3月30日に開催された「チームワーク経営シンポジウム2019」。パネルディスカッション、株主総会を経た1日の締めくくりは、「スペシャルセッション 株主のから騒ぎ」です。
一般的な株主総会は、経営者と株主が対峙してお互いの立場を守りあいがち。そうではなく、株主の方々ともチームとしていっしょに会社をつくり上げていくためにはどうしたら良いだろう。そこでたどり着いたのが、「株主のから騒ぎ」でした。
「株価を上げるためには、青野社長がTwitterをやめるべき」「サイボウズ、ちょっとダサいと思われているんじゃない?」「株主優待はつくらないの?」「社外取締役はどうする?」という話を、株主同士が意見をぶつけ合う機会になりました。
経営者と株主で、一体感を持ったチームになりたい「そうだ、から騒ぎをしよう」
山田
こんにちは。株主総会のあとで、ちょっと疲れていますかね。いまから始めるのは「株主のから騒ぎ」です。
株主総会ってひな壇に経営陣が座って、株主と対峙するのが一般的ですよね。いかに守りあうのかという感じ。そうじゃなくて、「もっと一体感をもって、株主の方々とも話し合いたい。チームとしてやっていきたい」と思ったんです。
そう考えたときに「じゃあ、株主にもひな壇に上がってもおう」と。株主の方同士でも、サイボウズの課題について考えてもらって教えてほしいなと。
株主総会は終わってますからね! 青野さんとか僕に質問しないでくださいよ(笑)。
山田 理(やまだ・おさむ)。サイボウズ 取締役副社長 兼 サイボウズUSA(Kintone Corporation)社長。1992年日本興業銀行入行。2000年にサイボウズへ転職し、責任者として財務、人事および法務部門を担当し、同社の人事制度・教育研修制度の構築を手がける。2014年からグローバルへの事業拡大を企図し、米国現地法人立ち上げのためサンフランシスコに赴任し、現在に至る
山田
わたしと、今週、裁判で負けてボロボロの青野が、株主の方々と意見を交わしたいと思います。
青野
今週月曜の敗訴ですべてを出し切ってしまった、社長の青野です。今日は率直にみなさんとお話しできるのを楽しみにしてきました。
山田
そして、今回ご登壇いただく株主の方々、総勢7名です。
前列左から伊藤恵美子さん、中津川健二さん、井村俊哉さん、杉浦文吾さん、後列左から冨松由貴さん、山崎忠弘さん、田平貴洋さん
青野社長、Twitterやめませんか?
山田
早速ひとつめのテーマにいきましょうか。「どうしたら株価って上がりますか?」です。
井村
青野社長がTwitterをやめることですね。
青野
は、はい。
井村
社長さんがTwitterをやめたら株価が上がったZOZOの事例もありますし、反応はあると思います。
井村俊哉さん。投資家。Tシャツも水筒もトートバックもサイボウズ商店で購入したグッズを使うサイボウズラバー。Twitter:@imuvill
山田
いま株価が下がっていないのは、青野がつぶやいていないからかもしれないですからね。
井村
投資家は「青野砲」がいつくるのか、ビクビクしているんです。
山田
青野のツイートは、こちらをご覧いただきたいんですよね。
山田
けっこう問題になりましたね。みなさんに言わなきゃいけないことがあるでしょう。
青野
申し訳ございません。
山田
どういう意図でつぶやいたんですか?
青野
このツイートを投稿する前の10日間くらいで、株価が50%くらい値上がりしていたんです。でも、特別ないい発表があったわけでもなかったので、理由もなくて、上がり幅も大きかった。
実はサイボウズは一度、同じことを経験しているんです。2005年の夏から年末にかけてものすごくあがって……。
山崎
13倍でしたね。
山崎忠弘さん。サイボウズの株主になって18年。サイボウズの株価の浮き沈みをすべて知る
山田
ええ! いい株だったんですね。
青野
でも特に大幅に上がる要因があるわけでもなく、結局ガクッと落ちてしまい、投資家の人たちにとってもよくない結果になってしまった。
そういう経験から、「実態の伴わない株価の上昇はよくないものだ」と知ったんです。だから株価が上がっているのをみて、「対抗手段を考えよう」とつぶやいてしまった。
青野慶久(あおの・よしひさ)。1971年生まれ。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立した。2005年4月には代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を行い、2011年からは、事業のクラウド化を推進。著書に、『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない』(PHP研究所)など
山田
対抗手段って、何か考えていたんですか?
