今ある働き方の「常識」なんて、実は近年に当たり前になったものじゃないか──灯台もと暮らしと考える、常識にとらわれない働き方

1月24日にサイボウズ日本橋オフィスで開かれたサイボウズ式 Meetup #5。今回は「ぼくたちはなぜ『常識』にとらわれて働いてしまうんだろう?」をテーマに、トークセッションが行われました。
モデレーターを務めたのは「灯台もと暮らし」を運営する株式会社Wasei代表の鳥井弘文さん。さらにゲストスピーカーとして、編集長の伊佐知美さんと、編集部員でフリーライターのくいしんさんをお招きしました。サイボウズ式からの登壇は、編集長の藤村能光と編集部員の明石悠佳です。
フルリモートでちゃんと仕事はできるものなの? ただお金を稼ぐための「副業」ではなく、自己実現のための「複業」をするのはどうして? 常識に縛られない人の共通点って?
「場所」「複業」「発信(個人の力)」という3つの軸から、常識に縛られない働き方について、さまざまな意見が飛び出しました。
会わなくても仕事はできるけど辛かった


鳥井 弘文(とりい・ひろふみ)。1988年、北海道・函館市生まれ。慶應義塾大学卒業後、中国・北京へ渡って日系ITベンチャー企業に勤務し、中国版Twitterと呼ばれる微博(ウェイボー)を中心とした日本企業の中国国内PRに携わる。帰国後はブログ「隠居系男子」を運営開始し、2014年9月には株式会社Waseiを設立。これからの暮らしを考えるウェブメディア「灯台もと暮らし」を運営している。


伊佐知美(いさ・ともみ)。1986年新潟県生まれ。横浜市立大学卒。三井住友カード株式会社、株式会社講談社での勤務を経て、Waseiに入社した。執筆活動をするために、1本500円の兼業ライターからキャリアを開始。2016年〜2017年は世界一周しながらのリモートワークに挑戦した。これまで国内47都道府県、海外40カ国100都市ほどを旅行している。



藤村能光(ふじむら・よしみつ)。サイボウズ株式会社コーポレートブランディング部「サイボウズ式」編集長。Webメディアの編集記者としてキャリアをスタート。2012年5月、自社メディア「サイボウズ式」の立ち上げに参画し、2015年1月より編集長を務める。今回のMeetupでテンションが上がりすぎて、開始時にハイボールをこぼしてしまった張本人。

実際にフルリモートで働いてみて、人と人が直接会うことがとても大切だとわかりました。


会えば3秒で終わることが、チャットだと通じなかったり、ニュアンスが伝わらなかったり……。フルリモートは「不幸」なのかもしれません。


明石悠佳(あかし・ゆか)。2015年、新卒でサイボウズに入社し、1年半にわたって製品プロモーションを経験したのち、コーポレートブランディング部へ異動。現在は、「サイボウズ式」の企画編集や、企業ブランディングのためのコンテンツを制作している。


くいしん。1985年、神奈川県小田原市生まれ。フリーライター・編集者。高校卒業後、お笑い芸人見習い、レコードショップ店員を経て、音楽雑誌編集者として活動する。その後Webディレクターの道へ。数々の転職を繰り返し今に至る。

村上春樹さんの本に『遠い太鼓』という旅行記があるのですが、それを読んでから、時間や場所に縛られない働き方にずっと憧れていたんですよね。
でも、いきなりは怖かったから、少しずつ20代後半から移行した感じかな。

ただ、最近はテクノロジーの進化でどんどん時代が変化していて。たとえば今では、カリスマショップ店員さんが産休後にライブコマース(※)というサービスを使って、リモートワークで服を売っている事例もあると聞きます。


※ライブコマース:タレントやインフルエンサーがライブ動画を配信し、視聴者はその場で質問などをしながら商品を購入できるEコマースサービス。

質問責任と説明責任があれば職場の軋轢は解消される


その中でも特に「場所」という概念に縛られていないなと思うのが、この記事のお二人。
竹内さんは複業採用という形で新潟から参加している方。永井さんは、もともと東京の営業でバリバリ働いていたんですけど、パリが好きすぎて移住した方です。





