サイボウズのつくりかた
テレワークのほうが先輩に質問しやすいんです──20卒のサイボウズ新人に「リモート入社の実情」を聞いてみた

2020年度の新入社員が完全テレワークで入社したサイボウズ。
リモート研修で本当に充実した学びを得られるのか、同期と直接会わずに仲を深められるのか、テレワークだと先輩に質問をしづらかったのではないか、メンバーと関係を築くのも大変だったのではないか——?
今回はそんな数々の疑問を持った、社会人2年目の今井豪人が、新人研修を担当した人事部の髙木一史と、20卒の新入社員3人に質問をぶつけてみました。
前半はリモートで実施した研修の工夫を髙木に、後半は研修やテレワークに対する率直な感想を新卒3人に聞いてみました。

新入社員のテレワーク用PCは、情シスと人事メンバーが事前に準備し、新入社員宅に発送。入社式や研修もZoomで開催された
実はそんなに苦労はなかった? 完全テレワークで入社した新人たちのホンネ

僕が社会人1年目の時はリアルで入社したので、研修で同期と仲を深めたり、日々の業務では隣にいた先輩にたくさん質問したり、仕事後には飲みに連れて行ってもらったりして関係性ができました。
でも、完全テレワークだとそんな機会はなさそうですよね……。さぞかし辛かったと思います。

今井豪人(いまい・かつと)。新卒で酒類・食品メーカーに入社。2020年7月にサイボウズに転職し、コーポレートブランディング部に所属。リアルで社会人になった世代


逆に僕らはリアルでの入社を知らない分、これがある意味"当たり前"なんです。なので「困るよね」と心配されても、どう反応していいのかわからない。




リモート研修には、心理的安全性とテキストコミュニケーション力が欠かせない

髙木さん、リモート研修だったからこそ、特別に工夫したことはありますか?

1つ目は「心理的に安心安全で、質問しやすい空気をつくること」。2つ目は「テキストコミュニケーション研修」です。

髙木一史(たかぎ・かずし)。新卒で大手自動車メーカーに入社、労務管理や労政施策に携わる。その後、サイボウズに転職し、労務/育成を担当。人事制度の企画や労務管理、研修の設計をしながら、100人100通りの働き方に挑戦中

心理的に安全で気軽に話せるような雰囲気づくりは、サイボウズでは特に大切にしていることだと思います。リアルとリモートだとどんな違いがあるのでしょうか?

だから、少しでも質問がしやすくなるように、朝と夕方に雑談タイムを設けたり、kintoneで「こういうことに困っています」という書き込みを見たら、人事部のみんなで協力して即レスしたりしていました。

ほぼすべての仕事のやり取りをしているサイボウズのkintone。こちらは「人事⇄20卒新人」の相談スペース。新人がなにか書き込むと、人事をはじめさまざまなメンバーがコメントを残す

続いて、2つ目の工夫である「テキストコミュニケーション研修」についても伺えますか?

社内に製品マニュアルを作成するプロの書き手がいるので、彼らに監修してもらって、新しい研修プログラムを作りましたよ。
リモート研修のメリットは「復習のしやすさ」と「物理的な制限のなさ」

実際やってみて、オンラインならではのメリットとデメリットはありましたか?

Zoomで録画して、あとで好きなタイミングで復習することもできますからね。



だから、2021年度の研修では、オンラインを基本にしながらも、リアルで関係性を構築するワークショップも部分的に取り入れたいと思っています。もちろん、これはコロナの情勢を考慮しつつ、しっかりと感染対策を取った状態での話ですが。

僕もサイボウズは中途リモート入社なのですが、入社初日にチームメンバーがタイミングを合わせて出社してくれて。それがスムーズな関係構築につながったように感じています。



今年は新人研修のスケジュールとZoomのURLを全社に共有して、社員なら誰でも参加できるようにしたんです。すると、新人含め134人ものメンバーが参加した研修もありました。
物理的な収容人数に限界のないオンライン研修をしたからこそ、新人以外の社員にもニーズがあると気づけたことも面白かったですね。

Garoonで研修の予定を全社公開。すべての研修で新人以外のメンバーが参加した
オンライン研修の盛り上がりに一役買った「実況スレ」の存在


研修の内容がよかったことは何となくわかったのですが、ぶっちゃけ盛り上がったんですか?
同期とくだらない話で盛り上がって、仲良くなることも新人研修ならではだと思っていて。でも、オンラインだとそれが難しいんじゃないかな、と。


川平朋花(かわひら・ともか)。マーケティング本部に所属。主にGaroonの製品プロモーションを担当


新人研修を見ている先輩メンバーや中途で最近入社したメンバーが一斉に書き込んでいたので、同期以外の人と交流できたのも楽しかったですね。

kintoneに作成された「実況スレ」の様子。参加者同士がリアルタイムで気軽に感想を書いたり、関連しそうな情報を共有しあったりしている

でも、実況スレで気づきや疑問を書き込むことで、参加者全員で学びを共有できる楽しさがあって、前のめりに受けることができました。
一方通行になってしまいがちな講義でも、双方向のコミュニケーションが生まれるので、すごくいい仕組みだと思いますね。

鈴木佳苗(すずき・かなえ)。営業本部パートナー第1営業部。大手クライアント様のパートナーとして販売戦略を考える業務を担当
オンラインのほうが質問する側・される側ともに気を遣わずに済む?