青野
いやー、まったくないです。いろいろ考えてはみたんですけど、具体的には何も思い浮かばなくて(笑)。
山田
なかったんかい!(笑)
井村
ちょっといいですか! 「上がりすぎていた」と言いますけど、当時840円くらいなんですよ。そんなもんじゃないですよ、サイボウズ! もっと堂々としていてほしかったですね。
山崎
株はこれからも値上がりして、いつかオーバーシュートすると思いますよ。でも、いずれ売る人が現れたら、鳥のむれが飛んでいくように、一斉にみんな売り始めて、最終的に適正価格に落ち着くものです。
だから社長はTwitterであんな余計なこと書いちゃダメよ。
青野
はい、すみません。
山田
ははは。株式総会よりも詰められてるじゃないですか。
井村
Twitterは株価の話題にだけ触れなければいいと思いますよ。
サイボウズはちょっとダサいと思われている
山田
さあ、「どうしたら株価って上がりますか?」というテーマでしたね。どうでしょう?
井村
残念ながら、サイボウズさんは、ちょっとダサいと思われているところがあると思います。
山田
え、どういうことですか?
井村
中小企業が使うグループウェアというイメージが市場でも強いから、イケてる会社だと思われにくいんです。たとえばコーポレートロゴを変えるのはどうですか。
山田
えええ、変えたばっかりなのに……!
(*編注)2015年にロゴを変えたばかりなんです。
井村
あとは社名を「キントーン」にしたり、大きな刷新をして、会社の認知度を上げるのもいいと思うんですよね。
山田
なるほどねえ。
中津川
わたしはその意見には反対ですね。日本は多くの中小企業によって成り立っているんですよ。でも、中小企業が使ういいシステムがない。なぜなら、日本のIT産業はプラットフォームが弱いから。
サイボウズにはプラットフォームを開発してほしいですね。誰でも安くて気軽に使えるシステムを販売したら、絶対に売れますよ。
中津川健二さん。自社で15年前からサイボウズのソフトウェアを利用。それをきっかけに株式を保有。現在もっている株のなかでサイボウズが唯一値上がりしている
伊藤
わたしは業績とか全然興味ないんです。わたしのような「業績を知らなくても株をもちたい」という会社のファンを増やせば、自然と株価も上がるのではないかと思うんですよね。
青野社長の考え方や活動が好きで、サイボウズという企業を信頼しています。Twitterの投稿も楽しみなので、やめないでほしいですね。
伊藤恵美子さん。名古屋在住。一般参加OKに惹かれて昨年の株主総会に参加。そのときの雰囲気が楽しくて株主に
田平
僕は株主初心者なので、あまり知識がないのですが、「株主優待」って世間的にも認知度が高いと思うんです。
サイボウズもユニークな株主優待を用意して、株主がメリットを享受できるようにしてはいかがでしょう。
田平貴洋さん。サイボウズの株主になったのはつい最近。株主総会自体、今回が初めて
山田
ああ、たしかに株主優待はないですね。
山崎
昔はあったのよ。
山田
え、なかったはずですよ?
山崎
なんか、変なバッグとか。
山田
それは株主総会のお土産ですよ。変なバッグってなによ!