職種の違いとかで社内の軋轢(あつれき)は生まれないんですか? 「あの部署ばっかり好き放題やってずるい」という不満とか。



モヤモヤはその場で解消する。そういう社内文化はありますね。

複業は目的ではなく結果論です。




竹内 義晴(たけうち・よしはる)。サイボウズ株式会社コーポレートブランディング部コンテンツエディター。新潟・妙高在住。新潟でNPO法人しごとのみらいを運営する一方、複業採用でサイボウズに入社し、サイボウズ式編集部にも所属している。「新潟×東京」の拠点での複業を通して新しい可能性を見出すべく、二足のわらじに挑戦中。






そうやって記事を書き続けていたら、次第に書き仕事や講演の依頼が来るようになって、自分の商いの延長線上に複業があった感じですね。



同じ20万をもらうなら5万円の仕事を4つの職場で働いた方がリスクが低い





その方は、たとえば地元の新聞の事務局で週に3〜4日勤務をするほかに、直売所でのアルバイト、地元でのお米作り、冬はスキー場のレストラン……みたいな感じで、いろんな仕事を組み合わせて生きていた時代があるそうです。


たとえば20万円稼ぎたいなら「今の時代ひとつの場所から20万円もらうのはリスクじゃない?」という声をよく聞きます。
5万円の仕事を4つの職場で稼げば、結果的に一緒だと。いろんなことができる方が楽しいし、結果的にリスクヘッジにもなるんですよね。

「会社員だからこそ個人の力をつけるべき」「そしたらみんな独立しちゃわない?」




もし会社がなくなっちゃったら、私の価値ってどこにあるのだろう、みたいなことをずっと考えていた時期があって。






サイボウズさんが新しい働き方を推し進めた結果、社員はみんな独立しちゃって、最後は誰も残らない、みたいな。
つまり、明石さんも独立すんのかな? って思っているんですけど。


個人の力を強めて、社外で個人としてやりたいこともあるけれど、だからといってサイボウズへの共感度が弱まるかといったら、そうではないですね。





そういう自由な居場所作りが、今後必要になるんじゃないかな。結果的に、くいしんさんも独立したけれど「灯台もと暮らし」編集部として今日のイベントに出てくれたり、記事を書いてくれたりしていて、見た目は何も変わってない。

常識人が常識に縛られないためには「時間軸を引き延ばす」


私が「かっこいいな」と思う人たちはみんな、「一般的にどうか」ではなく「自分の信義に照らしてどうか」という話し方をする人が多いなと思う。
— 最所 あさみ(asami saisho) (@qzqrnln) 2018年1月23日
「普通は」とお茶を濁したりせずに、「自分は」を主語に話せる人。
私もそうなれるように意識せねばなぁ。



どれだけ小さくてもいいから前に歩を進めている。そういう風に感じましたね。

僕はどちらかというと保守的で常識にとらわれがちの人間なんですね。そういう人でも常識から解放される方法があって。



「サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福 サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福」(上下巻):ユヴァル・ノア・ハラリ著、河出書房新社。ホモサピエンスが、どのような経緯で現代に至る文明を構築してきたかを描いたベストセラー。

それがわかった瞬間に、現代の常識じゃなくて、自分がどんな信義で生きたいのかが大切になってくる。


つまり、「普遍的な部分」と「当時の流行」、というのが自分の中で明確にわかるんです。
そうやって今と時間軸の違うものに触れてみるというのは、「自分は常識にとらわれない働き方なんてできない」と思っている人が、常識から逸脱して、自分がやりたいことに集中できるひとつの方法なので、悩んでいる人はぜひ実践してみてください。
常識にとらわれない人の共通点。人によって、すこしずつ違うけど、角度は違っても、本質は近い気がする。Twitter最高w。 #サイボウズ式meetup pic.twitter.com/GMyH2dZQ8T
— kanako nakamura (@puchikana) 2018年1月25日
文:園田菜々 編集:松尾奈々絵/ノオト 撮影:栃久保誠
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