サイボウズが「ゆるくても勝ってしまう会社」の実例になってほしい──組織コンサルが社会人インターンで感じたこと

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滝口健史(たきぐち・たけし)。組織コンサルタント。株式会社日経リサーチに入社後、ワークライフバランスやマネジメントに関心をもち、早稲田大学ビジネススクールに進学。事業企画や組織論などを中心に学ぶ。株式会社スコラ・コンサルトに入社後はリサーチ部門の運営やワークショップ開発などを担当。2017年より社会人インターンとしてサイボウズに参画。現在、育児休暇を取得中。

サイボウズ式とDIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューの読者で考えた『働きたくなる会社』。ここに参加したことをきっかけに、サイボウズに数カ月間、社会人インターンとしてジョインした組織コンサルタント・滝口健史。サイボウズって、本当にいい会社なの?

前編では「そもそもいい会社って?」「サイボウズのいいところってどんなところ?」などをサイボウズ式の藤村能光編集長と話しました。後編では、「サイボウズのダメ(?)なところ」に迫ってみます。

サイボウズって本当にいい会社ですか? 組織コンサルタントが社会人インターンとして潜入してみた
読者と考える「働きたくなる会社」とは - DHBR×サイボウズ式

サイボウズは意外と普通の会社

藤村
前編で滝口さんがおっしゃっていた「サイボウズは理想的な普通の会社」という点について、聞かせてください。
滝口健史
わかりました。私がサイボウズに入って思ったのは、「意外と普通の企業だな」ということです。
藤村
「意外と普通」ですか。
滝口健史
サイボウズは、もしかして仕事のやり方自体がものすごく革新的で、これまで見たこともないような組織なのかと思っていたんです。けど、実際はそんなこともなく。

例えば、サイボウズは「給与テーブルを捨てた」と言っています。その人を転職市場に乗せたときに、年収いくらの価値がある人なのかで給与を決めると。
自由に働く社員を評価するために、給与テーブルを捨てました──為末大×青野慶久「本質的に人は何のために生きるのか」
滝口健史
そういうこともあって「サイボウズって革新的だな」と思われていると思うのですが、実際にどうやって運用しているかというと、転職してきた人がほかの企業でいくらもらっていたかなどのデータを地道に貯めているんです。
藤村
そうなんですよね。
滝口健史
外部から見ると、サイボウズはkintoneの広告や、働き方改革を推進する企業イメージなど、世の中に対して斬新なことを打ち出しています。

外から見ていると広報やマーケティングの部署、サイボウズ式を運営しているコーポレートブランディング部などが目立っているように見えるかもしれません。
働き方を変えたいなら、まず経営者が予算達成をあきらめろ!ネットで話題の広告が問う、画一的な日本の働き方改革
藤村
確かに、見えやすい仕事ではある。
滝口健史
ですが、製品を開発・運用しているエンジニアたちの給与水準の方が高いという具合に、職種の市場価値も考慮して、給料が決まっています。別に突拍子もないやり方で運営されている企業ではなく、普通の会社なんです。
藤村
そうですね。
滝口健史
「普通」といってもネガティブな意味ではないんです。「理想的普通」と言った方がいいかもしれません。

サイボウズは基本に忠実な会社?

滝口健史
これって、サイボウズを研究しながら自然に浮かんできた言葉なんですが、「会社ってこういう風に運営したらいいよね」という一般的なイメージってあると思うんです。

「情報は公開しましょう」とか、「会議の目的や業務の責任者は明確にしましょう」とか。
藤村
ありますねぇ。
滝口健史
サイボウズのみなさんは、そういうことをちゃんと心掛けている気がして、「基本に忠実ですよね」って、インターン中に社員の方とも話しました。
藤村
確かに。基本を大事にしている感じはあるかも。
滝口健史
経営の見本を見ているみたいというか。IT企業なだけあってプログラミングっぽく組織を作り込んでいる感じもします。

いい意味で普通の感覚をもつ人たちがビジネスの基本に忠実に業務を遂行していると思いました。

「こうありたい」という「理想」に沿って当たり前のことをしっかりやっているから「普通」に見えてしまったんです。実際は難しいことなのでしょうけど。
藤村
ふむふむ。
滝口健史
「普通」って、他社では疎かにされることもあります。基本に忠実なことより、目新しいことに注目しがちですから。

サイボウズは○○を守らない!? サイボウズのダメ(?)なところ

滝口健史
あと、もしかしたら「ダメな企業」だと思われるかもしれない面も発見しました。
藤村
ええっ、どこでしょう。
滝口健史
前編で紹介した、企業を診断するためのアンケートがありましたよね。

