インターン大学生の疑問
ずっと仲のよいカップルでいたい時、必要なのは「女子力」じゃない
日々の疲れやイライラをついぶつけてしまう。相手を気にかけることがおろそかになってしまう……彼氏や彼女など、身近な人が相手であるほどやってしまいがちなコミュニケーションですね。パートナーとの意思疎通はどうあるべきなのでしょうか。
そんなパートナーシップに悩む都内在住の女子大生2人の悩みを聞くのは、「ブロガーズ・コラム 」でもおなじみの桐谷ヨウ(ex-ファーレンハイト)さん。恋愛や人間関係の本質を、軽快な論調でズバリ突くコラムニストです。サイボウズが公開したワークスタイルドラマ「声」の内容をもとに、「パートナーコミュニケーション論」を繰り広げます。
「1時間の対話」が、「2人の今後」を左右する
このドラマって、夫婦間に限らず恋愛関係においても「あるある」って思うシーンがたくさんあったよね。
うんうん。相手の事情が理解できないでお互いにイライラしちゃう感じ、すごくわかる。
YちゃんとCちゃんは、これから将来のパートナーについてうっすらと考え始める年代なのかなって思うんですが。付き合っている人との接し方に悩むことってありますか?
私は今の彼氏と一緒に住んでいるわけではないので、ドラマの2人のような不満は起こりづらいかも。ただ、お互いが相手に気をつかいすぎて、ちょっと距離を感じることがあるかなあ。
距離を感じるって、具体的にどんなときなのかな?
私は悩みがある時も、絶対に解決してから話すんです。相手の負担にしたくないから、解決して笑い話にできるようになるまで言わない。
なるほど。自分で解決しようとするスタンス自体は素晴らしいよね。
ありがとうございます!(笑)。それで、問題が解決した後に「そういえば、こんなことあってね」みたいな感じで言うんですけど。
そうすると向こうは、「そのときに支えてあげたかったのに、何で言ってくれなかったの」って言うんですよ。相手を思いやろうとしすぎて、ちゃんと支えあえてない部分もあるのかなと感じることがあります。
あー。相手への踏み込みがお互い甘くなっているのを感じることはある?
うーん。お互いに、 2人の時は楽しい2人でいたいっていう気持ちが強くて、弱い部分やダメな部分を支えあえていないような。もし結婚したら、干渉がなさすぎて家庭崩壊すると思うんです(笑)。
しっかり者同士のカップルに、起こりがちな悩みですよね。物理的に離れているから成立するけど、それこそ結婚するとどうなるのかなっていうのはあるかもしれませんね。
そうだね。僕は今の彼女と、付き合って半年くらいで同棲を始めたんだけど、Yちゃんと同じ感じの付き合い方だったのね。
でも、だからこそ、同棲してからはお互いの仕事で生活リズムが違っても、寝る前の1時間だけでも話ができるように意識的に時間を作ってた。
精神的に自立してる相手だからこそ、余計気にかけるみたいな。
そうそう。「元気ないな」とか「疲れてるな」みたいなイレギュラーは、「普段の様子」っていうレギュラーがないと分かんないじゃないですか。いつもと違うなっていうことを感じられるように、普段の様子をちゃんと知っておくための接点作りは意識していたかもしれない。
なるほど。
もう少し言うと、「相手の置かれている環境や人間関係を把握しておく」ってことがすごく大事だと思います。
大概の悩みの種はそこから出てくるし、そこを把握していると、相手も話がしやすくなる。悩みの背景や前提をわざわざ説明してから打ち明けるって、結構だるいしね(笑)。
わかります。日ごろから「今日はこういうことがあって」とか「会社にこんな人がいて」っていう話をお互いにしているベースがあれば、いざというときのコミュニケーションが格段にスムーズになりますね。
「彼氏が変なプレゼントを買ってきちゃう問題」への対処法
私は彼氏が良かれと思ってやってくれたことに対して、反応に困ってしまうことがたまにあって。すごくささいなことでいうと、ダイエット中って言ってるのに、ケーキを買ってきてくれるとか。
それ、めっちゃわかる!(笑)。
もちろんすごく嬉しいし、「ありがとう」って言うんですけど、1回どうしても本音が出ちゃったことが……。
(笑)。どういう時に出ちゃったの?
