インターン大学生の疑問
「他人によく見られたい」っていけないこと? 周りの評価に振り回されるメリットだってある──さわぐちけいすけ
人は人、自分は自分。そう捉えられたら、どんなに心が楽になるか――。
自分以外の「誰か」からの評価や見られ方に振り回されて、不安になったり、焦ったりしたことはありませんか。
『サイボウズ式』で働く大学生インターンの佐藤萌音も、そんなふうに感じていました。 自身の就職活動中、周りの目や声から影響を受け、就活を自分ごとにできなかった経験があります。
多様な選択肢がある今、一人ひとりが自由に人生を取捨選択していくには、自分と他人を割り切って考える力が必要なのではないか――。 就活をしながらそのことに気づいたのは、漫画家のさわぐちけいすけさんの書籍を読んだのがきっかけです。
さわぐちさんの作品で描かれる、他者との境界線を大事にし、相手に期待しすぎない考え方について、実際にさわぐちさんにお話を伺ってきました。
「周りの評価」や「振り回されること」にもメリットはある

さわぐちさんの書籍『人は他人 異なる思考を楽しむ工夫』(KADOKAWA)を読んで、自分も他人に期待しすぎない自立した姿勢を身に付けたいなと思いまして。

さわぐちけいすけ。漫画家、イラストレーター。岩手県出身。著書に『人は他人 異なる思考を楽しむ工夫』『妻は他人 だから夫婦は面白い』(KADOKAWA)など。
連載も多数持つ。

たとえば、ご自身が病院の事務職員からフリーランスになられたとき、周りからの声や見られ方は気になりませんでしたか?

だって、事務職からフリーランスに転身するときに反対してくるということは、「事務職でいた方が安定した人生を過ごせる」って思っているということですよね。ぼくとは考えが違いすぎて、そういう人たちの声はあまり気にならないです。


自分の好きなことを選べばいいのに、なぜか他人からの見られ方を気にしてしまって。
佐藤萌音(さとう・もね)。サイボウズ式編集部のインターン生。現在大学4年生で、2019年4月に就職を控えている。就職活動を思うように”自分ごと”にできなかった経験から、他者の評価や解釈から自由に生きる方法についてお話を伺いたいと考えた。

どんな理由であれ、その人にとって大切な選択の基準であれば、誰も責めてしかるべきではないと思うんですが。




佐藤さんは他者から影響を受けることに悩んでいますが、逆に他人の話に全然聞く耳を持たなくて、失敗ばかり繰り返す人だっていますよね。他人の意見を聞けるっていうのは長所でもあるんです。
そう考えると、「周りの評価」や「振り回されること」にもメリットはあるはず。

他人が気になるのは、自分が評価や視線をどうにかできると期待しているから



自分の活動に対して、怒る人もいれば、好奇の目を向けてくる人もいる。いろいろな人がいて、でもそれってどうしようもないんです。自然災害のようなもの。
だから、私は他人から良い評価をされたい、良く見られたいって一切期待しないんです。唯一コントロールできるのは自分のことだけじゃないですか?



さわぐちさんは、いつからこうして自己と他者をわり切れるようになったんですか?





そして、そうした大事な人を長く大切にするために、あえてその他の人とは一線を引く、そんな人付き合いをしたいということでした。
よく、「人と仲良くするための方法を教えて欲しい」という内容を相談されるのですが、私の場合はむしろ逆です。どうすれば他者との境界線を保つことができるか、という視点で人間関係を考えていましたね。
感情は“燃料”、理性は“道具”として使う

たとえば、相手が落ち込んでいたら、私は会って励まそうとしてしまうんです。相手からは「あのときはそっとしておいてほしかった」と後で言われて……。
それでも「相手に優しくしたい」という思いから、同じようなことを繰り返したことがあります。

次に同じようなことがあったら、「この前『そっとしておいてほしい』って言ってたし、今度は放っておこう」と判断することはできない?




私は自立って、依存先をたくさん持つって意味だと考えています。




私もね、自分がすごい怒りっぽいのを自覚してるんです。だからこそ、その怒りのエネルギーをどこにどう使うか考えてます。感情を“燃料”として上手く使うのに必要な“道具”が理性なんです。


相手に感情を押し付けてしまうのは、その人を「役割」や「肩書」で見ているから

それが受け入れてもらえないと、ちょっと不満な気持ちになってしまって。


さわぐちさんの『妻は他人 だから夫婦は面白い』(KADOKAWA)に「相手が妻(夫)だから◯◯を要求する権利があるという考え方は大変危険だ(62ページ)」、と書いてあったのを見てハッとしました。




もし私が佐藤さんの友達だったら、「佐藤さんは良い人だけど、ちょっと介入しすぎかな」って感じそうです。でも、その気遣いを喜ぶ人、助かると感じる人もいると思っていて。相手によってその感じ方は異なるので、「こうしたら良い関係を築ける」という「正解」は存在しないんです。


今、自分が相手にぶつけているのは、必ずしも相手にとっての優しさではないと理解した上で、相手と話し合ってみては?


理解したいっていう欲求自体はいいけど、それを相手に押し付ける権利はないんです。
そもそも他者から影響を受けるのは、人付き合いの醍醐味

最後に、自分と他人とを分けて考えるのが難しい人、程度の差はあれ他人のことがどうしても気になる人は、どういった「トレーニング」をすると良いでしょうか?

例えば、「今回は何が何でも自分の判断で決める」「ここに関しては恋人の意見が最重要」「今回は一度、友人の薦めに従ってみよう」というように、状況に応じて気にしたい相手が違ってもいいわけです。
そうすれば、多くの意見に惑わされず「他人の意見を聞きつつ、自分で選んだ道」を進めるのではないでしょうか。


だけど、人の影響を受けるって、人付き合いの醍醐味だとも思いませんか?


きっとその方が楽しいはずです。
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