テレワークを、家族のために。
テレワークと子育てで発狂しそうになる夏やすみ。同僚と子連れワーケーションに行って救われた話
家族関係をより豊かにするものとして「テレワーク」をとらえる人たちを特集する「テレワークを、家族のために」。
第6回目は、子どもの夏やすみ期間の「テレワークと子育ての両立」に悩んでいたところ、同僚と子連れワーケーションに行って救われたという、小山さんのお話です。
3番目の子どもは、保育園ではなく幼稚園に
「会社が完全にテレワークになったから、3番目の子は幼稚園に入れてもいいんじゃない?」
そんな会話が夫とのあいだでされたのは、新型コロナウイルスが流行してすぐの頃だった。
我が家には、12歳、10歳、4歳の3人の息子がいる。上のふたりが生まれた頃は私も夫も出社して働いていたから、年齢の早いうちから長時間預けられる保育園に子どもたちを入園させていた。
けれど、私も夫も完全にテレワークになったので、3番目の息子が3歳になるタイミングで、彼を幼稚園に入れてもいいのではないかという話になったのだ。同じ小学校に行く同級生が保育園よりも多いので、友だちや知り合いがたくさんいる状態で小学校に入学できそうなこと、行事が充実していることなどが理由だった。
軽い気持ちで三男の幼稚園への入園を決めた私たちだったけれど、実際に入園させてみると、とある困りごとに気づくことになる。
それは、幼稚園にある「夏やすみ」の存在だった。
テレワークと子育ての両立で発狂しそう!
幼稚園には保育園と違って夏やすみがある。その期間は約3週間、誰にも預けられず、ずっと家に子どもがいる。
「子どもが1日じゅう家にいる」状態でテレワークをした去年は、想像以上に大変だった。
子どもが幼稚園に通う3〜4歳という年齢は、両親にすごくかまってほしい時期だ。だから家にいるときは、おおげさではなく3分に1回くらい「ママ〜」と呼ばれる。かわいくてとっても愛おしいんだけれど、そんなに呼ばれていては考える仕事がまったくできず、打ち合わせ中にも画面をオフにしなければいけないことがたびたびあって、仕事に集中できない日々が続いた。
実際にどうしようもなくてファミリーサポートの方に預けることもあったのだけれど、罪悪感を覚えてしまう自分がいた。
息子は私と遊んでほしいのではないか。家にいるのに他人に預けられたら、傷つくんじゃないだろうか? 私が気にしやすい性格なのもあるかもしれないけれど、そういった気持ちから人には気軽に頼れなかった。
かまってあげられない罪悪感、仕事に集中できないことによる焦りやストレス……。専業主婦だったら子どもと一緒にいてあげられるのにな、という気持ちも時折顔を出すけれど、かといって自分が専業主婦に向いているとも思えない。
子どもの夏やすみにはじめて直面した去年の夏、私も夫も正直なところ発狂しそうになっていた。
子連れ旅行やワーケーションをしていた同僚
今年の夏やすみはどうやって乗り切ろうかな、と考えはじめていた5月ごろ、私は同僚のOさんが、会社の仲の良いメンバーを集めて、定期的に家族旅行や「子連れワーケーション」に行っているという話を耳にした。
はじめは複数の家族で一緒に出かける純粋な旅行だったらしいけれど、最近はただの旅行だけではなく、ワーケーションもしているらしい。複数の家族で行くことで、子ども同士で遊んでくれるので親の手から離れる時間が長くなり、ずいぶんと仕事がしやすくなるとのことだった。
Oさんや他のママさんたちをランチに誘い、実際にいろいろと話を聞いていると、テレワークと子育ての両立に悩んでいるのは私だけではないようだった。子どもがかんしゃくを持っていたり、不登校になったり、病気がちだったり……と、それぞれの家族にはそれぞれの事情がある。みんな悩みを抱えていて、少しだけホッとした自分がいた。
そして話を聞くたびに、「子連れワーケーション」というものへの興味は募るばかり。
「今年の子どもたちの夏やすみ期間、一緒にワーケーションに行きませんか?」
思い切ってそう提案をしてみたところ、Oさんたちは快く首を縦に振ってくれた。
いざ、小豆島へ!