井村
株主優待は、QUOカードとかじゃつまらないので、株主になれば、キントーンが使えるようになるのはいいと思います。株主でも使ったことない人が多いと思うので。
青野
うん、グループウェアについては検討したいですね。売るほどありますから。
株主ともっと関わりたい、つまり「株主も働けや」ってことですか
山田
次のテーマは「株主の役割について」。今まで、会社と株主は「株価を上げろ」とか「配当出せ」とか、叱咤激励をいただく関係性でした。
もっとチームとして、サイボウズのビジョンに近づく形で、株主とかかわっていけるのではないか、と。
井村
つまり「株主も働けや」ってことですか。
山田
せっかくオブラートに包んだのに……。
杉浦
それぞれでできる範囲でPRはできますよね。知人や友人に教えたりとか。
杉浦文吾さん。13年前に株主に。株主総会に行くたびに、その楽しさに株を買い増ししている
山田
たしかに、いま株主って1万人くらいいるので、みなさんが「サイボウズはいいらしいよ」って言ってくれるだけでもすごい効果ですね。
冨松
たとえば、株主ミートアップを月1回開催するのはどうですか。意見を聞ける機会を増やせば、もっといろいろなアイデアが出てくるかもしれない。
冨松由貴さん。何社も株主総会に行った経験はあるが、サイボウズの株主総会が一番楽しかったため、買い増しをした
山田
月1ですか! みなさん来られますか……?
客席にめっちゃ横に首を振っている方もいますね。
中津川
別に集まらなくていいんですよ。クラウドにすればいいじゃないですか。
山田
たしかに。さすがサイボウズの株主ですね。発想が素晴らしい。
伊藤
わたしはサイボウズの株主になってから、すごく楽しいですね。常日頃ウキウキしながら、いろんなことを考えるんだけど、周囲に株主がいないから共有できないんです。
山田
伊藤さんはわざわざ名古屋から来てくださってますもんね。たしかに株主がもっと話せる場はあってもいいかも。
株主が「社外取締役」になるのはどう?
井村
僕から、「株主の役割」について、ひとつ提案があるんですけど。
山田
どうぞ。
井村
社外取締役を株主から選ぶのはどうですか。同じようにリスクをとって、おまけに会社のことをこれだけ知っている第三者ってなかなかいないと思うんです。
株式の数で決めてしまうといやらしいので、たとえば株主フェスなどで株主同士バトルをして、1位になった人が社外取締役になれる、とか。
山田
おもしろいアイデアですね。
社外取締役については、株主総会でも質問がありました。法で定められる前の時点で、社外取締役を入れる意思はありますか、と。
井村
本当に社外取締役を入れる気あります?
山田
それはもう、ありますよ!
井村
入れずに、東証一部から降ろされるのは株主にとっても嫌なことだから、じゃあ、株主でやりたい人がやるのもいいんじゃないかな、と。
山田
もしかして、いま立候補してますか?
井村
ははは。やれるもんならやりたいですね。
社員は800人だけど、株主が加われば10倍になる
山田
もう時間ですね。最後に言いたいことをどうぞ。
中津川
100年、200年続く長寿会社になって欲しい。それだけですね。
井村
僕がただ一言言いたいのは、「好きです」ということ。
山田
ははは。どきっとしましたよ。
杉浦
サイボウズさんのグループウェアが、業界標準となって欲しいですね。
山田
ありがとうございます、頑張ります。
田平
わたしの周りだと働き方改革や青野社長で認識している人が多いので、商品の認識度を高めて欲しいですね。
今日は妻に子供の面倒を見てもらっているのですが、胸を張って良い時間を過ごせたと言えます。
山田
ありがとうございました。そろそろ終わりの時間が近づいているようなので、最後に私から、今日一番輝いていた株主の方を「サイボウズ公認株主アンバサダー」に選ばせていただきたいと思います。
これは満場一致なのではないでしょうか……。サイボウズ愛の強すぎる井村さんです!
井村
ありがとうございます!
山田
サイボウズ以外の株もたくさん育ててください、ということで、カブの種が入っています。
井村
……。うーん。種は返してもいいですか?
山田
アンバサダーの名刺をお渡ししますので、ぜひアンバサダーとして活躍してください。
井村
ありがとうございます。
青野
最後にわたしから一言。サイボウズの社員は800人ですが、株主の方に加わっていただければ10倍になる。そうすれば世界が変わるかもしれない。
今後とも、新しいカイシャの形をいっしょに考えていきたいですね。
山田
株主のみなさんに、チームの一員だと感じていただけるよう、引き続き頑張っていきます。来年もよろしくお願いします。
そして、株主のから騒ぎ終了後……。
文:園田もなか/編集:松尾奈々絵(ノオト)、藤村能光/撮影:小野奈那子/動画製作:栃久保誠