フラットな組織を守り抜くために「トップダウンをあきらめ、自分が間違っている可能性を受け入れた」

フラットな組織モデルは、自分の仕事をより自由にコントロールできることから、世界中で人気を博しています。
しかし、フラットな組織にも問題はあります。カリスマ的なリーダーが対立や意思決定、文化の違いを解決するための明確な仕組みを持たずに、経営改革を推進することが多いのです。
サイボウズ社長の青野慶久は、経営陣が交代したときに、組織改革がうまくいかないのではないかと心配しています。
コーポレート・レーベルズ 共同設立者かつ経営思想家のヨースト ・ミナールさんとピム ・デ・モーアさんとの対話で、フラットな組織の成功のヒントを探りました。

Corporate Rebelsの共同設立者 Pim de Morree(ピム ・デ・モーア:写真左)さん、Joost Minnaar(ヨースト ・ミナール)さん。2016年、時代遅れの働き方に起因するフラストレーションから会社勤めを辞めた。「仕事をもっと楽しくする」というミッションを元に、世界中を飛び回り、世界で最も先進的な組織を調査している。ブログ「Corporate Rebels」の執筆や書籍『Corporate Rebels:Make Work More Fun』の出版を通じて、企業へのアドバイスや基調講演を行い、組織に働き方を根本的に変えるよう働きかけている。Thinkers50では「Top 30 Emergent Management Thinkers」に評価され、2019 Thinkers50 Radar Awardを受賞。「経営を再活性化する新しい声」の1人に選ばれている
※この記事は、Kintopia掲載記事「Do Flat Organizations Still Need Top-Down Leadership?」の抄訳です。
退職の理由は人それぞれ、1人1人に向き合う覚悟



ピム ・デ・モーアさん

どうにかしないといけないと思い、離職者に「なぜそうなったか」を聞いてみたんです。
退職の理由は人それぞれでした。いつまで、どこで、いくらで働きたいのか、自分なりの考えを持っていたんです。


サイボウズで実践しているフラットでオープンなコミュニケーションは、その気づきの延長線上にあるんです。


ヨースト ・ミナールさん

収益が伸びたのは、クラウドサービスの重要性に気づき、ビジネスモデルを機敏に転換できたことが大きいです。
ただ、スムーズに転換できたのは、社員の離職率の低下やモチベーション向上を先に進めていたからだと感じています。
フラットな組織は、意思決定権を現場に移譲する








自分たちが助けを必要とし、協調して行動することに意味があるときだけ、ほかのチームに頼るんです。危機が発生すると、自律的なチームは即座に情報共有をして、ほかのチームに行動を促します。
トップダウン型では、すべての情報は指揮系統の上下に移動しなければなりません。分散型組織の方が柔軟性があるのは当然です。
トップダウンをあきらめ、自分が間違っている可能性を受け入れた


以前は、上から命令することでしか効率的な経営ができないと思っていました。でも、うまくいかなかったんです。




相手の言い分に耳を傾け、尊重するようにして、自分が間違っている可能性を受け入れることにしたんです。

サイボウズ 青野慶久


柔軟な働き方を認めない管理職には、部下をつけずに、チームを離れてもらうようにしました。



2)フラットな組織からはじめて、規模を拡大する(ビュートゾルフのような形)
3)伝統的な組織構造から、ボトムアップで進歩的な組織に移行する

ボトムアップアプローチでは、管理職が改革プロジェクトに賛同することが必要です。1つのチームや部署で変革の取り組みが始まる例も、多く見受けられます。
企業文化を守るのがリーダーの役目、命令はしないが「しつこく言う」


どれだけささいなことであったとしても、企業文化に沿った組織運営がなされていないと感じれば状況、問題提起をし、マネージャーと話をします。


オープンコミュニケーション文化の大きなメリットは、透明性です。社内で議論したり、問題を抱えている人がいれば、すぐに分かります。
サイボウズには1200人以上の社員がいるので、オープンなコミュニケーションプラットフォームでなければ、現状を把握できないんですよね。


人々が恐れや疑いを抱くことなく、自分の考えを話すことができるようにしなければならないのです。





万が一、自律的な個人やチームが問題を解決できない場合、リーダーシップチームが介入することができるのです。


どんな紛争解決プロセスを選ぶにしても、まずは会話と自律的な解決を最大化して、紛争の拡大を最小限に抑えることが重要です。
フラットな組織文化には「個人の責任」が必要


例えば、自分の理想の働き方と給与希望を文章にして、上司に提出してもらっています。そうすることで、自分が何を大切にしているのか、全員が考えるようになるんです。





100人100通りの働き方に移行したことで、人材の定着率も上がりました。


アメリカに住む人たちの中にも、現在のいわゆるアメリカ式のマネジメントに共感していない人は多いのだと気づかされました。
100人100通りの働き方は、それでも万人向けではない

自分が望む働き方を理解し、嫌なことは積極的に伝えられる自立度の高い人は、快適に過ごせるはずです。
一方、仕組みがすでにできあがっていて、自分から積極的に動かなくてもいい組織構造を望む人は、苦労するかもしれません。



どのように働きたいかと聞いて「上司に指示され、重要なことはすべてヒエラルキーで決めたい」と答える人はあまりいないでしょう。


しかし、そのような人は通常、権限を失った人や中間管理職の人たちであり、最前線にいる人ではない傾向があります。ほかの人に対する権限が小さくなることを受け入れられないんですよね。
いずれ来るトップの交代、企業文化を守り抜くには

もし僕がCEOを退任することになった場合、これまで築いてきた企業文化が、次のCEOの下で崩れてしまうのは嫌なんですよね。

社員がお互いにどう接するべきか、プロセスはどうあるべきかを明確に示してください。個々の性格に関係なく、同じように機能するのが目標です。


チェック・アンド・バランスをどう取り、どうすれば権限を社内に分散し、プロセスを明確にできるか。自問自答することがおすすめです。



そうだ、分散型の組織を持つスウェーデンの銀行「ハンデルスバンケン」では、リーダーが権威主義的になりすぎた場合、従業員はそれを変えるための力と影響力を持っています。もしリーダーがその力を廃止しようとしたら、従業員は去ってしまうでしょう。
サイボウズの社員が自律性を発揮し、自分の働き方をコントロールすることが重要という考え方と同じように、リーダーに対する権限も与えています。


従業員がリーダーをコントロールできるようにすることは、文化の継続性を確保するための方法といえます。
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執筆
撮影・イラスト

高橋団
2019年に新卒でサイボウズに入社。サイボウズ式初の新人編集部員。神奈川出身。大学では学生記者として活動。スポーツとチームワークに興味があります。複業でスポーツを中心に写真を撮っています。