サイボウズのつくりかた
サイボウズでも、地方支社だからキャリアは諦めていた──拠点の壁は全社テレワークで変わったのか
「会社から転勤を命じられたら断れない」「支社で偉い立場を担当しないと、本社で偉くなれない」「責任あるポジションは本社勤務の人しか就けない」……。
そんな独特のキャリア通説がまだまだ残っている日本社会。しかし、コロナ禍でテレワークが広がったいま、その状況は変わってきているかもしれません。
サイボウズでは、2020年2月末より全社原則テレワークをスタート。現在も社員のほとんどが在宅で仕事を進めています。そのなかで、地方支社メンバーからは、「以前よりキャリアの選択肢も広がってきた」という声が上がってきています。
今回はサイボウズ大阪支社で事業戦略室に所属する林田恵美と販売代理店(パートナー)営業を担当している杉本裕樹の2人に、その実態について聞いてみました。
本社と支社の裁量の差が生み出す「支社ならではの働きづらさ」
当時から「支社ならではの働きづらさ」を感じていたそうですが……。
その都度、本社の方の時間を押さえて、会いに行っていたんです。その時間をつかって、お互いもっといろいろできることがあるんじゃないかと思っていました。
わたしも前職時代、大阪支社で営業として働いていたんですが、キャリアを広げるには東京本社での勤務が必須だと感じていました。
けれど、家族は大阪にいるので、自分一人だけで転勤はしたくない。当時は「この先のキャリアをどうしよう……」と悩んでいましたね。
ただ、わたしはその出世コースに懐疑的で。そもそも社員の意思とは関係なく、会社が住む場所を決めたり、住む場所でキャリアを大きく制限することに「なんでなの?」って思っていました。
本社メンバーだけで話が進むため、モヤモヤを感じていた
では、サイボウズにきて、地方支社メンバーとしてのモヤモヤはめでたく解消されたんでしょうか?
コロナ禍以前は物理的に会議室に入れる人数に限りがあったので、パートナー企業との会議に参加できるメンバーが制限されていたんです。
だから、会議では両社とも本社メンバー中心の参加になりがちで。結果、支社メンバーがトピックとなる案件を取ってきても、本社の議題が優先的に挙げられてしまう。
そういう格差には、モヤモヤしたこともありました。
わたしは本社メンバーとZoomで会議をして仕事を進めています。ただ、わたしの知らないうちに、本社メンバーが立ち話していて決まったことがあって。
東京オフィスのメンバーには、そんなつもりはなかったと思いますが、どうしても「わたしのためにZoomをつないでもらっている」と意識せざるを得ませんでした。
コロナ禍がきっかけで本社と支社の情報格差がなくなってきた
というのも、みんなが在宅ワークになって、Zoomに一人ひとりの顔が並ぶようになったから。わたしはそこで初めて、「やっと同じ感覚で話せるな」と思うようになりました。
ある日、本社メンバーが「支社のメンバーから見て使いにくいところがないか、事前に確認してから進めたほうがいいよね」っていう声を上げてくれて。
コロナ禍以前はそういう支社目線の意見が出ることはめったになかったので、ちょっと感動しましたね。
コロナ禍前は拠点を問わず、営業メンバーは外出続きで、週1の定例会でしか話す機会はありませんでした。でも、いまはオンラインで頻度高くコミュニケーションを取るようになって。
テレワークが始まったばかりの頃はどうザツダンをしていいかわからなかったのですが、次第にkintone上でも気軽に話せるようになりましたね。
必要な情報を全てオンラインに集約することは、トラブル回避につながる
その結果、全国の営業とテキストでやりとりするようになり、社内での認識の齟齬もなくなったように思います。
そのため、以前は情報を知っていそうな東京本社のメンバーに、意識的に自分から必要な情報を聞き出していたんですよ。
テレワークが進んだおかげで、地方拠点にいても責任ある仕事を任されるようになった
そうなってくると、本社勤務しなくても、より責任ある仕事に就けるようになるのではないでしょうか?
けれど、コロナ禍で働き方が変わり、所属の壁が一気に取り払われてきたように感じます。実際、今年1月に、僕が東京のパートナー企業の担当リーダーに任命されました。
加えて実は、自分がメイン担当になってチームを持つことも今回が初めてで……。その上、いきなり東京のメンバーやパートナーとリモートで仕事を進めることになるのか、と。
けれど、現在はWeb会議のやりとりにパートナー企業やメンバーの協力もあって、やりとりを重ねていくうちにメイン担当者の仕事はどこにいてもできるなという手応えを感じています。
いまは大阪に住みながらでも、全社の事業戦略にがっつり関わる仕事をできて、すごくハッピーですね。
「地方にいるからこれしかできない」と自分で線引きしていたけど、「あれもやってみたい」って言っていいんだって思えるようになりました。
「大阪にいたら、この仕事しかないから先が見えてしまう」と絶望したこともあったので、変わりましたよね。
他社でそうした働き方を実践していきたいと考えている場合は、どんなことが必要になると思いますか?
わたしの夫も他社で働いていますが、物理的に在宅勤務はできています。ただ、「やはり出社して働く日と比べると、在宅して働く日は情報が入ってきにくい」って言うんですよ。
テレワークでも快適に業務を進める職場を作っていくのであれば、少数派の立場を想像できるようになることは必須だと思います。
「わざわざ伝える必要はないかな」と遠慮して、削ぎ落とした情報にこそ、必要な情報やアイディアが隠れていたりしますので。
今後はそこをうまく使い分けつつ、場所を問わない働き方やキャリアステップを広げていくことが重要になってくるのかなと。
世の中にそういう働き方が広がれば、いままで「本社勤務じゃないから重要なポジションに就けない」と思い込んでいた支社メンバーの心持ちも変わっていくはず。
今から「物理的に東京に異動しろ」と言われても、全力で断ると思います(笑)。
企画:吉原寿樹(サイボウズ) 執筆:中森りほ 撮影:栃久保誠 編集:野阪拓海(ノオト)
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