社員を尊重するリーダーがいる or 世界最高の福利厚生──あなたが幸せに働けるカイシャはどっちですか?
仕事と幸せがリンクすれば、より働きがいを持って会社で働くことができます。ですが、幸せと仕事は相容れないものとも考えてしまいがちです。
仕事で幸せを感じるには「目的」「尊重」「公平さ」が大切と話すのは、仕事における幸せをテーマに創立されたGreat Place To Work(以下、GPTW)のマイケルC.ブッシュ CEOです。
「社員が幸せな会社」とは何か? 全員参加のイノベーション、透明性のある組織、公平で適切なフィードバック──。Kintone Corporation(サイボウズU.S.)CEOのデイブ・ランダが掘り下げます。
※この記事は、Kintopia掲載記事「Purpose, Respect, Fairness: The 3 Ingredients for Happiness at Work」の抄訳です。
仕事で幸せになるには、目的・尊重・公平さが不可欠
GPTWのデータによれば、社員にすばらしい体験を提供している企業は、そうでない企業よりも業績が良いんです。
社員に平均的な経験を提供している創立から間もない企業でも、最初の5~7年間は良好な業績を残せます。
ただ20年も経つと、そうはいきません。長期間にわたって企業が優れた業績をあげられるかどうかは、社員への接し方に左右されます。
目的は、新しく入社する社員が組織の目的を共有しており、同じような価値観を持っていることです。
尊重は、「全社員が尊重されていると感じる」ように、組織のリーダーがリアリティのあるコミュニケーションを取ることです。
公平さは、最も大切です。社員は、組織内での立場に関係なく、公正に扱われるべきです。
1人では成し遂げられない目的に向かって、いっしょに仕事をする。同僚と親友になる必要はないんです。
相手を思いやれる人と仕事をすると、会社に対する誇りが生まれますし、お互いをカバーして最善の仕事ができます。
これは、会社のロゴ入りTシャツを着ることで感じる連帯とは違います。ボーナスなどの金銭的報酬や福利厚生では生み出せない力を持つ会社、それが「働きがいのある会社」なのです。
イノベーションは「全員参加」から生まれる。1人で偉業を成し遂げた人物はいない
サイボウズU.S.では、それをチームワークと解釈しています。チームワークをよくするために、組織ができることは何でしょうか?
チームワークがよく機能しているチームでは、メンバーは自分の意見がチームの成果に貢献していると感じています。
効果的でないチームでは、少数のメンバーが「ほかのメンバーは自分より能力が劣っている」と考え、最善策ではなく、手っ取り早い次善の策をとってしまうんです。
このチームに欠けているのは、イノベーションです。画期的なイノベーションは、メンバー全員が参加することで生まれるんです。
(2)先週に起きた最もよかったことは?
新しいアイデアをブレインストーミングをするときは、全員の参加が望ましいです。
これまでの調査でも、最も優れたチームワークがある企業は、全員参加のイノベーションの原則を貫いていることがわかっています。
世間では、イノベーションを起こすのは、個人だと考えられています。わたしたちの見方が間違っているのでしょうか?
わたしたちの調査で、優れたイノベーションは集団から生まれることがわかっています。
リーダーは、個人を後押しするのではなく、誰でもイノベーターになり得ると考えることが非常に大切です。全員が意見を求められ、試行錯誤を繰り返し、仮説の検証に参加すべきです。
逆に、組織にヒーローのような人物がいて、新しいアイデアを披露したとします。すると、本人以外は、「自分にはメリットがなさそうだ」と感じてしまうのです。大多数の人は自分はイノベーションに必要とされていないと思い、参加しません。
マーベルの映画に出てくるヒーローが、孤独で幸せな生活を送っていないのと同じです。
透明性と組織の目的が結びついていれば、意見はフィードバックとなり、個人への批判にはならない
最近「根本的な透明性」という言葉をよく耳にします。GPTWの調査で透明性と幸福の直接的なつながりは見えてきましたか? 組織の透明性が増すと、社員の幸福感も高まりますか?
