多様性、なんで避けてしまうんだろう?
「超男性的」な社風は、男性も苦しめる
長時間労働や、激しい競争、チームメンバーに弱みを見せないことが当たり前な社風──。
この、いわゆる「超男性的」な社風とは、どういったものなのでしょうか。また、それはなぜ有害で、どのように変われると良いのか。
組織行動及び人的資源分野の専門家である、カリス・チェン博士にサイボウズ式編集部のアレックスが取材しました。
※この記事は、Kintopia掲載記事「Everyone, Including Men, Suffers in a Hyper-Masculine Work Culture」の抄訳です。
有害な職場環境を知る手がかり
ほかにも噂話、裏切り、陰口、手柄の横取りなども行動に表れるネガティブなサインとして警戒すべきです。
こうしたわかりやすい兆候だけでなく、信頼感や連携の欠如、会社の問題を口に出すことへの抵抗感など、目立ちにくい兆候もあります。
同様に、社員のエンゲージメント調査でも労働環境の質を判断できます。社員が仕事に没頭できない、あまり意欲が湧かないというならば、職場環境に問題があるのかも知れません。
「はっきりと意見を言うべきだ」と伝えるだけでは不十分なのがやっかいです。多くの社員が不満を抱えていても、実際に認知できるほどパフォーマンスが低下している社員は数名程度で、誰も率先して問題提起をしようとしない可能性もあります。
そこで最初に取り上げるのがボディーランゲージです。なかには口では「意見をどうぞ」と言いながら、実際に社員が問題提起をすると否定的なボディーランゲージが出てしまうマネージャーもいます。
通常は第一歩としてマネージャー陣の行動を変え、その後、組織の変化に着手します。リーダーが意見を受け入れ、問題解決ができるようになったら、こうした事例をエビデンスとして活用して、ほかの社員にも問題提起を促します。
こうした行動パターンを実行できれば、ある問題が環境に起因するのか、個人に起因するのか分かりやすくなるはずです。
過度に男性的な社風は、誰も得をしない
2つ目は激しい競争です。個人主義的な傾向が強く、アイデアを分かち合うのはまれで、あまり互いを助け合おうとはしません。
3つ目は決して弱点を見せないことです。常に力と自信がみなぎっているように自分を見せたいと考えます。
4つ目は精神力と体力の顕示です。いっさい休憩を必要としないロボットさながら、長時間働きます。
男性は長時間労働や仕事最優先を強いられ、「男なんだからしっかりしろ」と言われ続けるプレッシャーを感じるようになります。
ただ女性やマイノリティの状況の方が、さらに深刻です。この競争に参加せざるを得ないだけでなく、勝ち目がありそうなら、激しい反発に合うかも知れません。
「女なんだから、もっと理解と思いやりを示したらどうだ。そんなに力んで自己主張しなくてもいい」と思われたり、言われたりします。
また失望、悲哀、不安といった負の感情を経験する人もいます。こうした感情が山積して職場で解放できないと、家族への八つ当たりのような形でほかの場所で発散されます。
ひとつ指摘したいのは、過度に男性的な職場にいる社員が常に居心地が悪いと感じているのではない点です。
よくあるのは、ジェットコースターのような感情の浮き沈みで、好調と不調を繰り返します。不調だと非常に不機嫌になり、意欲や仕事の遂行能力の低下といった影響が出てきます。
構造的なダブルスタンダード
感情を表に出さず、いつも強気で自信に満ちて、同僚の男性よりも頑張っている女性にみなさんも心当たりがあるでしょう。元実業家の米国人女性エリザベス・ホームズのように、同様の地位にある男性を真似て、低い声で話すような人までいます。
政治家として男性的なコミュニケーションスタイルで知られるヒラリー・クリントンも批判にさらされました。彼女の行動はメディアの標的になっていましたが、男性のリーダーが同じように行動していたら、受け入れられ、普通だと考えられたでしょう。
一方、女性は献身的に家族の世話をする役割を果たすようにと言われて育ちます。このような構造的なダブルスタンダードが職場にも持ち込まれるのです。
信頼と協調を重んじる
有害な男性的行動をしない男性も多く、この話題が出ると自分が攻撃されていると感じる人もいるでしょう。こういう男性には、どんなふうに話題を振ったらいいでしょう。
職場環境はチームの実績や健康に影響し、相手の男性が問題の一因でないとしても、長期的に見れば影響は彼自身にも及ぶのだと説明します。
過度に男性的な社風が業績悪化と離職率の上昇を招くことを示す研究結果はたくさんあります。たいていの場合、そこから会話を始めるといいと思いますよ。
マネージャーと話をするには、まずマネージャー自身が親近感を持ってもらう必要があります。マネージャーには、できるだけ頻繁に部下と接点を持つようにアドバイスしたいですね。
仕事への意欲が少しでも低下したり、普段より発言が少なかったりすれば、すぐに根本的な原因の究明に着手できます。
「匿名」といいながら、実際には社員支援プログラムに寄せられた内容はマネージャー陣に報告されていて、報告した社員が反感を買うという問題が多発しているので、必ず匿名になるように気をつけてください。
非公式の相談先を設けて社員自らが管理している革新的な企業もあります。この方法だと、もっと対等ですね。
そしてカリスマや自信などに注目するのもやめましょう。カリスマや自信では仕事の遂行能力は予見できませんから。
仕事の遂行能力を予見するのは、信頼と協調です。短期的には、人を蹴落とせば成功するかも知れません。でも数十年に渡って成長し続ける組織を目指すならば、インクルーシブで対等であること、そして一体感こそが何よりも大切です。
社員が心理的に安全だと感じれば、率直な意見が出てきて、さまざまな問題をより早く解決できます。そして事業環境も上向き、最終的には業績も向上します。これこそインクルーシブな社風はビジネスにも有効だという証拠なのです。
サイボウズ式特集「多様性、なんで避けてしまうんだろう?」
ここ最近、よく耳にする「多様性」という言葉。むずかしそう、間違った言動をしそうで怖い——。そんな想いを抱えている方もいるのではないでしょうか。サイボウズでも「多様性」を大事にしていますが、わからないこともたくさんあります。この特集では、みなさんといっしょに多様性の「むずかしさ」をほぐし、生きやすく、働きやすくなるヒントを見つけられたらいいなと思うのです。
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