社長が過保護だと、チームは永続できない──千葉ジェッツ島田社長がチームを“自立”させたいワケ

プロバスケットボールリーグ「Bリーグ」の2018-19シーズンで、60試合中わずか8敗というリーグ最高勝率をあげた千葉ジェッツ。観客動員数も3シーズン連続でリーグトップ、昨期の売上高は約17億6000万円と、経営面でも快進撃を続けています。
そんな千葉ジェッツを強いリーダーシップで率いてきたのが島田慎二社長です。しかし、島田社長が次に目指すのは、自身がいなくてもクラブが回る「脱・島田」体制。強いリーダーシップで率いてきたこれまでとは真逆の体制を目指す理由は、一体何なのでしょうか?
千葉ジェッツ島田社長と、サイボウズ代表取締役社長・青野慶久。「自立」についての経営者対談です。
※本記事中の役職名は取材当時のものです。
自分でチームを率いながら、自分を不要とする組織をつくる




「千葉ジェッツふなばしを取り巻くすべての人たちと共にハッピーになる」という経営理念を実現するためには、クラブ主導でアリーナを建設する必要があると、決断しました。

島田慎二(しまだ・しんじ)。株式会社千葉ジェッツふなばし代表取締役社長。1970年新潟県生まれ。日本大学卒業後、現・(株)エイチ・アイ・エスを経て、2001年(株)ハルインターナショナルを設立。2010年にM&Aで東証一部企業に売却。2012年より千葉ジェッツの運営株式会社ASPE(現:株式会社千葉ジェッツふなばし)代表取締役に就任。Bリーグ理事。著書に『オフィスのゴミを拾わないといけない理由をあなたは部下にちゃんと説明できるか? 最強の組織を作るマネジメント術』(アスコム)や『千葉ジェッツの奇跡 Bリーグ集客ナンバー1クラブの秘密』(KADOKAWA)など



となると、社長である島田さんが組織から切られる可能性も出てきます。

青野慶久(あおの・よしひさ)。1971年生まれ。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立した。2005年4月には代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を行い、2011年からは、事業のクラウド化を推進。著書に、『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない』(PHP研究所)など







私がいなければ、クラブの再建は無かったかもしれませんが、どこかで私の経営スタイルをスイッチングする必要があると思っています。私が引っ張るだけのやり方を続ければ、私がいなくなったあとに千葉ジェッツの経営状況が低下していく可能性もあるからです。
だから、私がいなくなってもクラブが上手く回るよう、今は動いています。
街にずっと生き続けるシンボリックな存在になってほしい


では、そもそもなぜスポーツクラブに永続性が必要なのでしょうか。


永続を目的にしてしまうと、どんどんいびつな組織になってしまいます。その結果、個人が我慢を強いられるのはおかしいと思うんですよ。会社なんて、究極的にはバーチャルな存在に過ぎないのに。



あの応援の熱量と、それがその地域の人々に与えるパワーは、どんな時代になっても変わらないと思うんです。そう考えると、この事業はいつまでも続ける意義があるなと。





千葉ジェッツには、何百年後には街にずっと生き続けるシンボリックな存在になってほしいんですよ。


行動で示したら、社員が自立してきた



いずれにしても、理念を大切にしてくれるメンバーに引き継ぎたいとは思っています。


理念に共感しているメンバーでないと、チームは1つになれない。そう気がついて、理念をつくり、理念に共感して、選手たちに浸透させることができるコーチを呼んだ。すると、想像以上に早く成果が出たんです。


千葉ジェッツという強いチームが永続するためには、現在ヘッドコーチを務めている大野篤史ヘッドコーチがいなくても強くあり続けられる「脱・大野」が将来的には必要だと考えているんです。
理念に共感してくれるヘッドコーチさえいれば、強くあり続けられる。それが私の理想のチームです。






刻一刻と経済状況は動くし、僕が明日死ぬかもしれない。そのときの心の準備はできているか? 瞬間の判断ができるように、五感を鋭敏にさせたい。これが、私が社員に求めている自立のイメージです。



しかし、そうやって私が千葉ジェッツから離れてもいい体制になったら、今さら自立感が出てきたんですよ。ミクシィグループの傘下に入ることが決まったことで、社長が代わる可能性もあると気がついたのか、社員たちの目つきが変わってきたんです。
ずっと言っても伝わらなかったのに、あれ、今か! って(笑)。


自分で、自分の役割が終わるときがわかるんです



……スピリチュアルな話じゃないですよ(笑)。




そこから社員に謝って、みんなが幸せになる会社をつくろうとマインドセットしました。その後、会社の業績は順調に伸びていきましたね。


誤解しないでいただきたいのですが、千葉ジェッツは私の体の一部くらいの感覚を持っているんですよ。ただ、私がリーダーシップを発揮せず、チームを見守る支え方もあると思うんです。



文:石川歩/編集:松尾奈々絵(ノオト)/撮影:栃久保誠/企画:吉原寿樹
売上も利益も観客動員数もトップクラスの千葉ジェッツが、サイボウズのグループウェアを選択した理由
サイボウズ Office 導入事例 千葉ジェッツふなばし
――サイボウズ Office導入以前の状況についてお聞かせください。 ...
SNSシェア
執筆

石川歩
モータースポーツ系出版社から不動産ポータルサイトの編集者を経て、フリーランスに。主にスポーツ・暮らし関係のメディアで編集と執筆を手がけつつ、分野外の人物インタビューも行う。
撮影・イラスト

編集
