「わかりあえない」から進むテクノロジー
「社員の本音」を5分で可視化。AIを使った新しいワークショップの形
「現場の声を経営にいかしたい」
「社員の声に広く耳を傾けたい」
そう思うものの、数十人、数百人の意見を聞くことは難しく、結局は一部の人の意見で決まってしまう。そんな経験を持つ人は多いのではないでしょうか。
どうすれば社員の「本音」を拾えるのか。
サイボウズ式編集部ではこの夏、AIを使ったワークショップを開催。わずか5分で参加者約50人の本音を引き出すことに成功しました。今回はワークショップ参加者の一人で、マーケティング本部でAI支援を進めている、千葉の目線でレポートします。
部署も職位もバラバラな50人。議論はまとまるのか?
8月某日、東京オフィスの会議室とオンラインをつないで約50名の社員が集合。参加者の千葉も会議室に入りました。
どんなワークショップになるのか…?
この日議論したテーマは「社内でのAI利用推進」。
目覚ましいスピードで進化するAIを、社内の業務にどう生かすべきか──多くの企業と同じように、サイボウズも試行錯誤しています。
千葉は普段からAIへの関心が高く、所属するマーケティング本部でも積極的にAI活用を進めています。その一方で最近は悩みも出てきました。

従来の「ふせんワーク」では「モヤモヤの共有」が限界


おなじみ、ふせんワーク


このため、社内教育や、情報漏えいの防止対策に力を入れてはどうかと話しました。

AIにファシリテーションを任せてみると?


いどばたシステムの画面
※デジタル民主主義2030:技術の力で市民の声を活かし、政治をよりよい形に進化させることを目指したプロジェクト

青山柊太朗(あおやま しゅうたろう)コロンビア大学工学部情報科学専攻。 合同会社多元現実 代表。ソニーコンピューターサイエンス研究所(Sony CSL)やスマートニュースメディア研究所にて、AIを介したコミュニケーションについての研究に取り組む。 デジタル民主主義や熟議支援技術の社会実装も行っている。2020年度IPA未踏クリエータ

西尾 泰和(にしお ひろかず)24歳で博士(理学)を取得。2007年よりサイボウズ・ラボにて研究に従事。主幹研究員。ソフトウェアによる知識創造の進化に関心がある。著書に『コーディングを支える技術 ~成り立ちから学ぶプログラミング作法』(技術評論社)、『エンジニアの知的生産術 ──効率的に学び、整理し、アウトプットする』(技術評論社)などがある。一般社団法人未踏の理事を兼任
異なる背景を持つ人同士が互いの考えを理解したり、直接コミュニケーションしたりする機会を増やしたい、という思いがあって開発しました。どのような結果になるか楽しみです。
いどばたシステムでは、まず参加者それぞれがAIとチャットをして、自由に意見を書き込みます。その後、書き込まれた内容をAIが整理、要約します。
参加者は、ふせんとペンをパソコンに入れ替え、それぞれでチャットを始めました。

いどばたシステムのチャット画面


50人の本音がいどばたシステムに書き込まれた
5分で「社員の本音」が可視化


参加者が書き込んだチャットの内容に基づいて、6つの論点が抽出された

AIが抽出した論点には、詳細な解説がそれぞれ書かれていた
さらに深掘りして、合意点と対立点を表示します。
「意外と自分だけじゃなかった」

「文化か統率か、AI推進の舵取り」とタイトルがついた論点
サイボウズはボトムアップの文化が根強く、AI推進についても各本部それぞれが自発的に取り組んでいます。
一方他社では、トップがAI注力を宣言したり、AIの活用を人事評価に取り入れたりするなど、トップダウンで進めている事例も多くあります。
さらにもうひとつの特徴は、共有範囲の広さです。個人がAIと対話した内容が、いったんAIによって噛み砕かれて、共通点・相違点の分析をかけて共有されるので「実はみんなこう思っていたんだ」「こんな切り口があったんだ」という気づきにつながります。
サイボウズのAI活用の現在地
今回のテーマである「社内でのAI利用推進」。実は、サイボウズ社内ではすでに多くの社員が、日々の業務でAIを利用しています。
とくに議事録作成や、資料作成、お客様からのお問い合わせ対応などで活用されていて、2025年6月に実施した社内アンケートでは回答した1118人中80%が「AIを日常的に使っている」と答えています。
しかし、個人個人に利用状況を確認してみると「全然使いこなせていない」「他社ではもっと活用している気がする」と答える社員は少なくありませんでした。
・利用推進と情報漏えいリスクのジレンマ
・AIの使い方や選び方などのスキル面
・ボトムアップの進め方の是非
これらを深掘りすればAIの活用がより進みそうですね。

ワークショップ終了! おつかれさまでした〜
チームで使うAIのあり方
さらに、共通点と相違点が抽出されるので、これを議論の土台にすることで、効率よく議論を進めることができます。
関心が高い論点の議論が効率化することによって、時間に余裕が生まれます。時間ができれば、これまでは「忙しいから、無視しよう」となっていた少数論点にも注意を向けられるようになると思います。
企画・編集・撮影:高橋 団(サイボウズ)執筆:山本悠子(サイボウズ)
SNSシェア
執筆
山本 悠子
新卒で大手メーカーで勤務したのち、2016年にサイボウズへ入社。製品プロモーションやWebディレクションの経験を経て、サイボウズ式編集部に。組織づくりや働き方に興味があります。
撮影・イラスト
高橋団
2019年に新卒でサイボウズに入社。サイボウズ式初の新人編集部員。神奈川出身。大学では学生記者として活動。スポーツとチームワークに興味があります。複業でスポーツを中心に写真を撮っています。
編集
高橋団
2019年に新卒でサイボウズに入社。サイボウズ式初の新人編集部員。神奈川出身。大学では学生記者として活動。スポーツとチームワークに興味があります。複業でスポーツを中心に写真を撮っています。