自分の新人時代を振り返ると、事あるごとに近くの先輩に質問しながら徐々に仕事を覚えていった記憶があります。
最初は気軽に質問できる環境が大事だと思うのですが、オンラインだと質問のしづらさはありませんでしたか?



岡田陸(おかだ・りく)。人事本部採用育成部新卒採用担当。主に新卒採用業務に携わる

一方、オンラインだと先輩たちのペースで返してもらえるから、あまり気を遣わないで済むんですよ。

相手の都合を考えると、リアルでの質問のしづらさもあるかもしれない。

チームメンバー全員が見るものなので、空いている人がその時々に回答してくれるんです。かんたんな内容ならすぐに返信が来るので、打ち合わせを待たずに仕事を進められるのも助かりましたね。




テーマごとに立てられているスレッドを調べれば、質問せずとも、過去にメンバーがどう対応したのか、わかるケースも多くて。

サイボウズのkintoneでは、テーマごとにスレッドを立ててやりとりがされるため、あとから参加したメンバーでもキャッチアップしやすい
「土台となる教育」に加え、「自分たちでも自由に学べる環境」の2段構え


だから、積極的に新人のために情報の導線を整理したり、みんなで「こういう使い方があるよ」ってシェアし合ったりしていて。温かい対応だな、と感じています。


多くの日本企業では、新人をゼロから教育する仕組みがありますよね。でも、新人は「こういうノウハウが知りたい」と思ったときに質問できる相手は、大半が直属の上司だけなんです。
一方サイボウズでは、自分で検索して「この人はこんなやりとりしているから、参考にしてみよう」と、部署を問わずいろんな人から学べる。


ノウハウを常にアップデートし続けていく姿勢があるので、「これ聞いたらアホだと思われるかな」と不安を感じずに、自分の疑問を率直に伝えやすいんですよね。

オンラインでは時間と距離の壁がなくなり、さまざまな可能性が広がる


コロナ禍前からオンラインでの商談もあったそうですが、地域のお客さまだと「実際会って話してもらわないとわからない」という声が多かったんです。
でも、コロナ禍で世の中の風潮が変わっていくにつれて、オンラインの商談も受け入れてもらいやすくなって。結果的に広範囲で、たくさんの商談ができるようになったみたいです。


サイボウズの東京オフィスでは、部署ごとにフロアが分かれていたり、同じフロアでも開発部門はセキュリティの問題で別のドアがあって気軽に入れなかったりするんです。
でも、kintoneだと物理的な隔たりがないので、ふらっと雑談ができる。他部署のメンバーに自分の書き込みを拾ってもらったり、逆に他部署の動きを覗いたり。オンラインだからこその距離の近さはあると思いますね。

面接で「会社の雰囲気は?」「〇〇部の新卒社員はどんな仕事をしていますか?」とよく聞かれるんです。kintoneで日報・分報を見にいけるので、他部署のことであっても説明しやすいなと。
すべてのコミュニケーションがオンラインに移行した結果、他部署で何が起こっているのかがより見えやすくなり、会社全体について説明しやすくなっている面があると感じています。

オンラインとリアル、どっちが良い・悪いはない。それぞれを組み合わせ、働きやすい環境へ


先輩が無意識にしていることって結構あるじゃないですか。お客さまをお待たせしないようエレベーターのボタンをさっと押すとか、誰よりも先に動いてドアを開けておくとか。
本人にとっては"当たり前"なことだと、テキストに残らないので、リアルで観察しながらじゃないと学べないと思いましたね。


一方的に名前を知っている先輩は多いんですけど、面識があって密に話す人は少ないんです。その意味でも、人間関係の構築はやっぱりリアルのほうがスムーズで、仲良くなるのも早い気がしますね。





「仕事に滞りないコミュニケーションがとれる」という観点では、仕事に対する考えやプライベートな一面も日報・分報を通じて知ることができる。
だから、リアルで会ったことがなくても「あれ、結構この人のこと知ってるぞ?」と思えて。そうなると、質問や相談もしやすかったり、初めてのザツダン(いわゆる1on1のようなもの)も盛り上がりやすい気がしますね。

「分報」や「ザツダン」も上手く活用しながら、それぞれが心地よい距離感で、職場の人と関係性を築いていけるといいですね。

「どっちが良い・悪い」という話ではなく、それぞれの良さを組み合わせながら仕事をしやすい環境をつくる。そうした試行錯誤が大事になるんだな、と。
みなさんご協力いただき、ありがとうございました!
企画:今井豪人(サイボウズ)執筆:水玉綾 撮影:栃久保誠 編集:野阪拓海(ノオト)
変更履歴:新入社員のテレワーク用PCの準備は、情シスと人事メンバーで一緒に行った作業のため、下記のように表現を変更いたしました。(2021/3/10 15:10)
変更前:新入社員のテレワーク用PCは、人事メンバーが事前にセットアップし、
変更後:新入社員のテレワーク用PCは、情シスと人事メンバーが事前に準備し、
SNSシェア
執筆

水玉綾
フリーランスの編集者・ライター。人・組織の転機のインタビューや、無意識の言語化、内的変容のお手伝い屋さん。元CRAZY MAGAZINE編集長。活動テーマは“well-beingな働き方と組織論“。
撮影・イラスト

編集
