社長の引き継ぎ、どうする?「最強の青野を倒す人材」求む──三浦工業 宮内 大介×サイボウズ 青野 慶久
フラットな組織でどんなときも公明正大に議論し、チームワークの輪を広げていく。サイボウズはそんな文化を大切にして成長してきました。
しかしサイボウズも、現在では従業員数1000名を超え、文化の共有に苦労する場面も増えてきています。多様な個性が行き交う社内で、会社文化を維持しながら、次世代に引き継ぐにはどうすればいいでしょうか。
この問題意識のもとでサイボウズ代表・青野慶久が今回お招きしたのは、“ミウラのボイラ”で知られる三浦工業株式会社のトップ・宮内大介さん。
同社は設立60年超、連結従業員数6000名を超える大企業でありながら、創業時からの文化を受け継いで新たな事業やブランディングを展開しています。
徐々に大企業化していくなかで、どのように文化を継承し、後進を育てていくべきか。2人の経営者が語り合いました。
「創業者だったらどうするか」を考える
組織が巨大化していくなかで、どのように企業文化を継承して来たのかを学ばせていただきたいと思っています。
設立から60年の間に外部環境は変わり続けてきました。いまも大きな変化の波にさらされています。その時々で「もしここに三浦保がいたら何をするだろうか」と思いを巡らせ、必要なスタンスを受け継いでいくことこそが三浦工業の伝統ではないかと。
いまのお話で思い出したことがあります。私はパナソニック出身ということもあって、同社の創業者である松下幸之助さんの考え方から大きな影響を受けてきたんですよ。
だけど松下幸之助さんの「水道哲学」だけはなかなか理解できなくて。
でも大阪・門真の松下幸之助記念館を訪れた際に、その疑問が解消されました。
記念館に陳列されている最初期のテレビは、現在の貨幣価値でいうと1000万円近い価格だったそうです。私はテレビが10万円以下で手に入る時代しか知らないから、水道哲学を理解できなかったんです。
考え方さえ理解できていれば、受け継いだモットーを新たな形で実行していけますね。
社長を務めた人にも、次のキャリアがあっていい
そのため指名委員会で社長の任期について決めて、社内にも共有しました。
そのキャプテンシートに誰が座るのかは、時々の適任で決めればいいと思っています。状況によっては、もっともリーダーシップを発揮できる人間が航海士を務めるべき場面も訪れるかもしれません。
日本企業の多くはピラミッド型の組織構造で、若手から課長・部長へ、運が良ければ役員や社長へ昇進し、その先は会長、顧問、相談役などの役割に限定されていました。
でも実はそれだけではない。社長を務めた人にも次のキャリアがあるという概念が一般的になれば、日本の固定化された組織のありようが変わるかもしれません。
私は、組織には最低でも2つの軸が必要だと思っているんです。既存事業でより「ベター」を求める軸と、新規事業の「ユニーク」を求める軸です。
ベターを追いかけなければ企業は成長できませんが、同時にユニークな違いを生み出していかなければ成長の可能性が広がりません。
自社はいまどの軸に注力すべきなのか。それをみんなで議論し、「宮内はユニークな違いを生み出すことに注力すべき」という結論になれば、私は喜んで新規事業の現場に飛び込みますよ。
「青野と戦って勝つ」人間が現れるまで
これは起業家の特性なのかもしれませんが、どうしても「俺が俺が」となってしまって。
その代わり、「青野さんと戦って倒す」ための舞台を社員のために作らなければいけないと思います。
いまはまだ若いから社員と本気で戦っても勝てる。でも年を重ねていくと、そうも言っていられなくなるかもしれません。そのときにさっと身を引かないと、いわゆる「老害」になってしまうわけです。
「椅子取りゲーム」になりがちな後継者選びを変えるには?
現状のサイボウズでは各機能ごとに本部があり、その上に私が君臨しています。この体制だと私が営業やマーケティング、開発などの全体像を見られるので、その視点で私に勝てる人が出てきません。
しかし、私と同じように全体を見られる人を増やさなければ、会社がどんどん縦割り化してしまうでしょう。
やるからには、本気で青野さんを超えようとする人が現れることを期待したいですね。
もし負けたら、青野さんはどうするんですか?
考えれば考えるほど、「早く俺を倒してくれ!」という思いになってきましたね(笑)
企画:神保麻希・高橋団 執筆:多田慎介 撮影:高橋団
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執筆
多田 慎介
1983年、石川県金沢市生まれ。求人広告代理店、編集プロダクションを経て2015年よりフリーランス。個人の働き方やキャリア形成、教育、企業の採用コンテンツなど、いろいろなテーマで執筆中。
撮影・イラスト
高橋団
2019年に新卒でサイボウズに入社。サイボウズ式初の新人編集部員。神奈川出身。大学では学生記者として活動。スポーツとチームワークに興味があります。複業でスポーツを中心に写真を撮っています。
編集
神保 麻希
サイボウズ株式会社 マーケティング本部所属。 立教大学 文学科 文芸・思想専修 卒業後、新卒で総合PR代理店に入社。その後ライフスタイル系メディアの広告営業・プランナーを経て、2019年よりサイボウズに入社。