいたかったので、温かみが感じられる、ポジティブなトーンで収録しています。
また、多様な個性を重視する意味でも、男女両方の声がバランスよく聞こえるようにしています。
具体的には、音を聞いたときに「楽しさ」だけでなく、「安心感・信頼感」を感じてもらいたかったので、温かみが感じられる、ポジティブなトーンで収録しています。
また、多様な個性を重視する意味でも、男女両方の声がバランスよく聞こえるようにしています。
園田
ふむふむ。動き(モーション)についてはどうでしょうか?
編集部
サイボウズのロゴを全画面で使い、大きく立体的に動くようにしました。
とくにこだわったのは、「収束感」です。さまざまな軌跡を描きつつ、最後はキュッと同じところにまとまります。
とくにこだわったのは、「収束感」です。さまざまな軌跡を描きつつ、最後はキュッと同じところにまとまります。
編集部
この収束感は、チームへの関わり方はそれぞれ自由だけど、みんなが「チームワークあふれる社会を創る」という共通の理想を目指している様子を表しています。
全社に意見を募りながら直面した、表現のジレンマ
園田
今回、サイボウズならではの「オープンな情報共有」を活かして、全社に意見を募りながら、つくったそうですね。
編集部
そうですね。たった1.5秒だとしても、サイボウズの想いがしっかりとこもったものにしたい。
だからこそ、全社を巻き込みながら、ていねいにつくる過程を大切にしたいと思ったんです。
だからこそ、全社を巻き込みながら、ていねいにつくる過程を大切にしたいと思ったんです。
園田
具体的にはどのように進めたんでしょうか?
編集部
いつ誰が見ても進行状況が把握できるよう、制作全体を通して、「なぜロゴをつくっているのか」「いま何をしているのか」を逐一共有するようにしました。
もちろん、制作の過程で寄せられた全社メンバーの意見も取り入れていきました。
もちろん、制作の過程で寄せられた全社メンバーの意見も取り入れていきました。
園田
担当者間で完結するのではなく、プロジェクトについて知りたい人が、いつでも情報に辿り着けるようにしたんですね。
編集部
そうです。ロゴの制作プロセスでいうと、今回はパートナーとして、コンサルティングファームのMIMIGURIさんにもプロジェクトに参加いただきました。
まずはMIMIGURIさん企画・設計のもと、ワークショップを実施。そこで、「サイボウズらしさ」やそれを象徴するエピソードや擬音語などを全社で募集しました。
まずはMIMIGURIさん企画・設計のもと、ワークショップを実施。そこで、「サイボウズらしさ」やそれを象徴するエピソードや擬音語などを全社で募集しました。
編集部
そして、集まったエピソードや擬音語は、サイボウズの4つの文化に紐付けて整理。サウンドロゴのコンセプトを固め、音と動きに変換していきました。
その結果をMIMIGURIさんに伝え、クリエイティブ案に落とし込んでもらいました。
その結果をMIMIGURIさんに伝え、クリエイティブ案に落とし込んでもらいました。
園田
すごい!たくさん集まったんですね!