私の誕生日プレゼントに、名刺ケースが欲しいって言ってたんです。彼氏も何か欲しいものある?って聞いてくれるから、名刺ケースって言ってて。
ずっとアピールしてたと。
そう。でも、いざ誕生日になってみるとカバンをくれたんですよ。「カバン欲しいって言ってたじゃん」って。
……別の相手と間違えたとか?(笑)。
違います!(笑)。よく考えると、確かに1回だけ「カバン欲しいなあ」って言ったことがあったの。でもそれは自分で買ってたし、名刺ケースが欲しいってずっと言ってたよって伝えたら、すごく落ち込んじゃって……。
彼としては自分で考えたプレゼントだし、カバンの方が値段だって高いし、頑張ったつもりだったんだろうね、きっと。
「サプライズをしたかったから、欲しいって言ってるものじゃなくて別のものをあげたかった。結果的にいらないものだったなら、ごめんね」って。
でも、彼氏の気持ちもすごく分かるな〜。名刺ケースが欲しいって言われたからそれを買う、みたいな事務的な感じが嫌で、「そういえばカバンが欲しいとも言ってた」みたいな発想だったんじゃないかな。
私もそういうことあったよ。3年目の記念日に彼氏がプレゼントを用意してくれていて、手乗りサイズのケースが出てきたから、もしかしたら指輪かも……って開けてみたら、インディアンの羽根みたいなピアス(笑)。
(爆笑)
Yちゃん、全然そういうファッションじゃないのに! (笑)。
私も10代の頃に、どう頑張っても着けられないくらい妙なデザインの時計もらって、やむなく家に飾ってたらいつの間にか母親が使ってたな……。
やっぱ、みんな何かしらそういうエピソードあるよね(笑)。
耳が痛い(笑)。でも、Cちゃんの彼氏は本当によい人だと思うよ。ケーキもカバンも、自分なりに考えてやってくれてる。
思いやりって、「性根」と「作法」で構成されてると僕は思ってます。その人の「性根」に、相手に対して優しくしたい、喜んでもらいたいっていう気持ちが、そもそもあるか。これがない人は論外。
「作法」はテクニック的なもので、その気持ちをどう表面化・表現するか? いつ・何をどの程度やったらよいか? っていう。それって得手・不得手や慣れがある。
表面上のテクニックだけで優しくされても……って感じですもんね。それでいうと、Cちゃんの彼氏はすごくよい「性根」を持ってる。
そう。だから、ほしくないものを買ってきちゃう「作法」の下手さは一旦置いておいて、まずは自分の受け取り方をどうするか。そして相手の作法は、徐々に教育する(笑)。
Cちゃんが彼の「性根」に対する感謝の気持ちを伝えているのは素晴らしいと思います。あえて言えば、後日さりげなく「本当はこういうのが嬉しいんだよ」って伝えるのが良いかもね。
時間差はよいですね。その場で言うとやっぱり、相手もシュンとなっちゃいそうだし。
そうそう。そして日ごろから、自分の「喜びスイッチ」をインプットしておく。
先日僕が出した本の4章はまさしく思いやり全般についてなんですが、TIPS的な一例を挙げると「いい時だけ褒めて、悪い時はリアクションを薄くする」は汎用性が高いです。
欲しくなかったケーキのときは、おいしいね!ぐらいにしておく、とかですか?
そんな感じ。本当に嬉しいときのリアクションと明らかに差が出ると、彼もだんだんポイントをおさえてくると思うよ。好きな人には喜んでもらいたいもんだし。
気づかいのできるあの人の秘密は「察し力」にあった
嬉しいことをしてもらったときのリアクションを毎回きちんとできるような「察し力」を持っておかなきゃいけないですよね。相手の厚意がいつの間にか当たり前になっていることって、付き合いが長くなるほど起こりがちだし。
うんうん。自分のことばかりになって「察し力」が低下していないか、セルフツッコミを定期的に入れていく必要があると思うな。
私はパートナーの思いやりとか気づかいを見逃してしまうことがよくあって、その「察し力」を鍛える方法ってないのかなっていつも思います。
あると思います。「察し力」は意識のチューニングなんですよ。何を大事にするか明確にして、そこに意識を持っていく、って話で。
僕自身、元々人に気をつかえなかった人間なんですよ。大人数でいるとき時の気づかいとか、合コン以外でできなかった(笑)。
え〜! すごく意外です。場所によって気づかいできたりできなかったりしたと。
同じ人間なのになぜかというと、関係性ごとに大事にする対象を分かっていなかったんですよ。
例えば、合コンで何が大事かと言ったら、女の子に楽しくなってもらうこと。会社の飲み会だったら、上司を立てるということ。「察し力」の根本って、その場の優先順位が誰になるかってことだから。
パートナーシップで言えば、恋人ではなく自分が優先順位のトップになってしまうのは最悪ってことだよね。
なるほど。気づかいができていないときって、意識のチューニングが自分だけに合っている状態なんですね。
モヤモヤする気持ちの伝え方は「早めに軽めに」
ただ、「ちょっと違うな」と思ったことはきちんと言った方がよい。責める言い方にならないように気をつけながら。
感情のしこりはなるべく早いタイミングで解消した方がよいし、『察しない男、説明しない女』というタイトルの本もあるけど、説明されてないことをすべて察するって無理があるから。
例えばダイエット中にケーキ買ってきてくれちゃった時にも、さらっと言っちゃうとか。
「私、甘いものやめようかと思ってたのに〜! 」とか言って、「でも、せっかく買ってくれたし、嬉しいから食べるね、そのかわり一緒に走るよ! 」ってくらいライトな伝え方だと印象も悪くならないですよね。
そうそう、そのライトな感じだよね(笑)。コミュニケーションって、「何を言うか」と同じくらい「どんな風に言うか」が本当に大事だから。
たしかに。ドラマの片岡夫婦も、2人で向き合う会話が量も質も足りてなかったなあ。少し言い方を変えるだけ、全然違う反応が引き出せるのに。
量と質、本当にそう思う。そして、投げかける言葉をほんの少し変えるだけで、相手への刺さり方は全く変わってくるし、わだかまりを解消するきっかけにもなる。
そういうお互いの本音を伝え合うきっかけになるコミュニケーションを増やしていくべきだよね。
長く一緒にいる相手だからこそ、意識してていねいに接してみる。パートナーとの関係をよくしたいときは、まず自分の振る舞いを振り返ってみるのが一番かもしれませんね。
編集:椛島詩央里/写真:橋本直己
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