サイボウズのつくりかた
「サイボウズは、大企業病になりかけている」──チームワークの会社なのに実は縦割り主義? 中途社員の本音を聞いてみた
「自由で働きやすい会社」。サイボウズは世間からよく、そんなふうに言われます。ただ、それが本当なのかどうかは実際に働いてみないとわかりません。
「今のサイボウズには、働きづらいところがないのだろうか」。その問いをテーマに、大企業からサイボウズに転職してきた社員3名(小林悠、三木佳世子、林田恵美)による鼎談(ていだん)をお届けします。
「サイボウズは大企業病になりかけている」「中途社員ならではの寂しさがあるんだよね」。今回は、そんなサイボウズのリアルな課題から、社員が実践している解決法までを語りあいました。
誰かが「自分の働き方」を決めてくれるわけじゃない
ただ、実際のところはどうなんだろう? と思いまして、ぜひ本音で語っていただきたくこの座談会を設けました。
中途入社したあとに、ギャップはありましたか?
最初は「本当にそんなに働きやすいのか?」と半信半疑でしたが、入社して一つひとつの仕事を経験するうちに、本当だったんだなって実感していきました。

三木佳世子(みき・かよこ)。チームワーク総研アドバイザー。テレビ局のディレクターを経て、2018年8月にサイボウズに転職。前職のディレクター時代に、代表取締役社長の青野慶久と出会う。青野から「サイボウズの働き方」の話を聞いたことが、サイボウズに興味を持つきっかけとなる

ただ、その分「自立」を求められるので自分が決めたことは、自分で責任を取る必要があって。

林田恵美(はやしだ・めぐみ)。西日本営業部に所属。2018年7月に、大手食品企業から転職した。30人規模の大阪オフィスに在籍し、そこで形にした成果を東京本社に発信している。本社にある「営業戦略部」を兼務しながら、大阪オフィスと東京本社とのプロジェクトを、うまく橋渡しできるような役割を目指す。今回は大阪オフィスからリモートで参加

だからこそ、若手がほかの大企業では課長レベル以上じゃないとできないようなことにも挑戦しやすいんだな、と感じます。
小林悠(こばやし・ゆう)。ビジネスマーケティング本部BPM部。2018年1月入社。新卒だけでも1000人を超える、いわゆる「大企業」の電機メーカー出身。入社後すぐに、前職で得たスキルを伝える勉強会を開催して社内各部署から30名を動員した。また、中途社員を集めたランチ会を開くなどして、社員同士が交流できる機会を積極的につくっている
サイボウズは大企業病になりかけている?
でもそれを東京の本社に伝えようとすると、とたんに動きが遅くなる。「違う部署の話だから、そっちに振って」とか。


入社した次の日、一緒にランチを食べに行く人がいなかった
一方、私の部署では「これがわからなくて困っている」「こういう風に進めてます」という情報もグループウェアで細かく共有しながら進めます。
誰かがそのコミュニケーション作法を教えてくれるわけではないので、慣れるまで苦労しました。

僕も転職した当初、「中途社員ならではの寂しさ」を感じていました。




このまま社内のつながりが少ないと、サイボウズもすぐ大企業病になってしまいそうだな、と危機感を覚えました。
課題を目の前にしたなら、自分から動き出さないと何も変わらない
社内の問題を見つけたら、みなさんはどうされるんですか……?


社内SNS上で「ランチおじさん」の活動をする小林さん

でもその結果「他部署で何が起きているのかわからない」「どんな人が働いているのかわからない」という状況になってしまった。
「自分からちゃんと動かないと、何も変わらない」と思い、勇気を出していろいろな部署の人をランチに誘うようにしたんです。

そうすると、どんどん他部署とのつながりが増えていって。

活動がどんどん認知されていって、転職した1年後にはサイボウズ社内の年間MVPを決める「サイボウズオブザイヤー」で新人賞をもらいました。「この方向で進んでいいんだ」と自信を持てましたね。

※サイボウズオブザイヤー…サイボウズ社内の年間MVPを決めるイベント。社員が「ありがとう」を伝えたい人にコメント付きで投票し、一番多かった人が選ばれる仕組み。他部署とのつながりをつくる活動が評価され、小林さんがMVP受賞。
三木さんが企画した「中途社員のためのツール勉強会」では、「対面とオンラインコミュニケーションの使い分け」「業務のやりとりに絵文字は使うか」「質問するときは公開スペースのほうがいいのか」などが話された

あとは、同じ時期に入社した中途のメンバーと一緒に、人事に対して「中途社員へのフォローが手薄なんじゃない?」と伝えました。

人事や情シスによってオンボーディング改善が行われ、本部長会議で起案された
そこで、まずはスピーディーに動ける関西チームだけで、お客様のフォローを部署横断でできるようなプロジェクトを立ち上げました。

林田さんが立ちあげた「関西一気通貫プロジェクト」は、全社員に見えるようになっている
東京本社でも「お客様の行動を部門横断できちんと把握し、フォローしていこう」という方針が広がり、今はいくつも部門横断プロジェクトが立ち上がってますね。
課題を見つけて改善できるのは、社内に心理的安全性があるから
ふつう中途社員って「目をつけられないようにしよう」「まずは業務をちゃんとできるようになってからそういう改善はしよう」と思ってしまいがちだと思うのですが……。

社内SNSのキントーンで問題だと思っていることをつぶやけば、共感してくれる人や解決しようとする人が集まるんです。

でもサイボウズはキントーンというオープンな場所でみんながつぶやいているから、自分の気持ちを表明しやすいと感じています。

でも、声を上げればちゃんと改善する雰囲気がある。だから、みんな日々当たり前に課題解決している気がしますね。
でも「楽しく仕事をしよう」というサイボウズが、大企業病になってコケちゃうのは本当に嫌。だから、これからも自分たちのできる範囲で努力していきたいです。
文・流石香織/編集・松尾奈々絵(ノオト)/撮影・二條七海/企画・熱田優香
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執筆
流石 香織
1987年生まれ、東京都在住。2014年からフリーライターとして活動。ビジネスやコミュニケーション、美容などのあらゆるテーマで、Web記事や書籍の執筆に携わる。
撮影・イラスト
二條 七海
写真家→ホームレス→LIG.inc→フリーランスフォトグラファー。 現在は著名人や芸能人の人物撮影を中心に行っている。 多様な作風が持ち味。好きな食べ物はハンバーグ。
編集