編集部
ただ、その集めた情報から「サイボウズらしさ」を表現する難しさに直面して……。
たとえば、サイボウズではよく、みんなが理想に集まっていく様子を「キャンプファイヤー」で表現しています。
たとえば、サイボウズではよく、みんなが理想に集まっていく様子を「キャンプファイヤー」で表現しています。
編集部
そのため、当初の案では炎のメタファーを入れていました。
園田
なるほど。でも、完成したサウンドロゴでは、炎のメタファーはないですよね。
編集部
はい。サイボウズをよく知らない方々には、炎のメタファーから「チームワーク」を連想することは、難しいのではないかと、案を検討するうちに気づいたんです。
なので、そこからターゲットとバリューをより鮮明にするため、あらためてコンセプトを整理しました。
なので、そこからターゲットとバリューをより鮮明にするため、あらためてコンセプトを整理しました。
園田
より具体的にコンセプトを固めたわけですね。
編集部
そうです。伝えたい相手はサイボウズのことをなんとなく知っている状態かもしれない。CMを見て、どんな会社なのか興味を持ち始めたタイミングかもしれない。日頃、チームで何か成し遂げたいと考えているかもしれない……。
そんな人たちに、サイボウズが新しいチームワークを大切にしていることが伝わってほしいし、「自分も参加したい!」と思ってもらえたらうれしいなあと。
そんな人たちに、サイボウズが新しいチームワークを大切にしていることが伝わってほしいし、「自分も参加したい!」と思ってもらえたらうれしいなあと。
園田
うんうん。
編集部
その結果、炎などの具体的なものではなく、より一般的にチームワークが連想できる、現在の渦巻いた動きの表現や、多様な音や動きで「サイボウズらしさ」を表現するいまのデザインに落ち着きました。
そこで自分たちが伝えたい想いが固まったのですが、1.5秒にそのすべてを盛り込もうとすると、当然カオスになって(笑)。
その後も、全体のバランスを調整していきましたね。
そこで自分たちが伝えたい想いが固まったのですが、1.5秒にそのすべてを盛り込もうとすると、当然カオスになって(笑)。
その後も、全体のバランスを調整していきましたね。
全社公開で取り組むからこそ、担当者のささいな悩みまで「状況共有」
園田
今回、全社でチームとして制作を進めるときに、何か気をつけたことはありますか?
編集部
「情報共有」以前の「状況共有」です。整理された情報だけでなく、まだ議論中のことや言語化できていないモヤモヤなども含めて、全社員が確認できるオンライン掲示スペースに逐一状況を公開するようにしました。
園田
そんなに細かく……!
編集部
これは社長の青野さんが以前、「1人で考えることに限界を感じたから、事業戦略であっても、つくるプロセスからメンバーといっしょに考える」と発言したことにも通ずるところで。
答えがないからこそ、チームで多様な知見を持ち寄りながら解決していくことを大切にしているんです。
答えがないからこそ、チームで多様な知見を持ち寄りながら解決していくことを大切にしているんです。
園田
でも、かかわるメンバーが多いと、「あれもこれも」といろんな要望が出てきて、大変そうです……。
編集部
正直、何かをつくる時って、できれば決裁者の意見だけを聞きたいと思うところもあります。
なぜなら、多方面の意見を聞いてしまうと、クリエイティブが収束していかないからです。
なぜなら、多方面の意見を聞いてしまうと、クリエイティブが収束していかないからです。
園田
うんうん。
編集部
ただ、サイボウズには全メンバーで共通の理想があります。たとえ立場や意見が異なっていても、「チームワークあふれる社会を創ることにつながるか?」という前提に立ち戻ることができます。
だからこそ、1つの理想に向かって建設的な議論ができたのかなと思います。
だからこそ、1つの理想に向かって建設的な議論ができたのかなと思います。
園田
なるほど。その意味では、今回のプロジェクトは意見やアイディアを出したメンバーにとっても、サイボウズのパーパスやその表現の仕方をあらためて考える機会になったのかもしれませんね。
編集部
そうですね。今回、青野さんは制作の初期段階から、僕もアイディアを出すけど、意思決定は任せるよと、編集部に権限を移譲してくれました。
それは1人のリーダーがプロジェクトを引っ張るのではなく、チーム全員で取り組むことを大切にしているからであり、チームの力を信じているからこその判断なのかな、と。
その分、僕らの責任は重大なんですけどね。
それは1人のリーダーがプロジェクトを引っ張るのではなく、チーム全員で取り組むことを大切にしているからであり、チームの力を信じているからこその判断なのかな、と。
その分、僕らの責任は重大なんですけどね。
企画:神保麻希(サイボウズ)/執筆:園田もなか 編集:野阪拓海(ノオト)
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