歯に衣着せぬフィードバックが最善だという人に限って、フィードバックの受け手になる機会はほとんどないからです。権力の座にある人には都合が良くても、そんなフィードバックで意欲が向上する人はいません。
また、仮にわたしが「キャッシュフローがすべてだ」と正直に伝えたら、社員のモチベーションが上がるでしょうか? 目的のない透明性に大した価値はないんですよ。
透明性と目的が結びついていれば、「仕事ぶりに不満がある」と指摘された時、「共通の理想を達成するために十分に力を発揮していない」という意味だと理解できるでしょう。
それは個人に対する批判ではなく、フィードバックとして受け取ってもらえます。
透明性が全体の幸福に影響を与えるのは、透明性が公平に発揮されている時だけです。
リーダーが、自分以外の人に組織の目的を話しているのを聞いても、受付係の大切さを自分に向けて語ってくれなければ、透明性は保たれても、幸せにはつながりません。
ミレニアル世代はブランドよりも「社員の職場体験」を重視する
調査によれば、ミレニアル世代が就職先を決める決定打は「社員の職場体験」でした。
「Googleというブランドがあるから、Googleで働きたい」という新卒のエンジニアはいません。ブランドより、体験なんです。
約70%の企業で、社員の職場体験を改善する動きが見られます。残りの30%は、気にもかけていません。
社員が幸福を感じる環境をつくりたいなら、リーダーに働きかけましょう。
シリコンバレーの企業では、時短で午前10時から午後14時まで意義のない仕事をして高い給料をもらうより、より少ない給料でもフルタイムで意義のある仕事をしたい人がたくさんいます。
もちろん組織の価値観と目的に見合った福利厚生は必要です。たとえば、公正を重視するならば、会社の育児・介護休暇制度に現れてくるはずです。
特にミレニアル世代は、こういった流れに共感します。挑戦的な課題を与え、フィードバックを与え、意見に耳を傾け、自分を育ててくれるリーダーの下で働きたいと願っているんです。
若い世代は、プラットフォームを使って「Aさんのもとで働くことになった。Aさんについて情報があれば教えてください」と呼びかけるのが得意です。
ここを理解している企業ならば、採用プロセスの中で、Aさんについて教えてくれるでしょう。たとえば「Aの部下の90%が、彼女の下で長く働きたいと回答しています。理由は…」といった具合に。
企業はそういう方向に向かっています。
危機の時こそ「人間らしさ」という共通項に着目しよう
これは、医療や物流など生活に欠かせない分野で働いていても、在宅勤務であっても、今回のような危機的状況にあっても変わりません。
お金はよく話題に上りますが、順位にすれば最下位なんです。お金は、わたしたちが直面する問題の解決に役立つ場合もあって、話題にしやすいです。
だからといって、一番の心配ごととは限りません。リーダーはそこを理解する必要があります。
少なくとも週に1度、ビデオ会議でメンバーと会話することをおすすめします。形式ばったものではなく、リアルな内容を盛り込むとよいです。
例えばCEOが「コロナの影響で遠方に住んでいる母親に会えなくて心配だ」と言ったとします。社員は、リーダーが自分と同じ境遇にあり、人間らしさという共通項があると確認できるのではないでしょうか。
質問を募り、社員の不安に耳を傾け、いっしょに解決策を考えてください。孤独を感じる社員がいれば、1日数回、15分ほど時間をつくって、リモートでお茶でもしてみてください。ヒントが得られるかもしれません。
このように、毎週コミュニケーションをとっているリーダーには、得るものがあります。あまりに多くのリーダーが定期的にコミュニケーションをとっていないのには、驚かされますよ。
コロナの影響が出るようになってから、以前より私生活の話題がずいぶん多くなりました。それもあって、オンライン飲み会や少人数でのブレークアウトセッションを取り入れ、みんなからは好評です。
素晴らしい取り組みに拍手を送ります。ぜひほかの会社でも取り入れてほしいですね。
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高橋団
2019年に新卒でサイボウズに入社。サイボウズ式初の新人編集部員。神奈川出身。大学では学生記者として活動。スポーツとチームワークに興味があります。複業でスポーツを中心に写真を撮っています。