管理職になるということは
「自分の仕事に注目してくれる」リーダーがいると、メンバーはうれしい——チームの肯定感が高まれば、自然と業務はすすむ

もしあなたがリーダーなら、チームの仕事が滞ってしまったとき、どのような行動をとりますか?
溜まった業務をメンバーに分配したり、「足りない分は自分がカバーすればいい」とひとりで踏ん張ったり……。つい「業務をさばくこと」に目がいきがちなのではないでしょうか。
しかし、會澤高圧コンクリート株式会社の畑野奈美さん曰く、「チーム全体の肯定感が高まれば、自然と業務はすすむ」のだそう。
どうすれば、チームの仕事が自然とすすむ仕組みをつくれるのか? リーダーに求められる本当の役割とは? 畑野さんの「チームづくり」から紐解いていきます。
家庭崩壊の危機。崖っぷちで社長に頼みこんだ「在宅勤務」

でも周りを見ていると、メンバーへの仕事の振り分けがむずかしく、自分で抱え込んでしまうリーダーが多そうだと感じて……。
いつか自分がリーダーになったら、どうやって周りを巻き込めばいいのだろう? と思ったのが、今回の取材のきっかけです。


畑野奈美(はたの・なみ)。1982年北海道帯広市生まれ。北海道苫小牧市に本社を置くコンクリートの総合メーカー・會澤高圧コンクリート株式会社で、常務取締役、未来開発本部 本部長を務める。2012年よりkintoneを活用した業務改善に取り組み、社内の作業効率アップに寄与


当時は、毎日夜中まで働いて、一回家に帰ってごはんを食べて、また職場に戻る日々でした。
そんなわたしを見て、主人に「仕事を辞めてほしい」って言われてしまったんです。



じゃあどうする? ってなったとき、社長に「家庭崩壊の危機なので、在宅勤務させてほしいです。それが無理だったら、これ以上働けないかもしれません」と相談しました。




すると社長が「いいよ。パソコンがあればどこからでも働けるもんね」とまさかのOK。「え、いいの?」って拍子抜けしました。
パソコンと持てるだけの荷物を持って、その日から在宅勤務をスタートしました。


そこから少しずつ、在宅勤務という選択肢が社内に広がり始めて。
子育てや親の介護など、いろんな境遇を抱えながらも、仕事を続けられるメンバーが増えたことはすごく嬉しかったです。
子育てしながら働いて、初めて感じた「職場への怒り」



「みんなに迷惑をかけて申し訳ない」という罪悪感で潰されそうになりながらも、一生懸命チームのために働いてくれます。


そうすると、ほかのチームリーダーから「おたくのチームって、全然仕事していませんよね」って言われてしまったんです。
その状況に、ものすごく腹が立って。



いろんな境遇を抱えながら一生懸命に働くメンバーのがんばりを、もっと周囲のチームに知ってもらいたい。
それと同時に、わたし自身もリーダーとして、メンバーの働きを正しく評価したいと思いました。
手伝ってほしい業務はあるけど、メンバーに割り振る余裕がない

お願いしたい仕事があっても、タスクを分解して振り分けると、かなり工数がかかってしまう。
「じゃあ、メンバーに自分からタスクを選んでもらおう!」ということで、「お仕事ビュッフェ」を始めました。


自分のキャパシティや関心にあわせて仕事を選び取れるので「お仕事ビュッフェ」と名付けました。


「お仕事ビュッフェ」を始めて、畑野さんのチームの仕事はどうなりましたか?

それと同時に、メンバーの肯定感も高まったように感じます。


チームの仕事をすすめるには、まずこの肯定感をつくることが大事だと思います。

子育てや介護をしながら働くメンバーは「肯定感」を求めている

「自分の仕事を増やしたくないから、タスクをとらない」という人はいましたか?

でも、ほとんどの人が「自分にできることがあればやりたい」と言ってくれました。
きっと、誰もが少なからず「自分は会社に必要とされている」という実感が欲しいと思うんです。



わたしにも4歳の娘がいるんですが、急に「お子さんが発熱したので迎えに来てください」と、幼稚園から呼び出されたことが何度もありました。
もうね、みんなの苦しさがすごくわかるんですよ。


「自分はいないほうがいいんじゃないか」「役に立っていないんじゃないか」
そんな葛藤を抱えながら、みんな一生懸命働いてくれます。


「お仕事ビュッフェ」のように、チームの仕事をみんなで協力できる仕組みがあれば、自分もメンバーも安心だなって思うんです。
「評価されづらい仕事」をがんばるメンバーの存在を肯定する


「そうなんですよ! うちのチーム、みんな本当にがんばってくれるんです!」って、もう嬉しくてたまりませんでした。



どんなにがんばっても「それがお前の仕事だろ」って言われてしまったり、「こなしてあたりまえ」のルーティンだと思われてしまったり。
誰からも「ありがとう」って言われなくても、チームのためにがんばってくれる人たちが、会社にはたくさんいると思うんです。


「あの人って早退ばかりで、全然仕事やらないよね」ってレッテルを貼られてしまう。でも、ちがう、そうじゃないんです。
選択肢を与えて、やるべきことと、そのやり方をちゃんと伝えれば、みんなチームのためにがんばってくれます。

メンバーの「やりたいこと」を叶える環境づくりは、リーダーにしかできない




とはいえ、現場の人間がほかの部署・チームに協力を仰ぐのって、なかなかハードルが高いと思いませんか?



現場の人間が到底できることじゃないですよね(笑)


メンバーには「やりたい」をあきらめてほしくないので、そこの1点はがんばろうかなって思うんです。


そういう人も、会社としては尊い存在で、否定されるものではありません。


売り上げを支えるために、図面を書いてくれる人や、泥まみれになって製品を作ってくれる工場の人がいる。
その仕事一つひとつが会社というチームを支えているからこそ、メンバーそれぞれが肯定感をもって働くことはすごく大事だと思うんです。
だからわたしも、自分ができることをやろうと思います。

サイボウズ式特集「管理職になるということは」

働きやすい環境が整いつつある中で、管理職の負担は依然大きく、大変な役割になっています。今後も職場に多様な価値観が広がることで、チームをまとめる難しさは増していくかもしれません。働き方と同じように、管理職のあり方も、もっと多様になっても良いのではないでしょうか?すでに管理職の方、そしてこれから管理職になる方に向けて、サイボウズ式のマネジメントやチームづくりに関する記事をまとめました。
執筆:深水麻初(サイボウズ)/撮影:田口裕貴
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執筆

深水麻初
2021年にサイボウズへ新卒入社。マーケティング本部ブランディング部所属。大学では社会学を専攻。女性向けコンテンツを中心に、サイボウズ式の企画・編集を担当。趣味はサウナ。