夏やすみの子連れワーケーションに参加することが決まったのは、Oさん、Aさん、Tさん、そして私の4人の母親と、その子どもたち5人の計9人。私の家からは、三男と私だけが参加した。みんな旦那は連れて来なかった(母親同士の方が気楽なこともあるし、そもそもフルリモートじゃない方もいた)。
期間は7月31日からの7日間で、行き先は、お手頃な貸別荘が見つかったという理由で小豆島に決まった。
子どもが遊べる庭があること、ミーティングをするためのそれぞれの個室が確保できること、Wi-Fiが速いこと。宿が古すぎると子どもが嫌がるから、綺麗めなところがいい。ホテルではなく一戸建て。子連れワーケーションの条件にぴったり合う場所を見つけるのは想像よりも大変だったけど、素敵な場所が見つかった。
持っていったものは、簡易プールやボードゲームなど、子どもたちが遊べそうなもの。あとはそれぞれの仕事に必要なものだ。Tさんはなんと、いつもの仕事環境と同じにするために大きなモニターを郵送して持ってきていた。
そう、私たちは大前提として遊びではなく「仕事のパフォーマンスをあげる」ためにワーケーションに行くのだ。子どもたちの夏やすみの思い出をつくりたいという気持ちもあるけれど、私たちの仕事が最優先。
それぞれが仕事と家事をやりやすいように、事前に何度か打ち合わせ(という名のランチ)もした。朝7時ごろから仕事をはじめて早めにあがって夕飯をつくる人、朝食を担当して9時ごろから夕方すぎまで働く人。自然と役割分担ができたことで、特段問題もなく、スムーズに日々を過ごすことができた。
子どもたちはと言うと、適当に自分たちで自由に遊んでくれていた。年齢は12歳から4歳までバラバラだったけれど、おのおのがくっついたり離れたりと、子どもの柔軟力はものすごい。そしてなんと私は7日間のあいだ、仕事中に息子から話しかけられることがほとんどなかった。
子どもの夏やすみ中に、こんなに仕事に集中できるなんて……。さらには、子どもたちも心底楽しんでくれて「かまってあげられない」罪悪感もまったくないなんて! 去年の自分を思い出して、しみじみとその感動を噛み締めた。
家族を閉じない。「大家族っぽさ」の安心感
子連れワーケーションは、もちろん仕事に集中できることもそうなのだけれど、他の家族の雰囲気や様子を見ることができるのもとてもいいところだ。
定期的に子連れで旅行したりワーケーションしたりするOさんは、「子どもの成長を定期的に見てくれる親以外の大人がいるのもいい」と言う。
家族を自分たちだけで「閉じてしまわない」ことは大切だな、とあらためて思う。
核家族だと、つい「自分たちの家族のことは、自分たちだけでなんとかしなくては」と抱え込んでしまうことがある。ファミリーサポートなど周りに頼る人がいたとしても、「自分たちだけで」という部分に、なぜか重きを置いてしまうのだ。事実、私もそうだった。けれど、家族を他者に「開く」ことで、悩みをシェアしたり、助け合ったりと、これまでにない安心感を得ることができた。
ワーケーションというと、言葉のせいか「遊び」みたいなイメージがあるけれど、そんなことは全然ない。テレワークと子育ての両立は想像以上に大変で、効率が下がってしまうこともある。それを防ぐための、世の中の子育てをしている親の乗り切り方のひとつとして、子連れワーケーションがもっと一般的になればいいなと思う。
テレワークは家族の時間を増やす、とてもいい働き方だ。けれどそのテレワークをもっといいものにするために、会社にも「テレワーク子育て支援」の制度があればいいのにな。
今度、社内のみんなに提案してみようかなあ。
企画:穂積真人・高橋団・田平貴洋サイボウズ式特集「テレワークを、家族のために。」
テレワークが、多くの企業で取り入れられつつある現在。時間や自由が増えて「ラッキー」だと思っている方も、少なくないかもしれません。そんな「ラッキー」を、自分のためだけではなく、家族のために使ってみませんか? もちろん「家族のため」がすべてだとは思いません。ただ、ひとつのあり方として。テレワークで生まれた時間を、家族のために。
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