弊社がコンサルティングしている企業の平均点が3.15点(比較可能な34項目の平均点)なのですが、サイボウズは3.94点と非常に高得点なんですよ。
藤村
おおお。
滝口健史
でも、1項目だけ「期日を守って遂行」という項目が3.43点で他社と同じ程度だったんです。
藤村
あぁ……。
滝口健史
こちら、サイボウズ特有のポイントだと思いました。

期日は「何が何でも守らなければならないもの」ではなく、もしこの期日が守れないなら、業務のどこかに無理があるんじゃないか、と考えるのがサイボウズの人たち。
藤村
そうですね。期日に遅れている人たちそれぞれが今どういう状況なのかを共有し、担当者を責めるのではなく、今後どうしていったらよいかをいっしょに考えます。上司であれば、どの業務はやらなくても大丈夫かを判断するといったやりとりになります。
滝口健史
そういう調整が入る余地があるのが、サイボウズらしいところですね。世間的に「ゆるい」と言われてしまうところでもありますが。
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頼まれたことに対して「断りやすい」「受け入れるべき状況だが難しい場合は、ほかの業務の優先順位を下げるなどのやりとりがある」とのこと

それ、業務時間中にオンラインで議論すること!? グループウェアの会社だけど…

滝口健史
グループウェアの使い方は、サイボウズならではの情報整理のコツやスマートな使い方があるのかと期待していたのですが、むしろ……。
藤村
そうでもない、というか。
滝口健史
混沌としていますよね。入社したての人が初めは苦労するくらいに、グループウェア上に情報があふれています。

中には「それ業務時間中にオンラインで議論すること!?」と思うような日常のささいなことを長々と議論、やりとりしていることも……。
藤村
ああ。
滝口健史
もはや「炎上」しているテーマも何度か見かけましたよ。

まぁ、どんなやりとりも「可視化されている」ということで、これも情報共有度の高さをあらわしているのかもしれません。
藤村
そうですね。
滝口健史
他社ではここまでやりとりに透明度がないので、自社の風土・文化を伺い知るまである程度時間がかかります。

サイボウズの場合は、「この会社ではこういうことが重視されるのか」とか、「こういうケースはこういう結論になるのか」とか、グループウェア上のやり取りをほかの人が見ることで、理解が進みます。

全員が高速で風土や文化を学習する装置になっていると言えそうです。
藤村
情報がオープンになっていて、見たいと思えば見られるようにしておくことは大事です。それがたとえ炎上であっても。
滝口健史
世間一般の会社では、社内でどんなやりとりがあるかはローカルにしかわからないため、学びにならず、同じことが繰り返されたりしていますからね。サイボウズはこの点でも独特だと感じました。

サイボウズの未来。正直、会社はつぶれてもいい!? 財団やNPOのような組織形態になる?

藤村
外部の方に社内を見ていただくと、自社と他社の違いがよくわかっていいですね。研究結果をふまえて、サイボウズは今後どうなっていくんでしょう。
滝口健史
ひとつ思ったのは、サイボウズは「ゆるくても勝ってしまう会社」になろうとしているんだなということ。

「多様な個性のチームワーク」で勝負し、競合とは違うやり方で勝とうとしているんだと感じました。「世界中にグループウェアを」という壮大なビジョンをどう現実のものにしていくのか……楽しみです。
藤村
がんばります。
滝口健史
サイボウズの今後という話に関係していうと、サイボウズがもっとも特異な点が、会社の存続をゴールにしていないところですね。
藤村
「世の中の役に立つもの(グループウェア)を広める」のがゴールで、サイボウズという企業が存続していくことがゴールなのではない、ということは、私たち社員も共通して持っている認識です。
滝口健史
実際に、青野社長と山田副社長は「寄付で成立しているWikipediaのような財団やNPO法人のような組織形態でもよい」と発言しています。

冗談というか、突飛なアイデアレベルの話なのかと思っていたのですが、インターン中に、具体的に検討している資料を発見しました。
藤村
もしかしたら、本当にそうなるのかもしれません。10年後、20年後、世界がグループウェアでどう変わるのか。そしてそのとき、サイボウズはどのような形になっているのか。
滝口健史
気になりますね。
藤村
そうだ、この分析結果を社長の青野と副社長の山田にぶつけてみませんか?
滝口健史
いいですね。
藤村
では呼んでみましょう。青野さーん、山田さーん。

(つづきます)

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執筆:滝口健史 編集:田島里奈 /ノオト 写真:橋本美花 企画:藤村能光

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